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遊ばれるルシフェル

巨人の体を失ったルシフェルの魂は、未だ解放されることなく表のハニワゴーレムの中にいた…


(この大きくなりすぎたゴーレムの中心にいるせいで、外では何が起きているのか見えないのが全くもって歯がゆい…

ただ、あのナルガスの事を甘く見すぎていた事が今回の敗因に繋がった事だけは認めざるをえないか

ならばいっそこの忌々しい体をこのまま奴等に破壊させておけば、また魂だけとなって奴等のうちの誰かに乗り移れば良いのではないか?

そうして仲違いをさせておけばゆくゆくは…フフフフ!)

真っ暗な中で悪知恵を働かせていたルシフェルだったが、彼はまだ見落としていたものがもう一つあった…


それはナルガスのスキル…神眼。そしてレダにはオーラ視という、相手の心の様子がオーラとなって肉眼で見れるスキルである。

その為、彼が悪巧みを考えているのは目の前にいるナルガスには筒抜けなので、彼は仲間達に現状を伝えるのであった。



「あー皆少し聞いてくれ……ずっとオーラ視の上位スキル・神眼であいつを見てるんだが、どうやらあのハニワゴーレムの中にいる目に見えない敵、つまりそいつが悪魔のルシフェルかも知れない

あのでかい体の内側から見えてる黄色いオーラが全開だし、このままあれを壊すのは俺達ならギリギリできるがその後が厄介そうだ…どうしたら良いと思う?」


「へぇそうか…じゃあ良い考えがある!レダを僕達が連れてくるから、君はその間あいつを引きつけておいてくれないか?

過去にゼムノス校長が受けた[あの方法]ならあいつの体を壊した後で閉じ込めることはできるよね」


「良い方法だなエリオル!とにかく奴は姿が見えないから、俺かレダの持つオーラ視であいつの場所を伝える

ただ、最初みたいに目から光線みたいな攻撃をしてくるかも知れないぞ?

レダとお母さんの光属性による防御魔法でなんとか一度は凌げたが…」


「あれは、確かに僕もいやだな……あんなのをもう一度食らえば一瞬で跡形も無くなってしまう」

 

「それで、私たちはどうしたら良いと思う?リーダーのヴォルス!」

サラティがパーティのチームリーダーとなったヴォルスに意見を求めた。


「そうだな……ナルガス、エリオルが言うように俺達がレダ達の所まで後退する!代わりにあいつをすぐ引き付けておいてくれねぇか?

俺たちだって強い奴とは戦ってみてえんだから別にいいだろ?

今の俺達の素早さならそんなに時間はかけねぇから!」


「ああ、分かった…もしルガースと妹のラーナがいたら真っ先に叩き壊すか切断して外に出してしまいそうだから、そこはいざというときまで控えてもらえるようそばにいるレダ達にこの事を伝えてくれ!」


「分かった!皆、特にルネーガも一度後ろに戻るが走れそうか?」


「う、自信は無いけど頑張って走るさ!」


「…良ければ私たちが運ぼうか?」


「⁉︎」

リオンは上を見上げた瞬間、思わず驚いた。


「あっコウドル、もう大丈夫なのか?」

コウドル達は俺達の側へと降り立った。


「ああ!残党は既に片付いている…私たちなら皆を運ぶ体力くらいは十分にあるさ

ただその前に……リオンさん、貴女にはなんとお詫びしたら良いか」


「えと…まあ、昔のあなたよりはだいぶんましみたいだし?私も今はそこまで気にしてないから大丈夫よ…だから、運んでくれるとありがたいかな?」

少し照れ顔であるが、コウドルと和解ができそうな姿をみて俺は安堵した。


「それにしてもナルガス、君はいつからそんな姿になれるようになったんだい?

