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星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


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第26話 危険信号

「これは……テレポートジェムの跡だ」

 

 カイレンは地面を撫でながら言う。目の前に広がる、円状に草地がくり抜かれたような場所からは、僅かな魔力が紫色の小さな光を放っていた。

 

「テレポートジェムが使われたのは、そんなに前じゃなさそうだね。ほんの少し、魔力が残ってる」

 

「ああ、おそらくは俺たちと同じで、高難度依頼のランク緩和のおかげで、この辺りの地図作成の旅をしていたパーティが使ったものだろうな」

 

 そう言って、カイレンは少し前の方を指差す。

 

「見ろよ。消え掛かってはいるが、何人かの足跡が残ってる。この歩幅や、つま先の深さ加減からして、走って来たんだろうな。おそらくこの先から逃げてきて、ここで王都へテレポートしたんだ」

 

「この先のエリアで、そんな危険がありそうな場所っていったら……」

 

 セリの言葉にアシュレイも頷く。

 

「うん。多分、"紫の森"だ」

 

「それって、ギルドでも話題になっていた場所のこと?」

 

 リュミナも"紫の森"という単語には聞き覚えがあった。ギルドでもよく噂されていた危険なエリアだ。

 

「確か……瘴気が溢れている影響で、そこに住む魔物が凶暴化しているんだよね?」

 

「それだけじゃない。年々その瘴気が濃くなっているみたいで、森全体が紫色になっているんだ。名前通りね。しかも、ここ最近は瘴気の濃くなる速度が急激に加速してるって話だよ」

 

 アシュレイが付け加える。

 

「まぁ、危険なエリアへ無理に探索に行く必要はないさ。紫の森はできるだけ避けて、記録できる部分だけ地図にしたって報酬は出るんだからな。まぁ、気をつけて進もうぜ。こいつは俺たちへの危険信号でもあるんだからな」

 

 カイレンの言葉に全員が頷き、先へ進む。一抹の不安を胸に残して。


 しばらく進んだのち、一行は奇妙な場面に遭遇して足を止める。

 

「なぁ、あれ、なんか様子がおかしくないか?」

 

 最初に気がついたのはカイレンだった。少し離れた場所にいる、ゴートと、それを取り囲むヴォルグの群れ。しかし、奇妙なことに、積極的に攻撃を仕掛けているのは草食の魔物であるゴートの方だった。ヴォルグの一体を打ち上げ、角を使って叩き落とす。その勢いに圧倒されているのか、ヴォルグたちは距離を置いてただ吠えている。不意に、ゴートの視線がこちらに向く。

 

「やば……目が合っちゃった」

 

 アシュレイが後ずさるが、もう遅かった。ゴートはヴォルグたちを跳ね除け、こちらに突進してくる。

 

「仕方ない。迎え打つぞ!」

 

 四人は一斉に武器を構えた。


 

 

「ぐぁっ!」

 

 鈍い音と共に、ゴートの突進を盾で受け止めたカイレンが大きく吹き飛ばされる。ぶつかった衝撃で、ゴートの角も折れ曲がるが魔物はそんなことお構いなしと言わんばかりに雄叫びを上げる。

 

「カイレン!」

 

「大丈夫だ!でも気をつけろ、普通のゴートに比べても、こいつは力が違いすぎる!」

 

「こっちだ!」

 

 吹き飛ばされたカイレンに代わり、セリが前に飛び出して注意を引く。誘いに乗ったゴートは狙いを変え、セリに突進を仕掛ける。

 

「剣技〈流れ星〉!」

 

 突進に合わせて体をずらし、すれ違いざまにゴートの体を切り付ける。次の瞬間、ゴートの体の周りに黒いモヤのようなものが溢れ出し、驚いたセリは咄嗟に飛び退く。何と、セリの与えた傷は瞬時に塞がってしまった。

 

 信じられない出来事に、驚いたセリは一瞬動きを止める。迫り来るゴートの後ろ蹴りに身構えるが、次の瞬間、ゴートは大きな力を受けて真横に吹き飛ぶ。

 

「大丈夫!?セリ!」

 

 弓を構えたリュミナが声をかける。

 

「リュミナ!もう一発いくよ!」

 

 アシュレイが風弾を作り、リュミナに合図を送る。狙いすまされた矢は風弾の力を吸収し、鋭い風の矢として放たれ、ゴートを捉えて大爆発を起こす。しかし、土煙の中立ち上がった魔物の体には、一筋の切り傷すらも残っていなかった。

 

「あの体に纏わりついてる黒いモヤ!あいつが例の"霧の魔物"ってわけか!」

 

「うん、しかもあれはただのモヤじゃないよ。あれに包まれた部分の傷が瞬時に回復してた。倒すにはまず、あのモヤを何とかしないと……」

 

 カイレンが、連続で魔法を撃った影響でふらつくアシュレイを支える。

 

「アシュレイの風魔法で吹き飛ばせないのか?」

 

「接近して広範囲の魔法を撃てれば、吹き飛ばせるとは思うけど……、あの感じだと飛ばしてもすぐに戻ってきちゃうだろうね。それに、あの凶暴さだと、近付いて魔法を撃たせてもらえるか……」

 

「わかった。俺が何とか隙を作る。リュミナ!協力してくれ!」

 

「うん!」

 

 リュミナも円月輪に持ち替えて頷く。

 

「セリはアシュレイについて、アシュレイがモヤを吹き飛ばしたら、一撃で決めてくれ!」

 

「わかった!」

 

 カイレンが作戦を伝え、四人は霧の魔物に向き直り、武器を構えた。

 

「よーし!第二ラウンド、いくぞ!」

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 第26話「危険信号」いかがでしたか?


 一行が発見した、前の冒険者達の撤退跡。さらに、怪しいモヤに包まれて、傷を瞬時に治してしまう強敵の出現。四人はこの危機をどうやって乗り越えるのでしょうか...?


 次回「激戦!そして...」金曜日投稿予定です。お楽しみに!


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