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星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


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第6話 接敵

 リュミナ達は『宝物』を採取しながら奥へと進む。しかし、その楽しげな雰囲気は大きな怒号によってかき消された。


「ブォォォォォォ!!」


 その後、微かに地面が揺れ始める。その振動は徐々に大きくなっていく。


「……何かが、こっちに来ている?それも大きいものが……」


「セリはリュミナを連れてそっちの岩陰に隠れるんだ!」


 そう言ってカイレンはランタンの光を手で覆い隠すとともに、アシュレイを連れて岩陰に隠れる。セリもリュミナを抱き抱えるようにして岩陰に身を隠す。真っ暗な洞窟に響く弱い地鳴りと微かなセリの吐息。次第に地鳴りが吐息よりも大きくなってくる。地鳴りが収まり、代わりに大きな鼻息が聞こえる。だんだん暗闇に目が慣れてきたリュミナはそっと岩陰から顔を覗かせる。一行の隠れる岩場付近にいたのは、四足歩行で大きな二本の角を持った魔物だった。


 興奮しているのか、魔物の鼻息が荒く、一つ一つの挙動も激しい。リュミナの肩に置かれたセリの手に力が入るのを感じる。長い、と言ってもほんの数秒の沈黙が流れた。辺りをうろついた魔物は、元来た道へクルリと振り返る。リュミナとセリはホッとため息をついた。しかし次の瞬間、大きな衝撃とともに二人は岩陰から放り出された。


 投げ出され、尻餅をついた二人はすぐさま魔物を振り返る。振り返ったように見えた魔物だったが、どうやら尻尾でリュミナたちの潜む岩陰付近を思い切り叩いたらしい。叩かれたであろう地面が深く抉れていた。暗くてよくは見えないが、魔物の角がこちらを捉えている。額に汗を浮かべながら、セリは剣を、リュミナは弓をそれぞれ構えた。その時、


「今だ!アシュレイ!」


「〈強い風を起こす魔法(キュロス・ウィンド)〉」


 掛け声とともに放たれた強い突風が魔物を転倒させる。突風の発生源がパッと明るくなり、カイレンが二人の前に飛び出してくる。


「二人とも立てるか?奥に走るぞ!」


 そう言うとカイレンは、落としたセリの荷物を拾い上げる。四人は一斉に魔物と反対の方向、洞窟の奥へ走り出した。


「あいつ、何者?」


 走りながらリュミナが尋ねる。


「多分あれは……トライホーン……三本の大きな角が……特徴の……」


 アシュレイが息を切らしながら答える。一行は洞窟内の少し広がった空間に辿り着く。


「アシュレイの渾身の魔法を直撃させたからな……しばらくは追いついてこないだろ…」


 そう言ってカイレンもその場に座り込む。


「三本って……暗くてよくみたわけじゃないけど角は二本しかなかったよ」


「ああ……僕も魔法を使った時に……一瞬見えた。あいつ左目と左の角を怪我してた。……多分縄張り争いか何かで負けて……こっちの洞窟まで逃げてきたんじゃないかな?」


 疲れ果てた様子のアシュレイは壁にもたれかかる。すると持たれた部分の壁がボロリと崩れる。


「これは……トライホーンの角の跡……まさか!」


 カイレンが広間の中央へランタンの明かりを向ける。そこにはなんの動物かわからないものの骨が散らばっていた。


「ここ、あいつの縄張りだ。急ぐぞアシュレイ、奴はここに戻ってくる」


 カイレンがアシュレイを立たせそうと駆け寄る。


「……ごめん、私…」


 セリの弱々しい声に一同は彼女の方を振り向く。彼女は右足を押さえて座り込んでいた。


 リュミナが右の靴を脱がせると、足首が真っ赤に腫れ上がっている。おそらく先ほど、投げ出された時に怪我したのだろう。リュミナは急いでポーチを漁り、さっき採取したシャボンゴケを患部に当てる。


「これが一番ひんやりしてる、これで冷やして」


「いいの……?これ、あなたの"宝物"でしょ?」


「いいの、私にとってはセリや、ここにいるみんなの方が大切だから」



「仕方ない、あいつを倒そう」


 カイレンが決意を固める。


「アシュレイ、魔法は打てるか?」


「うん、でも僕の風魔法じゃさっきの威力が限界だ……あれじゃ、傷はつけられてもトライホーンの硬い皮膚の鎧は貫けない」


「いや、片目が潰れてるなら、もう片方の目も潰すまでだ。そうすりゃ奴は目が見えなくなる。あとは……俺が……」


 カイレンが拳を握りしめるのを見て、アシュレイは制止する。


「無茶だ!あいつの目を潰したとしても体格の差が違いすぎる。さっきの尻尾の力だって、あれが直撃したらいくら頑丈な君でも持たない。それに、目を潰された魔物がここで暴れたら、魔法を撃った後の僕や足を怪我したセリも逃げられない!」


 カイレンもわかっているようで、唇を噛み締める。


「アシュレイの魔法で傷はつけられたんだよね?」


 リュミナが口を開く。


「うん、魔法を撃って転倒させた時に、少しだけど血が出たのを見たよ」


「……それじゃあ私の作戦、いいかな?」


 一同は彼女の作戦に耳を傾けた。



「よし、時間もないし、その作戦で行こう!」


 カイレンが納得した様子で言う。


「……不安だけど、さっきのカイレンの作戦よりも成功率は高そうだ」


 アシュレイとセリも納得した様子で頷く。


 洞窟の向こうからわずかな地響きが伝わってくる。


「よし、そうと決まったら早速準備だ!セリ、少しだけ我慢してくれよ」


 そう言ってカイレンはリュミナにランタンを渡し、セリに肩を貸す。


 アシュレイも周りを見渡し、「リュミナ!ここがいい!」と言って手を振る。


 リュミナも頷いて、ポーチに手をかけて深く深呼吸する。勝てるだろうか……?でも、やるしかない!


 覚悟を決めたリュミナも作戦の準備を始めた。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

 第6話「接敵」いかがでしたか?


 怪我の影響か、かなり荒ぶっている様子の強敵"トライホーン"。そんな魔物を迎え撃つための、リュミナの策とは...?


 次回「決着」金曜日投稿予定です。お楽しみに!


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