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星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


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第37話 騎士団長の依頼

 翌日、朝早くにギルドへ呼ばれた四人は、眠そうにあくびをする受付嬢によって応接室へと案内された。その部屋では、ローグ、ザンド、スリーズがリュミナたちの到着を待ち侘びていた。

 

「これで全員揃ったな」

 

 ザンドがそう言うと、ローグも頷いて、応接室の扉を閉める。

 

「では、話そう。何故私たちが君たちの力を試したのか。これから君たちに何を頼もうとしているのかを」


 ――その頃、瘴気の森では――

 

「何だ!?あのオーク!」

 

 森を探索していた男性が指をさす。

 

「何て禍々しい姿……あれで生きているの?」

 

 杖を持った女性は、目の前の魔物の姿に慄く。

 

「とにかく……やるしかない!」

 

 三人は顔を見合わせて頷くと、武器を構えて一斉に飛びかかった。


 ――ギルド内会議室にて――


「ええーっ!?」

 

 ローグの話を聞いたカイレンが、ギルド中に響くほどの声で驚く。ザンドはそんなカイレンに、静かに!というように人差し指を立てる。

 

「……"霧の王"討伐依頼を……僕らに……?」

 

「って言うか、"霧の王"って本当にいるの!?」

 

 アシュレイとセリも、それぞれ驚く。

 

「ああ、いる!」

 

 ザンドがきっぱりと言い切ると、スリーズが後ろから補足する。

 

「"霧の王"といっても、オカルト雑誌なんかに載っているような、変幻自在、最強無敵な空想の魔物じゃない。現に、"煙山"で接敵した際、私たちは一発喰らわせている」

 

「え?"霧の王"と戦ったの!?」

 

 リュミナが驚くと、ザンドは首を振る。

 

「"霧の王らしき魔物"だけどな……。明らかに、霧を纏ったそこらの魔物とは比べものにならない強さだったぜ。ほら……これ見てみろ」

 

 そう言うと、ザンドは、懐から太くて短い、十字架のような形に成り果てた、鉄の塊を取り出す。

 

「分かるか?これ、元はこれくらい大きな剣だったんだぜ。それが、奴の一撃を受けただけでこの有様……」

 

「すまなかったね、ザンド……。私がもっとしっかり奴の注意を引けていれば……」

 

 スリーズの言葉に、ザンドは首を振って励ます。

 

「謝るなって、お前が奴に一撃喰らわせてなきゃ、こうなってたのは俺自身だ。むしろ感謝すらしてるよ」

 

 そこでローグが話を戻す。

 

「……とまぁ、こんな感じだ。ザンドの言う通り、奴は"煙山"を根城にし、霧による被害を広めていると考えられる。つい先日、このギルド最強のパーティ"風の勇者"にも依頼をし、引き受けてもらったのだが、戦う者が多いに越したことはない。それで、"星の剣"を手に入れた君たちにも、"霧の王" の討伐を頼みたい」

 

「……王国騎士団は動けないんですか?」

 

 セリが尋ねると、ローグは首を振る。

 

「最近は、諸外国の情勢が……特に隣の火の国、ヴォルカリアの首都、フレイムヘルドの動きが怪しくてね。ヴォルカリアといえば、内戦によって国内が統一された戦争大国だ。だから我々騎士団も、簡単には動けないんだ」

 

「……どうする?カイレン」

 

 アシュレイが尋ねると、カイレンは立ち上がる。

 

「もちろん!引き受けるぜ!その代わり……」

 

 カイレンがローグの方に目を向けると、ローグは静かに頷く。

 

「……ああ、報酬の増額についてなら、私からギルド長へ頼んでみよう」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 カイレンのガッツポーズに、みんなが笑う。しかし、その直後、廊下に声が響き渡った。


「大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

 

 一行が部屋の外を見ると、血を流し、傷だらけの冒険者が三人、担架に乗せられて運ばれていった。

 

 セリとアシュレイは、運ばれてきた方を見る。

 

「あっちの部屋は……」

 

「うん、ギルドのテレポートポイントがある部屋だ」

 

「また、奴の被害者か……」

 

 ローグがそう呟くと、近くを通りかかったギルド職員が頷いて答える。

 

「はい……。今月でもう7つのパーティが、"武器狩り"の被害を受けています。いえ、帰還できなかった方々がいるかもしれないと考えると、もっと多いかも……」

 

