第19話:創造主からの課題に「これが俺たちの答えだ!」
再び満流たちの前に創造主が現れた。
共鳴していた音たちも止んで静かになった。それが余計にこの空間が〝普通ではない〟ことを感じる…。
満流と輝夜にとっては何もないが、悠一にとっては創造主の存在自体が凄い圧があるようだ。それは二度目の今回も変わらずに圧を感じて地面にへばりつくように耐える悠一。
創造主が再び満流に問いかける。
「────考えたのか?」
満流は大きく頷いて
「これが俺たちの答えだ!」
そう言って創造主にチェス盤の床に書いた文字をペリッツと外し、宙に取り出して見せた。
創造主はきっと何もかもお見通しだろう。だが敢えて満流は〝それ〟を見せつけた。
〝悠一を白のナイトにする
キングの技を追加。強力な剣。
……………〟
創造主は大笑いをした。
「ハハハ……………ッツ!ここの仕組みを見抜くとはな。流石、白のキングとクイーンたちだ。そこに書かれたことは既にお前たちの物になっておるぞ。それを私に〝見せる〟ことこそがその仕組みを完了させるポイントなのだ。そこに書いただけでは現実化しないのだよ。だから黒のナイトよ。お前は今、この瞬間に白のナイトへと変わったのだ。本来の白のナイトはひとつ、空席だったからな。」
創造主の言葉に悠一は感極まったようだ。
「────!ありがとうございます!創造主様!!」
そう大声で叫んで創造主に頭をこれでもかってくらい下げていた。さっきまで感じていた圧はどこにいったのかと思うくらい悠一の行動は素早かった。
「悠一くん、もう〝圧〟は大丈夫なの?」
輝夜がふと、気付いた。
「────ハッ、そう言えば、さっきまでの圧が嘘のように無くなっています!」
「は?へんなの、そんな一瞬で変わるものなのか?」
満流は不思議そうに見ていた。
「あぁ、キングよ。この空間はキングもしくはクイーンの加護がないと私の圧に耐えるのが辛いのだよ。彼は今まで〝黒〟の者だったからな。
たった今、白のナイトになったのだからお前たち白のキングとクイーンの加護によって動けるようになったのだ。」
「へ~~~!それは凄いや。」
輝夜も満流もそれには感謝した。
〝悠一が本当の仲間になる!〟
「さあ、元の世界に戻る時間だ。お前たちが書いたこの事が本当に叶ったのかは元の世界でしか試せないはずだ……………。」
「ありがとうございます!創造主様。」
輝夜も満流も、そして悠一も創造主に感謝をして深くお辞儀をした。
創造主が腕を振り上げて出口を指差すとその方向に向かって光の点が灯される。ポッ、ポッ、ポッ……………。あの時を思い出す輝夜と満流。
「悠一、帰ろう!」
そう言って二人は悠一に手を差し伸べた。
今回も振り向かずにただ出口へと向かう……………。
二人は気付いたから。
どこにでもあって、どこにもない。この場所の本質に────
***
夜月神社では狛犬のケンとダナの二人が三人の帰りを今か今かと待っていた。輝夜たちが〝むこうの空間〟へと渡った瞬間から境内の空気は元の状態に戻っていた。
二人が戻ってくるまでは、前回で1時間くらいかかったが、もう3時間過ぎているのに一向に現れないことに段々不安を感じてきた。
何度も時計を見てはウロウロをして、を繰り返していた。
「まだ三人は生きている!」
「そうだな。俺たちの中で彼等の存在を感じるからな……………。」
ケンとダナは自分たちと三人が繋がっていることで何とか不安を押し殺していた。
「満流、うまく力を手に入れられたらいいが……………。」
ケンがそう言った。ダナもそれには同意した。そんなダナをケンはジッと見る。
ケンの視線にダナは何を言いたいのか、よくわかっていた。
「仕方ないだろう?好きな気持ちは変えられないんだ…。だけど彼女はキングのものだから僕にはどうしようもないし、どうにも出来ない。」
ダナは辛そうな顔をしていた。
「ああ、わかるよ。お前の気持ち。俺だって輝夜の母、叶柄がそうだったんだから…。ただ彼女の場合、キングとは出会えなかった。そんなどん底な彼女をここの神主が救ってくれたから、それには感謝しているがな…。」
「ケン…。」
ナイトとは辛い立場のようだ。いつの時代も守り抜くべき対象の主に恋してしまうようだ。
お互いの辛さはお互いが知っている。それだけでもダナは救われる気がしていた。
そんな話をしていると目の前に強い白い光が現れ、木々が揺らめいた。まるでその中に葉っぱが吸い込まれそうな勢いだった。
まるで小さな竜巻のようだ。
その風と強い光が消えたとき、に三人の姿が見えた。
「────!輝夜!満流!悠一!」
ケンとダナは彼等が無事に戻った事で思わず叫んでしまった。
「ただいま。ケン、ダナ。」
輝夜が二人に向かってそう言うとケンとダナは三人の元に駆け寄った。五人で抱擁をして無事に戻ったことを再確認した。
「それで…。どうだった?満流。」
ケンが話を切り出した。
「ああ、多分!」
満流が自信満々にそう答えた。
「────?多分???」
ケンとダナはキョトンとしている。そう、まだ実践で使っていないからその効果が本当にあるのかわからないからそうとしか答えられないからだ。
「本当ならこれを使う機会がない方がいいが、相手さんは待ってはくれないだろうしな。」
満流は自分の耳に付けたピアスを触った。
「そうね。いつここがバレるのか、時間の問題だと思っていいわ。」
輝夜のひとことで、戻ってきたことで安心していた空気が一瞬で緊張モードになった。
続けて輝夜が決意をしたように言う。
「彼等の被害に遭った人たちへの救済だって得てきたんだもの。私だって怖がってないで立ち向かうわ。」
輝夜は人間の姿をした敵を倒す感覚に恐怖を覚えていたが、本当の人間たちを救うためにその心に立ち向かうことを決意した。
あの〝無〟の空間で三人は多くの事を学んできたようだ。
何もないことからの学び…。
だが、何もないからこその学びであったという気付き。
力は人に与えてもらうものではなく自分で得るもの。そして、自分の中にこそある。それこそが今回得た最大の武器だった。
「さあ!明日からのために今夜はもう休もう!」
会議は解散となった。悠一は準備をしてきていたので今夜から夜月神社での寝泊まりとなる。輝夜の父に挨拶のために先に社務所へと戻った。ケンとダナは石造の狛犬に戻ったので輝夜と満流の二人だけになった。
二人はお互いに顔を見合ってから、ゆっくりと社務所へと歩いて向かう。
「ねえ、満流。」
「ん?」
「悠一くんが来てくれて、同じ〝白〟になってよかったね。すごく頼りになるし…。一緒に戦える。」
「……………。」
輝夜がそう言った。満流も本心ではそうなのだが、輝夜から悠一の名前が出てくるのが何となくモヤモヤした。どうやら満流はかなりのヤキモチやきなんだろう。
〝俺って、こんなに嫌な奴だったのか…。〟
「あんまり俺の前で他の男のこと、考えないでくれよな。」
満流が小さな声でポツリと言う。
「え…?今なんて…」
輝夜が聞き返そうとした時に満流の手は輝夜に伸ばし、彼女の髪をすくいながら彼は輝夜と視線を合わせずに髪を見つめて
「あんまり…。俺の前で他の男のこと、考えんなって言ったんだ。」
そう言って輝夜の髪にキスをする。輝夜は髪の先から伝わる満流の熱いヤキモチという名の想いを感じながら動けずにいた…。
再び雲に月が隠れてしまった薄暗い夜の境内で、間もなく梅雨がやってくる匂いを含んだ生温い風が軽やかに吹き抜けた────
ご覧下さりありがとうございます。創造主の元で手に入れて来た力。それが何なのか。今後のお楽しみに!




