表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/52

第42話 煙山

「え!?じゃあ、ザンドたちが私を狙ってたのって、エルフなら紫の森を浄化できると思ってたからってこと!?」

 

 夕食の席で、ザンドの昔話を聞き終わったリュミナは驚いて尋ねる。ザンドは気まずそうに頭を掻き、視線を泳がせた。

 

「……まあ、最初はな。エルフなら、指パッチン一つで森をキラキラに元通り! なーんて都合のいい奇跡を信じてた時期もあったんだ……」

 

 その言葉に、リュミナはうつむき自身の手を見つめる。

 

「……ごめん。私や、森のみんなにも、そんな力は無いよ……。お母さんですら、自分の森を浄化するので精一杯って言ってた……」

 

「大丈夫、リュミナが謝る必要は無いよ」

 

 スリーズがスープの器を置き、真っ直ぐにリュミナを見据える。

 

「私にも、森を浄化する力の片鱗すらないんだもの。純粋なエルフにも、そんな力があるなんて、本気で信じてはいなかったから。それでも何かを期待して旅に出て……結果的に、あなたに出会えてよかった」

 

 そう言って、自分の胸に手を当てる。

 

「私の旅の目的だった、大精霊に会うきっかけをくれた」

 

 ザンドも頷いて、眠っているカイレンたちに目を向ける。

 

「それに、ローグも言ってただろ?今のお前たちは、この国でも相当な力に選ばれた。そんな奴らの力を借りれば、きっとこの霧の問題も解決できる!頼りにさせてもらうぜ!」

 

 リュミナが頷くと、スリーズが手をぱんと叩く。

 

「さて、昔話はこれでおしまい!明日は"煙山"だからね、今日は早く休んで、明日に備えるんだ」


 次の日、村の出口へ村長が見送りにやって来る。

 

「カイレンさん、リュミナさん、スリーズさん、うちの馬鹿が迷惑をかけるでしょうが、どうか、よろしくお願いいたします」

 

「親父……」

 

 ザンドは困ったような表情で頭を掻き、みんなはそれを笑う。体力の回復した一行は、気持ちを新たに、目の前に聳える"煙山"へと歩みを進め始めた。


 ――数日後――

 

 麓を抜けて標高を上げるにつれ、空気の質が明らかに変わり始めた。

 

 辺りには、山の名前の由来でもある、白く重たい煙が立ち込め、視界を遮っていく。それは先ほどまで一行を苦しめていた邪悪な黒い霧とは異なり、どこか硫黄の匂いが混じった、活火山の息吹そのものだった。

 

「……前が見えにくいね。霧じゃないけど、これはこれで厄介だわ」

 

 セリが剣の柄に手をかけ、周囲を警戒しながら周囲の煙を手で払う。

 

「吸いすぎないように気をつけて。火山性のガスが混ざっているかもしれないから」


 スリーズが全員に呼びかけた。

 少し先は、出っ張った岩壁が日光を遮り、他よりも深い暗闇に包まれていた。アシュレイが杖の先を光らせて足元を照らすが、その光の中に映し出された光景に、全員が息を呑んだ。

 

 岩肌のあちこちに、ヴォルグや大型の魔物の亡骸が転がっている。さらにそれだけではない。地面には深く鋭い斬撃の跡が刻まれ、岩石は強力な魔法の衝撃で粉々に砕け散っていた。

 

「この傷跡……最近のものだね。ここで激しい戦闘があったみたい」

 

 リュミナが倒れた魔物を見つめる。

 

「ああ、それもかなりの手練れだ」

 

 ザンドはしゃがみ込むと、抉られた地面を指でなぞる。

 

「こいつは、"風の勇者"の戦闘跡だろう。確か、フローナの村を経由せずに、エアロムントから直接この山を登るルートでも、少し前で道が繋がっていたんだ」

 

 カイレンは、戦闘跡のみで、魔物の亡骸が不自然に転がっていない場所を見つめる。

 

「おそらく、消滅した霧の魔物も含めると、相当な数と戦ってるみたいだな……」

 

「僕らも急ごう。……この感じ、もうそんなに離れてはいないはずだよ」

 

 アシュレイの言葉に、全員が力強く頷いて、走り出す。白い煙の向こう側、山の頂から放たれる不気味な黒い波動は、刻一刻とその強さを増していた。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 第42話「煙山」いかがでしたか?


 ついに、"霧の王"の住処である煙山へと足を踏み入れた一行は、先に来ていたであろう"風の勇者"の痕跡を発見しました!それと同時に見つけた戦闘跡は、この先の戦いの過酷さを物語っています...。


 次回「煙山の番人」水曜日投稿予定です。お楽しみに!


☆ブックマーク・評価・感想をいただけると、投稿主の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