私達の国で暮らしていた時は一度もそんな事にはならなかったのに」


「話しても良いけど長くなるから後にしよう…奴もまた近づいてきたし」

俺の見ている方向には、しっかりとこちらを見据えているハニワがいた。


「そうした方が良さそうだね…皆!私達が運ぶからこの両足に捕まってくれ」

皆は言われるがまま、飛び上がったコウドル達の両足をそれぞれがつかむと軽々と運ばれていった。


「ナルガス!くれぐれもうっかり倒すなよ~‼︎」

去り際にヴォルスから釘を刺されてしまったか。


「分かってるって!……さてと、じゃあ奴は俺にだけ向いててもらうとしますか!」

俺はコウドル達から背を背けて、地面を強く蹴りつけながら加速する。


たった一人で奴を引き付ける為に…



その頃時を同じくして、レダ達の所には思いも寄らない子達が詰めかけていた。


「おーいレダ先生~!」


「レダ先生!」


「レダっち先生~!」


「コロッポ!ドレア!リノッコ!危ないよこんなところまで来ちゃったら‼︎」

レダの生徒となっている上級生のお姉さんに成長していた三人と、後ろにもう一人誰かいる様子だ…


「うん…何て言うかごめんね?レダっち先生、でもこの子がレダっち先生の所に連れてってと聞かなくて…」

リノッコはドレアの肩の上から、短くなったキノコのカサから垣間見えるつぶらな瞳を軽く閉じ、申し訳なさそうに前へと頭を傾けていた。


「……」


「「ラオーガ!」」


「…ねぇラオーガ、どうしてこんなところに来ちゃったの?何でお姉ちゃんとの約束を守らなかったの?」

レダは、弟を守るためにわざわざ突き放しておいたのにこの子は来てしまったと、悲しい気持ちになっていった。


「ごめんなさい…これを届けたかったから…」

ラオーガが手にしていたのは、昼食に食べる予定だった食事の一部。薄切りのナーバンをパンで挟んだ[ナーバンサンド]だった!


「ラオーガ…」


「…いくらお姉ちゃんやお父さんとお母さんが強くたって食べなきゃがんばれないよ」


「…ありがとなラオーガ」


「あなたはお兄ちゃんであるナルガスと似てて優しいのね…ありがとう」


「ありがとうラオーガ…じゃあせっかくだから、皆で揃って食べましょ?」


「…うん‼︎」


「ルーナも降りてきて?皆と一緒に食べようよ」


「そうね、せっかくだし頂くとするわ…恐らく私たちが息合わせて行わなければならない事が間もなく始まるかも知れないし」

ルーナは式神の蛇二匹を連れて、レダ達の元へと降りてきた。


「どの事を言ってるの?」


「「「??」」」

レダはいまいち彼女の見ているものが分からないため、少し首をかしげている。

それはコロッポ、ドレア、リノッコも同様だ…


元から力を合わせて戦う気でいたので、今は深く考えずに食事を取ることにした。

ラオーガとレダ、両親とルーナ達は地面にそのまま座り、一時の食事をとる事にする面々。


「にぃに、私たちもなんか食べよ?」


「そうだな、今はあいつらがあのデカブツを押さえていてくれてんだし食えるときに食っとこうぜ!…おーいゲルル、先に飯食ってるぞ~‼︎」


「おう、すぐ降りるぜ!」

ゲルルも降りてきて食事に加わるのだが、当然のごとく図体がでかい…

よって彼は、コウテイアホウドリ族の中で暮らせるように3年前に覚えた擬人化を行った。


擬人化した彼の姿は足首まで丈があり、少し色がすり減っているような薄い黒ズボン。

そして上着は日の光を浴びて輝いて見えるくらい、白い無地の半袖シャツといった普段の態度と性格に合うラフな格好のイケメンに変身している。


彼の頭にはドラゴンの時と同様に二本、鋭い角が黒髪に隠れる形で少し生えていた…


「ゲルル、あなたいつの間にそんなかっこいい姿になれるようになったの⁉︎…な〜ご!」

彼の姿をみたラーナは、ルガースから簡単に食えるキリング・ミールの肉を焼いただけの[ミール肉]を受け取り食べたあと、まさに繁殖期のメス猫と同じくスルスルと体を擦り付け甘い声を出してやって来た!


