第14話 ここはどこ?
暗闇でパチリと目が開く。覚えのない場所に困惑したリュミナは体を起こそうとするが、両手が体の後ろで動かせない。それに何だか体が痺れるような感覚。
(落ち着いて……まずは腕を縛ってる縄を……)
リュミナは目を瞑って集中する。自分の腕に刺さらないようにゆっくりと魔法の矢を生成する。
(よし、縄に切れ込みが入った……これなら……)
両腕に力を込めて縄を引き裂く。
「……ここはどこだろう?何で私はこんなところに……?」
頭が痛み、うまく思い出せない。セリと別れ、宿屋方向に進もうとした時に、何かに変な匂いの布を……。
そこまで思い出してハッとする。エアロムントに入った際にセリネオから受けた言葉、
「人間にはジストさんのように優しい人もいれば、反対に悪いことを考える人も沢山いますから……」
(とにかくここがどこか調べなくちゃ……)
そう考えて辺りを探り、手に触れたものを次々と持ち上げ確認する。さっきまで手を縛っていた縄、何かが入っていたであろう空の小瓶、僅かな魔力を感じる魔石。
(確かカイレンはこうして……)
洞窟探索の際のカイレンの真似をして、小瓶に魔石を入れ、軽く振る。青く、弱い光が微かに放たれる。
明かりを手に入れたリュミナは再び辺りを見回し、扉を見つけ駆け寄る。扉の外に人の気配はない。警戒し、腰の弓に手をかけようとした時、身につけていたものがいくつかなくなっていることに気がつく。
(弓に……ポーチも、髪留めも無くなってる……)
クッと唇を噛みながら音を立てずに部屋を後にした。
狭く、入り組んだ廊下をひたひたと歩く。以前探索した洞窟のような道だったが、少しだけ違う部分があった。
(こっちの道から風がきている……。それに向こうには人の気配もする……)
リュミナは決心して人の気配のする方へ進み始めた。
(……人の話し声……?)
少し進んだ先で、微かに聞こえる話し声、さらに先にはぼんやりとした光が見えた。リュミナは静かに光源へ近づき、壁に耳をピッタリとつける。
「…おお、このポーチは、漁れば漁るほど金目のものが出て来るぜ、見ろよ、この辺りじゃ取れない種ばかりだ」
「この弓なんて素材がわからないぞ、こんなに丈夫なのにすごくしなやか。欲しがるやつは絶対多いぜ」
どうやら二人の男がリュミナの身につけていた物を広げ、物色しているようだ。
「しかし、エルフの子供ってだけで珍しいのにこんなに金になる物を持ってるなんて、とんだ宝の山だったな」
「ああ、この髪飾りの花だけでも金貨数十枚は下らないってのに、あのエルフも調教して売ったら……俺たち働かなくても遊んで暮らせるぜ」
「そういえば、この間街に来た旅人もエルフを探してたよな。確か…森を清める力を借りたい、とか言ってたっけ」
「エルフってのはそもそも珍しいからな……エルフの体液が美容にいいとか、不老不死の薬の材料にできるとか、根拠はわからんがそういう噂話はそこら中にある。だからエルフは高く売れるのさ」
「……そういえばカシラはどこ行った?さっき帰ってきたんだろ?」
「ああ、カシラならあの娘の持ち物見るなり奥のエルフを閉じ込めた部屋に行ったぜ。あのエルフ、売りに出す前に傷物にされちまうかもな」
その会話を聞いたリュミナは壁から耳を離す。中で話している二人以外にも仲間が近くにいるかもしれない。そう考えて振り向こうとした時、彼女は背後から両腕を掴まれてしまった。
「何をやっていたんだお前たちは!逃げられてんじゃねぇか!」
身動きの取れなくなったリュミナを担いで、大柄な男が部屋に入る。先ほどまで話していた二人の男は驚いた表情でこちらを見る。
「そんな……あっしはちゃんと縛りましたぜ……どうやって……」
「テメェの目は腐ってんのかぃ!弓を持ってて矢がねぇ訳ないだろ!大方こいつは矢の代わりを生成できるってことだ。そいつを使って縄を切ったな?」
そう言いながらリュミナに顔を近づける。リュミナも負けじと睨み返す。
「いい目だな。そういう目は嫌いじゃない」
そういうとカシラはリュミナを思い切り地面に叩きつける。腕を掴まれていたリュミナはうまく受け身が取れず、言葉にならないうめき声をあげる。痛みに耐えながら顔を上げると、カシラは部下が持ってきたメイスをリュミナの顔に突きつける。
「そういう目をしたやつを屈服させるのが一番楽しい」
そう言ってカシラはメイスを振り上げる。リュミナはギュッと目を瞑る。鈍い音と、メイスの落ちる音が響き渡り、赤黒い血が地面に滴り落ちた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
第14話「ここはどこ?」いかがでしたか?
囚われのリュミナは絶体絶命のピンチ!果たして、ここから助かることはできるのでしょうか...?
次回「逃し、逃がされた冒険者」月曜日投稿予定です。お楽しみに!
☆ブックマーク・評価・感想をいただけると、投稿主の励みになります!




