表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/52

第30話 再び西へ

 西門を出たスリーズは、振り返って声を上げる。

 

「ザンドー!アタシ、これから少しの間旅に出る!その間に、あなたが迷惑かけた街の人たちのために、しっかり働くこと!」

 

 見上げると、梯子を上り、城門の上の方の壁を修理しているザンドの姿があった。

 

「おぅ!スリーズ!気をつけてな……って、リュミナ!?うわっ!わーっ!わーっ!」

 

 スリーズと一緒にいるリュミナに驚いたのか、ザンドはさっき積み上げたレンガを盛大に崩す。

 

「こらーっ!そこの兄ちゃん!直してるそばから壁を壊すんじゃなーい!」

 

「ひーっ!すんません親方ー!」

 

 声をかけ終えたスリーズは、叱られるザンドを振り返ることなく歩き始める。

 

「……あいつ、何やったんだ?」

 

 アシュレイの問いにスリーズは呆れながら答える。

 

「この間、城門付近に魔物の群れが現れてね、あいつが倒したんだが……。いつものようにカッコつけて、派手にトドメを刺した結果、吹き飛んだ魔物の一体があの壁をぶち抜いた。自業自得さ……」

 

「迷惑かけた人たちって……他にも何か……?」

 

「ああ、ギルドの酒場では、入って早々に酔っ払いに絡まれて、テーブル一つに椅子四つの破壊。図書館では、あの大きな剣の柄で、積み上がってた書類の山をひっくり返す。木から降りられなくなった猫を助けようとして木に登ると、奴の重さでその木が倒れて植え直しに……」

 

「あー、なんか……散々だね」

 

 スリーズの言葉の節々から、これまでにあったであろう散々な苦労が伝わってくる。

 

「ザンドは、根っこからの不運体質らしくてね。奴一人ならともかく、一緒にいる私まで巻き込まれるから、たまったものじゃないんだ……」

 

 リュミナとセリには、旅立つ直前にスリーズが言っていた、「少し離れたい」という言葉の意味がわかった気がした。


「……止まって」

 

 道中、突然スリーズが手を広げて制止する。

 

「この感じ……まだ囲まれきってないね。それなら……」

 

 そう言って、ポーチから取り出した小さなナイフを草むらに投げ込む。

 

「グェー!」

 

 悲鳴と共に、何かが草の中で倒れる音がする。その後すぐに、草むらのあちこちで、羽音と金属音が聞こえてくる。そして数体の、武器を持った魔物が現れた。

 

「あいつらはバーディアンだ!知能が高くて、群れで襲ってくるのが特徴の魔物だよ!」

 

「ちょうどいい。攻撃を受け止めないタンク役というのを実践で見せよう。アシュレイ!魔法を撃つ準備をしておくんだ!二人とも!魔物の体勢を崩して、隙を作るよ!」

 

 スリーズの指示のもと、四人は戦闘体制に入った。


 

 ――バシュッ!


 穏やかな昼下がりの平原に、風弾を受けたバーディアンが舞う。

 

「よし!これで3体目!」

 

「安心するのは全部倒してからだ!ほら、次が来るよ!」

 

 アシュレイのガッツポーズを注意すると、スリーズは再びバーディアンの群れに突っ込む。

 

「ほら!セリもリュミナも、全然隙を作れてないよ!」

 

 二人を動きの悪さを指摘しながら、スリーズは4体目のバーディアンの槍を避けて懐に入り、鉤爪で打ち上げる。打ち上げられ、自由の効かなくなった魔物は即座に風弾によって吹き飛ばされた。

 

「そんなこと言ったって……」

 

 バーディアンの棍棒を剣で捌くセリだったが、なかなかスリーズのように隙を作れない。リュミナもなんとか、目の前のバーディアンの武器を叩き落とそうと円月輪を振るうが、敵の攻撃を避けながらでは、うまく強い衝撃を与えられない。苦戦する二人の背後から、スリーズが魔物の背後に回り込む。瞬間、魔物の持っていた武器が弾き飛び、体勢が崩れる。

 

「今だ!」

 

 リュミナとセリの渾身の一撃は、無防備な魔物たちを地に叩きつけた。


 ――その夜――


 夜の焚き火を囲み、スリーズはそれぞれに戦闘のアドバイスを行う。

 

「アシュレイ、君は魔法を撃つ時、両足を踏ん張る癖があるね。教科書通りの姿勢、と言った感じだ。しかし、君の使う魔法は反動が大きく、足を踏ん張ることでかえって体に負荷がかかっている。そうではなくて、反動に身を任せ、後ろに飛び退くことを意識してみるといい」

 

 アシュレイは顎に手を当てながら頷いた。

 

「セリ、君の剣の扱い方は、大柄な男性が使ってこそ最大限の力を発揮する、まさに騎士団の型だね。ザンドとの戦闘でも見てとれたが、今までも、押し負けることが多かったんじゃないか?君の身のこなしなら、一撃に込めるのではなく、手数を意識して攻撃を行うんだ」

 

 セリは自分の剣を見つめなおす。

 

「リュミナ、君は円月輪を大きなナイフのように扱っている節があるね。本来の円月輪での戦い方は、私の戦闘スタイルと同じなんだ。スピードを活かして敵の攻撃を避け、手痛いカウンターを狙う。魔力がないのであれば、当面の間、それを意識して動くんだ。君のスピードと反射速度なら、そう難しくないはずだよ」

 

 リュミナは腰に下げた武器を握り直した。


 夜も更けて、見張りのスリーズ以外の三人は静かな寝息を立てる。不意に、リュミナの耳がピクリと動く。眠い目を擦りながら、リュミナが静かに起き上がり、焚き火の、弱々しい残火にうっすら照らされた周りを見渡す。

 

「……あれ?……スリーズ?」

 

 彼女の姿がないことに気がついたリュミナは、立ち上がって再びあたりを見回すと、近くの木がわずかに揺れた。

 

「……起こしてしまったようだね」

 

 リュミナが木の上に顔を出すと、スリーズは遠くの景色を眺めながら、優しく語りかける。

 

「ううん。私は最近ずっと寝てたから、元々あんまり眠くなかったの」

 

「そうか……。聞いたよ、酷い怪我だったってな」

 

 そう言ってスリーズは再び、遠く離れたエアロムントを見つめる。彼女の横顔はどこか、懐かしさや、寂しさを感じさせる。リュミナがそう思ったのを感じ取ったスリーズは、静かに口を開く。

 

「……リュミナ、暇なら少し話さないか」

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 第30話「再び西へ」いかがでしたか?


 カイレンを追って西へ向かうリュミナたち。戦闘に長けたスリーズの加入は、とても心強い存在でしたね♪


 そんな彼女は、最後の場面で、どこか寂しそうな表情で、リュミナに語りかけています。一体どんな話をされるのでしょうか?


 次回「長命への問」月曜日投稿予定ですが、もしかしたら休日中に投稿できるかも!?お楽しみに!


☆ブックマーク・評価・感想をいただけると、投稿主の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