表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/29

第22話 パーティランク

 リュミナ達がギルドの扉を開けると、大きな声で抗議するカイレンの姿があった。


「ちょっと!これどういうことですか!?納得のいく説明をー!」


 受付嬢の困った顔を見たセリが、カウンターからカイレンを引き離してなだめる。


「……さっきリクトさんから、地図作成依頼の報酬金額が下がるって聞いたんですけど……そのことですか?」


 リュミナが尋ねると、受付嬢はカイレンの方を気にしながら答える。


「……はい、実は…多くのエリアにおいて、風の国の地図を作成する依頼の報酬金額を、これから受注されるパーティから、少し減らすことが決まったんです……」


 落ち着いたカイレンが、納得のいかなそうな表情で理由を尋ねる。すると、受付嬢は散らかったカウンターの上を整理しながら答える。


「それがですね……ありがたいことなんですが、最近地図を作成する依頼を引き受けてくださる冒険者の方が増加しまして……ただ、この調子ですと国や、ギルドの方が報酬を支払いきれなくなってしまうとギルド長達の会議で問題視されてまして……」


 そう言いながら受付嬢は、背後にある大まかな風の国の輪郭が描かれた地図の下半分を囲ってみせる。


「こちらの、いわゆる危険度の低い地域は特に多くの方が地図の記録もとい、データの収集をしてくれたので、もうすでにかなり正確な地図が作成できるそうなのです。反対に風の国北部は火山や瘴気など危険な要素が多く、こちらでしたら報酬金は以前と変わらず高額をお支払いできるのですが……」


 しかし、そこでカイレンが不機嫌そうに口を挟む。


「危険なエリアには、ギルドが認めた一定のランク以上のパーティじゃないと、出発の許可が降りないの。でも俺たちは一年も冒険してないし、ランクアップを認めてもらえるほどの実績もない……」


「なるほど……」


 アシュレイも納得した様子でギルドの依頼掲示板の方を見る。そこには数多くの依頼が、ギルドの定めた難易度順にまとめて貼り付けられていた。


「確かに、同じエリアの依頼でも、今までに比べて大きく報酬額が下がってる。カイレンが文句を言う気持ちもわかるよ……」


「ランクを上げるには、実績って言うけど……具体的に何をすればいいの?」


 リュミナが首を傾げると、受付嬢が人差し指を立てて説明する。


「手っ取り早い方法なら、ギルド指定の強力なモンスターの駆除、もしくはギルドに依頼されている高難度の依頼の解決、あとは……高ランクに足る確かな実力の持ち主をパーティに加入してもらう。とかですねー」


 そう言って、アシュレイの見ていた掲示板の上の方を指差す。そこにはいくつもの赤い星が描かれた依頼書が貼り付けられている。


「まぁ、高難易度の依頼になればなるほど達成も難しく、命の保証もできません。私個人の意見としては、お薦めしかねますがねー」


 すると、メガネをかけ、髭を蓄えた大柄の男性が笑いながらギルドに入ってくる。受付嬢は途端に背筋を伸ばし、カウンターに散らばった依頼の書類をまとめ始める。


「……まぁ、危険だからって理由だけで地図作成のエリアの一部を今まで通りの高難易度にまとめてると、国王様がいい顔をしてくれなくてな、これが……」


 男は頭を掻きながら、掲示板の上部にある高難易度の依頼のうち、地図作成のものを全て剥がす。


「ギ、ギルド長!お疲れ様です!会議、ご苦労様でした!」


 受付嬢が書類の山を隠しながら挨拶する。


「おう!お疲れさん!」


 ギルド長が挨拶を返すと、面倒くさそうな顔をして後ろを振り返る。そこには、国王の側近の男――ライが姿勢良く立っていた。ライはギルド内を軽く一瞥すると、ギルド長の元へやってくる。


