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星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


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第48話 祝いと再会

「よし!事件の解決を、フローナの村の親父たちに報告しに行こうぜ!」

 

 先導するザンドに続いて、一行は山を下る。何故だかザンドはいつもよりもハイテンションで、途中何度もスリーズに小突かれる。

 

「ねえ、ザンドはいつもに比べてもテンション高すぎない?少し気持ち悪いんですけど……」

 

 セリが突っ込むと、アシュレイは頷き、ザンドとスリーズは少し慌てた表情をする。

 

「そ、そうか?」

 

「いつもこんなんでしょ?」

 

「……そうだっけ?」

 

 リュミナも不思議そうな顔をすると、慌てたザンドは急いで山道を駆け降りる。が、途中でつまづいたザンドは、そのまますごい速度で山道を転がっていく。その様子に一行は大笑いしながら走って山を降りていった。


 ――――


 フローナの村の入り口には、村長たちのほか、思いもよらぬ人物が立っていて、その姿を見たセリは言葉を失い、一直線にその人物に抱きついた。

 

「セリ……。頑張ったな……」

 

「お兄ちゃん!……生きててくれてよかった……。また会えてよかった……」

 

 村長に嬉しそうに報告するザンドの横で、驚いた表情を浮かべていたリュミナたちに、スリーズが説明する。

 

「ゼルさん――セリのお兄さんはね、2年ほど前に紫の森で倒れていたのをこの村の人たちに見つけられて、保護されていたんだ。その時の、瘴気の影響が体にも出ちゃってて、ずっとこの村で治療してたの。私とザンドはそれを知ってて、本当は、以前この村に寄った時に、セリに合わせてあげようと思ってたんだけど……」

 

「俺が止めてもらったんだ」

 

 ゼルが話を続ける。

 

「カイレン君、それにセリが持っている剣は、僕では成し得なかった、剣の力を引き出したものだろう?そんなすごい人たちに――そしてセリに、今会ってしまうと、戦いに専念できなくなる可能性があると思ってね。君たちの勝利を信じて、黙っていてもらったんだ」


 すると、上機嫌な村長がゼルとセリの肩を叩く。

 

「君たち!霧の王を沈めてくれたんだろう?感謝する。今日はこの村をあげて盛大に祝うつもりじゃ。是非楽しんでいってくだされ」


 ――――


 その夜、フローナの村はこれまでにない活気に包まれていた。

 

 広場の中央には大きな焚き火が焚かれ、村人たちが持ち寄った酒や料理が並ぶ。黒い霧から解放された喜びを分かち合う、最高のお祭り騒ぎだ。

 

「さあ、飲め飲め!英雄たちに乾杯だ!」

 

 村長が上機嫌でジョッキを掲げ、ザンドがそれに負けじと声を張り上げている。

 そんな喧騒から少し離れた村の外れ、大きな木の影でセリとゼルは二人、夜風に吹かれていた。

 

「……お兄ちゃん、本当にこの村に残るの?」

 

 セリが少し寂しそうに、けれど兄の決意を確かめるように尋ねた。


 ゼルは、右足を少し引きずるようにして歩き、彼女の隣に腰を下ろした。かつて"ヴェンティアの刃"とまで謳われた兄の体には、やはり瘴気の爪痕が深く刻まれていた。

 

「ああ。僕はもう、前線で剣を振るうことはできない。だけど……この村の人たちが僕の命を繋いでくれた。そんな人たちの優しさに報いたいんだ。特に、看病してくれた彼女にはね」

 

 ゼルの視線の先には、若者たちに料理を配る、一人の慎ましい女性の姿があった。彼女がこちらに気づいて微笑むと、ゼルもまた、これまでに見たことがないほど穏やかな顔で頷き返した。

 

「僕は彼女と結婚して、この村に残るつもりだ。戦えなくなった僕にも、できることはある。この村の若者たちに剣を教え、いつか来るかもしれない脅威から、自らの手で故郷を守れるようにね」

 

「……そっか」

 

 セリは俯いた。兄を誇らしく思う一方で、共に王都へ帰り、昔のように生活したいという淡い期待が消えていくのを感じていた。

 そんな妹の心中を察したように、ゼルはセリの頭に優しく手を置いた。

 

「顔を上げなさい、セリ。何も今生の別れというわけでもない。この村からエアロムントまでは、馬を飛ばせばすぐに行ける。会いたくなった時にいつでも来られる距離だ」

 

「……うん」

 

「それに、セリには、セリにしかできない務めがあるだろう?その力は、そのためのものなはずだ」

 

 セリは腰の剣に触れた。星の力をその刀身に宿し、共に死線を潜り抜けた相棒であり、カイレンやリュミナが一生懸命に取り返してくれた、かけがえのない宝物。彼女は溢れそうになる涙をグッと堪え、兄に向かって満面の笑みを見せた。

 

「私、もっと強くなる。お兄ちゃんの二つ名、"ヴェンティアの刃"だって超えるくらい、私の名前を刻んで見せる!」

 

「ははは、それは楽しみだ」

 

 二人の笑い声が、夜空に吸い込まれていく。物陰から二人の会話を聞いていた、カイレン、アシュレイ、リュミナも、安心したように顔を見合わせると、盛り上がっている村の中央へ戻っていった。


 ――――

 

 翌朝にはまた、それぞれが帰る場所へ向かうための旅が始まる。けれど、その心には、決して折れない強い絆の灯が煌々と輝いていた。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 第48話「祝いと再会」いかがでしたか?


 フローナの村へと戻ってきた一行を出迎えたのは、何と行方不明になっていたセリの兄でした!彼女は遂に、旅の目的であった兄を見つけることができました!本当に良かった!


 ザンドとスリーズはそれを知っていたから、煙山から降りる途中に変なテンションになっていたのですね...。


 さあ、冒険とは家に着くまでが冒険です!フローナの村からエアロムントまではまだ距離がありますからね!


 次回「この先の道」水曜日投稿予定です。お楽しみに!


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