「"武器狩り"って……!」

 

 セリが呟くと、ローグは頷く。

 

「……そう。以前君たちも戦ったであろう。瘴気の森を縄張りにしている凶暴なオークだ」

 

 ローグがそう言って、掲示板に貼られた高難度の討伐依頼の依頼書を示す。ザンドが付け加える。

 

「奴は近くを通りかかる冒険者を襲っては、痛めつけて、一番強そうな奴から武器を奪う。そうすることで、自分の力を誇示しているのかもな……しかも、噂によると、最近瘴気の影響か、かなり異形な雰囲気になってるって話だ」

 

 話を聞くセリの手が静かに震える。それに気がついたカイレンは、ローグの方に向き直って口を開く。

 

「ローグさん、さっきの話、受ける代わりに条件を一つ追加させてくれ」

 

 そう言ってカイレンは、"武器狩り"討伐依頼の依頼書を指差す。

 

「俺たちに、特別に、パーティランクを無視して"武器狩り"討伐依頼を受けさせてくれ!もちろん、危なくなったらすぐに逃げるから!」

 

 カイレンの言葉に、セリは驚き、ローグの方を見る。しかし、ローグは険しい表情を浮かべる。

 

「……気持ちはわかる。しかし、私の一存でギルドの掟は変えられない。まして、冒険者たちの命を守るためのパーティランク制度を、民の命を守る騎士団長が無視させるわけにもいかない」

 

 カイレンが肩を落とすと、セリがカイレンの背中をポンと叩く。言葉を交わさずとも、二人は顔を見合わせて頷き合った。その後ろで、謎のポーズをとるザンドを、スリーズとリュミナは呆れたような顔で見つめていた。

 

「仕方ない。今は、"霧の王"討伐に専念……」

 

「……って、ちょっと待て!」

 

 カイレンが言いかけたところに、ザンドが割って入る。

 

「何だよ。今はふざけてる時間じゃないぞ!」

 

 アシュレイが注意すると、ザンドは再び謎のポーズを取り、鼻を鳴らす。

 

「要は、お前たちのパーティランクを上げてやればいいんだろ?」

 

「そんな、三日三晩で上がるようなものじゃないんだ」

 

 ザンドの発言に、カイレンたち四人は雑に返事をして、地図を広げ、作戦会議を始める。その後ろで、ザンドの発言の真意を察したスリーズとローグは、やれやれといった表情で首を振る。

 

「ところがどっこい。お前たちのパーティランクを上げる手段があるんだ……って、俺の話を聞けー!」

 

「……何?今、作戦を立てて……って、ザンド?今なんて……?」

 

 雑にあしらおうとしたカイレンの顔が上がる。

 

「俺たちが、パーティに加入してやるって言ってるんだ。"白鋼"ランクの俺と、スリーズの二人がな!確か、高難度の依頼の受注条件は俺たちの一個下の"鋼"からだったよな?それなら、多分俺たちが入れば、受注可能になるはずだぜ?」

 

 その言葉に、四人の顔がぱっと明るくなる。

 

「ザンド……。ありがとう!」

 

「おっと、カイレン、礼は後だ!早くパーティの加入手続きしないと、高難度の依頼を受注できるのが明後日になっちまうぜ」

 

 そう言われたカイレンは、礼もそこそこに、ザンドを引いて、ギルドの受付へと走っていった。

 

「……やれやれ。私の意見も聞かずに、勝手に他のパーティ入りを決めるなんて……」

 

 スリーズが文句を言いながら小さくなっていくザンドの背中を見つめる。

 

「まぁ、私もエルフである君と共に行動したいと思っていたから、反対はしないけどね。よろしく、リュミナ」

 

 リュミナも頷き、差し出された手を強く握り返した。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 第37話「騎士団長の依頼」いかがでしたか?


 騎士団長ローグから頼まれた依頼、それは、霧の王の討伐でした!しかし一行はその前に、セリの兄の仇でもある武器狩りを倒しに向かうようです。


 頼もしい仲間、ザンドとスリーズの加入もあり、以前敗北した時よりも格段にチームのレベルが上がっています!果たして、リベンジなるか!?


 次回「再びの旅立ち」金曜日投稿予定です。お楽しみに!


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