「ギルド長殿、先ほどの件でお話を……」


「……はいはい。ったく……何度言われてもこれ以上折れる気はないってのに……」


 そう言ってギルド長は持っていた書類を受付嬢に投げ渡し、再び外へ出ていった。


「申し訳ありません。これも"仕事"なもので……」


 ライはギルド長にそう返すと、ギルドの人々に頭を下げて扉の方へ歩いてゆく。途中、リュミナとすれ違った際、一瞬、ライの歩みが止まった...かに見えたが、またすぐに歩き出し、ギルドの重い扉が閉められた。


「んもう!ギルド長ったら、議事録くらい自分でファイリングしてくださいっての!」


 受付嬢が文句を言いながら書類を入れるファイルを取り出すが……。カウンターの下に隠していた書類の束につまづき、盛大に倒れる。


「あらら……」


 リュミナとカイレンは散らばった書類を拾い集める。途中、カイレンの動きが一瞬止まったかと思うと、素早く一枚の書類を受付嬢に見せる。受付嬢は人差し指を口に当て、内緒だよと言うポーズを取った。


「みんな!今は帰ってきたばかりで疲れてるだろうし、一度宿に戻ろう!」


 そう言うとカイレンは、さっきまで抗議していたとは思えないほどの笑顔で宿へ走っていった。残されたリュミナ達も慌てて後を追う。


「おう!4人ともおかえり!」


 タルローに出迎えられた4人はそのまま席につき、カイレンが真剣な表情になる。


「みんな……今からいうことはくれぐれも他言しないように……」


 そう言った後にカイレンは周りに自分たち以外がいないかを確認する。


「実は、さっきギルド長達の会議の議事録の一部を見ちゃったんだが……。何と3日後から、地図作成の依頼のみ、例外的に低ランクパーティでも受注できるようになりそうなんだ!」


 セリもアシュレイも驚いた表情を浮かべる。


「正確にいうと、地図作成依頼に限って、受注条件のパーティランク制限が緩和されるってことらしいんだけどな」


 そう言ってカイレンは取り出したパーティカードをテーブルの中央に置く。


「今、俺たちのランクは"青銅"まぁ、下から2番目ってとこだな。で、本来高難易度の依頼を受けられるランクは"鋼"、俺たちのランクの3つ上のところだ。しかし、それがなんと、階級が2つ落ちて"赤銅"から受注可能になるらしい!」


 その説明に、リュミナは首を傾げ、アシュレイとセリはずっこける。


「"赤銅"って……結局僕らのランクの一つ上じゃないか……確かに緩和はされてるんだろうけど、これから3日でランクを上げるなんてとても……」


 しかしカイレンは指を振る。


「チッチッチ……。このパーティカードは更新前のものだ……。そしてこれが!パーティカードの更新届の控え書類だ!」

 そう言ってカイレンはもう一枚の紙をテーブルに叩きつける。その紙にはパーティのランクが"赤銅"になる旨と、それを許可するギルド長のサインが記されていた。


「すごい!カイレン、いつのまに!?」


 セリが驚いて尋ねると、カイレンは得意げに鼻を擦る。


「この間、トライホーンを倒した素材を売った時にな……。トライホーンも立派な、ギルド指定の強力な魔物だったってわけさ!更新されたパーティカードは明日、改めてギルドに行った時に受け取れるはずさ!」


 アシュレイとセリも立ち上がる。


「よし、じゃあ僕らは3日後に備えて、旅の用意を整えよう!」


「そうね!高難易度の依頼になるわけだから、しっかり準備しましょう」

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 第22話「パーティランク」いかがでしたか?


 何とかカイレンも納得する報酬額の依頼を受けられることになりそうで良かったですね...。しかし、一行が受けとうとしているのは高難易度の依頼です。しっかり準備を整える必要がありそうです。


 それはそうと、ギルド長の話から察するに、パーティランクの緩和には国王様の意向が関係していそうですが、冒険者の安全を守るための制限を緩和させてまで地図を作成させるなんて、国王様は何を焦っているのでしょうか...?


 次回「それぞれの日常」金曜日投稿予定です。お楽しみに!


☆ブックマーク・評価・感想をいただけると、投稿主の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