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星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


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第15話 逃し、逃された冒険者

 ーー時間は少し遡る。


 リュミナの手がかりを見つけたセリは人気のない路地裏を走っていた。不意に後ろに気配を感じ、バッと振り返る。


「……誰?」


 しかし彼女の後ろには人影もなく、ただ夜の闇だけが広がっていた。


 (……気のせいか?)


 そう判断したセリは再び走り出す。走り去った後、路地の隅でズズズと何かが横にずれる音だけがその場に残った。


 時は戻って、現在。


 重たい金属が地面に落ちる音を聞いて、リュミナは恐る恐る目を開く。


「ぐああぁっ!」


 そこにはメイスを後ろに落とし、血の滴る右腕を押さえるカシラの姿が映った。何が起こったか理解できず、困惑するリュミナの元に、犬の仮面をつけた男が駆け寄り、彼女を抱き抱える。


「多少の怪我はしているが……無事だ!」


 男はどこか聞き覚えのある声でうずくまるカシラの方へ振り返る。


「テメェ、何者だ!?」


「カシラに何しやがった!?」


 そう言いながら部下の男たちがナイフを持って迫って来る。その時、リュミナの目は暗い部屋の隅で一瞬、床に転がったランタンのわずかな光に反射した白い光の輪を捉えた。そして次の瞬間、二人の部下がその場に倒れる。


「リュ…お嬢ちゃん。怖かっただろう。もう大丈夫だ」


 そう言って肩をギュッと抱きしめられる。すごく安心する感じがした。


「ぐっ…もう勝った気でいやがんのか…。ふざけやがって……」


 片腕を負傷したカシラは、それでもメイスを振り回し始める。すると、砂埃に混じって大気中に水滴が発生し始める。


「〈硬い水滴を飛ばす魔法(アクア・ショット)〉」


 生成した水滴を、振り回すメイスに当てて部屋中に水の玉を飛ばし始める。


「追い詰められてメチャクチャしやがる…早く仕留めないと、何するかわかんないぞ!」


 仮面の男は、自身とリュミナに飛んでくる水滴を弾きながら叫ぶと同時に、懐から大きな魔石を放り投げる。宙に投げられた魔石が仮面の男の頭ほどの高さになった瞬間、何かに弾かれたように魔石が真っ二つに割れ、発生した炎の力は、周囲の水滴を煙にし、少しの間部屋の中を明るく照らし出す。照らされた先にいたのは、メイスが砕け、膝から崩れ落ちるカシラと、リュミナを守った男とはまた違う、狐のような仮面をつけた男だった。


「……さぁ、逃げるぞ。こいつらの仲間が来ると面倒だ」


 狐の面の男はそういうと、慣れた手つきで回収したリュミナのポーチと弓を投げて渡す。


「このアジト……少し朽ちて、魔物が住み着いてはいるが構造自体は昔とほとんど変わっていない。先導は任せろ」


 そう言うと狐の面の男は黒いマントをなびかせ、再び闇に消える。


「さぁ、俺たちも離されないようにしないとな」


 犬の面の男もリュミナを抱えて走り出した。


 廊下からは小型の魔物が次々に飛び出して来るが、そのたびに白い光がそれらを蹴散らす。


「……ここだ」


 どこからか声がして、天井の一部に四角い穴が開く。穴から出た先は、ジストのキャラバンの裏で人目につきにくい死角となっている場所だった。


「さぁ、さっきローグに…この国の騎士団長に連絡はつけた。彼が今こっちに向かってるそうだ。今度は捕まらないように気をつけるんだぞ」


 犬の仮面の男の声、走っている時に一瞬見えた仮面の裏側、そしてそんな彼と阿吽の呼吸を見せた狐仮面の男、リュミナはこっそり尋ねる。


「……やっぱり。あなた、ジストさん?それと…もしかしてラウルさん?」


 その言葉を聞いた犬仮面の男は一瞬固まり、その後恐る恐る後ろを振り向く。狐仮面で顔は見えずとも、怒りの視線を感じる。


「リュミナちゃん、ちょっとタンマな」


 そう言って犬仮面の男は狐仮面の男とこそこそと話し始める。


「……どうしよう、バレちゃった」


「だからあれほど気をつけろと…大体お前は昔から無警戒にも程がある」


「な、その言葉そのまま返すぜ。よりによって俺のキャラバン前に出やがって…これじゃもしかしてって思われても仕方ないぜ」


「あのアジトを使ってたのはかなり昔だ。出入り口も全て覚えてるわけじゃない。たまたま覚えていた出口にお前のキャラバンがあったんだ。そもそも、あの娘はアジトの中で既にお前に気付いてる様子だった。必要以上に会話をするからだ」


「仕方ないだろ、あんなに怖がってる女の子見て、せめて声かけて安心させるくらいしてもいいだろ」


「…わかった。それなら、指名手配されてギルドに捕縛依頼まで来てしまった可哀想な義賊の名もついでにお前が持っておけ。俺が捕まえて、その金で贅沢してやる」


「勘弁してくれよ……」


 リュミナから少し離れているとはいえ、周りが静かな夜中、しかも会話が進むにつれて二人の声量も上がっていく。


「……あの…聞こえてるけど……」


 すると二人が仮面を外して振り返る。


「…なぁ、リュミナちゃん…悪いんだけど俺たちがあのアジトについて知っていたことや、この仮面をつけてたことは秘密にしてくれないか?」


 リュミナは頷く。


「もちろんだよ。助けてくれてありがとう。二人ともすっごくかっこよかったよ」


 ジストはホッとしたように笑みを浮かべ、ラウルも目を閉じ静かに頷く。どこか遠くでリュミナを探す声が聞こえてきた。


「おっと、セリたちがリュミナちゃんを心配してる。ローグには俺が事情を話しておくから、早く行って、無事な姿を見せてあげるんだ。くれぐれも、俺たちのことは内緒でな」


 そう言ってジストがリュミナの背中を押す。


 リュミナは駆け出し、セリの腕の中へ飛び込んでいった。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 第15話「逃し、逃された冒険者」いかがでしたか?


 囚われのリュミナを助けたのは、なんと以前であったジストとラウルでした。さらに、何やら彼らには人に言えない秘密もあるようです...


 色々ありましたが、リュミナが無事で良かったです。


 次回「誘拐事件後日談」水曜日投稿予定です。お楽しみに!


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