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星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


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第8話 キャラバン

「うん、だいぶ良くなった。もう歩けるよ!」


 腫れの引いた足を撫でてセリが言う。


「僕も、この洞窟内の記録はだいたい終わったかな。カイレンはどう?満足した?」


 アシュレイが地図を折りたたみながら、辺りの鉱石や素材をかき集めていたカイレンに尋ねる。


「ああ、満足はしてないが……だいぶいいものも集められたと思うぜ」


「洞窟を出るなら、この川に沿って行こう。ここと同じで、魔物が近くには寄りつきにくいはずだよ」


 リュミナが池に流れ込む川の先を指差した。


 洞窟内を流れる川に沿って歩いた一行は魔物に接敵することなく外に戻ってくることができた。


「すごいな、本当に魔物がいなかった」


 カイレンが感心する。


「この川、エアロムントまで続いていたりしないかな?」


 アシュレイが自身が作成した地図を見返し、その上を指でなぞるがしばらくして肩を落とし首を振る。


「ま、気をつけながら歩いて行くしか無いか……ここからエアロムントまではどれくらいだ?」


「1週間くらいかな?……魔物に襲われたりしなければ」


「途中は魔物出るの?」


「うーん、リュミナの森の近くやエアロムントの周辺には少ないけれど、他の場所は結構出るわね。流石に4人もいれば多少襲われにくいとは思うけど……」


「危険生物は夜行性のものが多い。とにかく明るい内に進めるだけ進もう。人や馬車が通る道路まで出られればさらに危険度も減るだろ」


 そう言ってカイレンが進み出す。一同は森林地帯を歩き出した。


「この先、森を抜けた先に大きな道があるよ!」


 俊敏に枝を伝って進むリュミナが、森の切れ目の向こう、木々の間を一直線に貫く茶色の帯を見て叫ぶ。


「……あいつ身軽だな。流石エルフ。こういう森林地帯の身のこなしでは右に出るものはなさそうだ」


「リュミナー!多分それが道路だよ!そこまで案内して!あと、木の上を伝って行くのは私たちが追いつけないから降りてきてちょうだい!」


 セリが応答し、リュミナが木から降りてくる。


「わかった。方向は覚えたからついてきて!こっち!」


 そう言って彼女は歩き出すが、やはり森の歩きに慣れているのかカイレンたちとどんどん差が開く。

 一同が森林地帯を抜ける頃にはリュミナ以外はヘトヘトになっていた。


「リュミナは……すごい……元気だねぇ……」


「俺も……体力には……自信があったんだけど……」


「僕はもうダメだ……休ませてくれ……」


 3人とも地面にへたり込む。その時、カイレンが遠くを動く特徴的な形の馬車を見つけ顔を輝かせる。


「あれは……しめた!ジストさんのキャラバンだ。おーい!ジストさーん!」


 カイレンに気づいたのか、馬車はリュミナたちの目の前で止まる。荷台からは背が高く、カイレンたちよりも一回り年上の青年が飛び降りてくる。


「やあ、カイレン。こんなところで会うとは……前に言っていた地図作りの旅の帰りかい?」


「そう言うこと。ねぇねぇジストさん、エアロムントまで行けるテレポートジェム売ってない?俺たちもうヘトヘトで」


「おや、珍しい。カイレンが商品の購入目的でうちのキャラバンを利用するなんて。いつもは素材の売却しかしないのにな……」


「まぁ、後で見て欲しいものはバッグの中にたくさん入ってるよ。でも今は見ての通りみんな疲れ果ててね。背に腹はかえられぬってやつさ」


 そう言ってカイレンはリュミナに紹介する。


「この人はジストさん。このキャラバンの主人で世界各地を旅して商売してる、こう見えてもすごい人なんだ。最近はエアロムントを拠点にヴェンティア内を回ってるんだって」


「へぇ、リュミナちゃん。こんな可愛いエルフの女の子がカイレンたちと旅をしているとは……この辺のエルフというと出身はあそこの森かな?」


 そう言いながらジストは荷車の中を漁る。


「あちゃー……すまんカイレン。エアロムントまでのテレポートジェムは品切れだ。材料となるゲートフォックスの肝も切らしていてな……調合もできない」


「そっか……じゃあ荷台に乗せてくれないか?このルートを通っているってことはエアロムントまで帰るんだろ?到着までの用心棒になってあげるよ!」


「おいおい……これは乗合馬車じゃないんだぞ。それに、この辺りの魔物なら、俺と、御者のセリネオの二人がいれば用心棒なんて必要ないっての!……全くカイレン、今の手持ちはどれくらいだ?」


「今……銀貨が2枚に銅貨が5枚だ」


 そう言いながらカイレンは財布の中身を見せる。


「……仕方ない、4人で合計銀貨2枚で乗せてってやるよ」


 ジストの返答にカイレンは少し悩む。


「まいったな……ここからエアロムントまで、乗合馬車の相場ならおよそ銅貨8枚、つまり大体銀貨1枚だと思ったが、まさかその2倍とは……まだこれは売りたくないんだけどな......」


 カイレンはぶつぶつ呟きながら時折、バッグに入っている二本のトライホーンの角を見ている。


「あの……これでよければ、いくらか足しにならないかな?数年に一度綺麗に咲く花に魔力を注いで作ったそこそこ貴重なものなんだけど」


 リュミナは自分の髪飾りを取って見せる。カイレンやセリはどうだろうと言った表情を見せたが、ジストとアシュレイはまじまじと見てあっと叫ぶ。


「リュ、リュミナちゃん?これの価値分かってるのかい?あまりにも普通に髪飾りにしているから気が付かなかったが……」


「リュミナ!これすっごい花だよ!リュミナの言う通り数年に一度しか咲かないんだけど、その花弁一枚一枚に含まれる栄養素が他の薬草の比じゃないんだ!確か名前は……」


「フェアリーフラワー!状態にもよるが花弁一枚で銀貨数枚程度、いや、これは質のいい魔力の影響かさらに価値がありそうだ……買い手にもよるが、下手したら花弁一枚に金貨1枚出すやつもいるかもな」


 それを聞いたリュミナはにっこり笑って花弁を一枚ジストに渡す。


「さぁさぁリュミナちゃん。このキャラバンの特等席にご案内しよう。御者くん、キャラバンを引っ張る馬たちに気合を入れさせてくれ、素晴らしいお客様のご乗車だ」


 こうしてカイレンたち3人はキャラバンの荷台に、リュミナはジストの隣の席、座り心地が良く周りを見渡せる特等席に乗り込み、エアロムントまでの旅が再開された。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

 第8話「キャラバン」いかがでしたか?


 洞窟を抜けヘトヘトになった4人は、ちょうど出会った商人のキャラバンに乗せてもらえることになりました。世界中を旅する商人からは興味深い話が聞けるかも?


次回「馬車に揺られて」水曜日投稿予定です。お楽しみに!


※ごめんなさい......手違いで先に第8話投稿しちゃってました。追って読んでくれている方には本当に申し訳なく思ってます...。

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