「…うお⁉︎おいおいラーナ、人が食ってるときにいきなり発情してんじゃねぇよ‼︎」


「ラーナちゃんはまるで、少し前のレダみたいね?ナルガス兄さんに対しての反応が本当にそっくり!」


「全くだなコルナ…だがあの感じは多分将来男を食い物にしそうな雰囲気しかしないんだが、俺の勘違いだろうか?」


「……大丈夫よゴーフ、私にもそう見えてるから」

コルナ達もレダ達パーティの近くから僅かに間をおく。そうでなければ、この100体分の大所帯ではくつろげるスペースを確保できないから。


他種族の仲間モンスター達と共にそれぞれが皆、空間操作で圧縮していた食事の入った入れ物を取りだし貪るように食べていく。


「…お主達、こんな所に来ては危険だと我は言ったはずだが?」


子供達「ライ先生‼︎」


「ご、ごめんなさいライ先生!お姉ちゃん達にどうしても食事を運びたかったから…」


「ラオーガ…」

レダは優しくラオーガの肩を腕で静かに抱いた。


「……仕方あるまいか、もう今更戻るよりもあの光景を今のうちに見ておいた方がかえって良いやも知れぬ」

ライが指差す方向にこの戦場にいる皆全員が視線を向けると、そこにはハニワ姿のゴーレムが『赤い光を纏う何か』と戦い続けているのが見えた。



・単騎で、ルシフェルを相手に遊び続けるナルガス


「おーいハニワルシフェル!さっきからどこ狙ってんだ?さっさと当ててみろよノロマさん!」


「う、うごーーー‼︎」

実際に感情を表に出しているのはルシフェル……ではない。

異空間で自分を投げ飛ばした相手が彼であることを覚えていたハニワ自身だ。


今日初めて『怒り』と言う感情が生まれた為、今に至っている。

もっとも、外の景色が全く見えていないルシフェル自身は中に響く衝撃音だけしか聞こえないが、中でエール(?)を送り続けていた。


(いいぞ…もっとだ、もっと戦え!その調子でこいつを滅ぼせ!)

無論、後で彼は皆に封じ込められるだけの言わば小者でしかない…本人はこの世界にいる誰よりも弱い存在になっていたことに、全く気づいてはいなかった。



「お、お兄ちゃんよねあれ?跳び跳ねたり攻撃してはいるのにまるで勢いが感じない……もしかしてまた遊んでる?あはは…」

レダはナルガスの性格をよく知っているため、乾いた笑顔をしたまま少し呆れていた。


「……綺麗」


「俺達の息子はやはり、本当に英雄だな」

両親に至ってはもう些細なことなので、もはや気にも留めていない。


ただ目の前に見えている光景を楽しんで見ていた。


「あれが…ナルガス様?」


「あのようなお姿にまでなれるのね…」


「どうしよ…あたしナルっちに惚れそう」


「「それはダメー!」」


「えー?二人だってそーじゃーん⁉︎」


「あれが本当にナルガスお兄ちゃん?すごい…」

女生徒三人組はその場で言い争い、ラオーガは目の前に見える赤い星から目が離せないでいた。

その光景はまるで、赤い星が皆から目を背けようと相手の前で躍り続けているかのようにとても楽しそうにしている。


あちこちを跳び跳ねたり時々小さな打撃音が空気を伝ってここまで響いてくるが、どちらも倒れることは一切無かった。

そして皆がその姿に魅入ってるなか、コウテイアホウドリ族の足に捕まる状態のまま空を移動してきたヴォルス達が見えてきた。


各自がつぎつぎと、地上に降り立ってくる。


「皆!どうしてお兄ちゃんだけがあそこに残っているの?」


「私も知りたい…彼はなぜ一人であそこに残ったの?」

レダとルーナは、ヴォルス達パーティに尋ねてきた。


「その事でレダとここにいる全員に話がある…どうか聞いてくれ!ライさん、あなたも来てくれて丁度良かったです!」


「む?どうしたと言うのか」

ライはヴォルスに説明を求めた。


「はい。実はエリオルからの提案で…」

ヴォルス達はあのハニワゴーレムの中にいるらしい、彼の神眼とレダが持つオーラ視でしか見る事ができない悪魔…ルシフェルの姿を見出して、ここにいる皆で空間操作を使い閉じ込めると言う話を伝えた。


「なるほどそういうことね、さすがはお兄ちゃん!足止めがうまいわ…すぐに行きましょ?」


「待ってレダ!皆を安全に運べるあの乗り物を私たちは持ってきてないのよ?直接皆を空間の中に無理矢理入れて移動なんかしたら、また立てなくなるじゃない

その間に攻撃を受けたらどうするの?」

母レアナは、レダを一度冷静になるよう意見を伝えた。


「話は聞かせて頂きました、多種族の子供達…私達天使軍も神と一緒にあなた方が言われるその方法で封じ込める時間がつくれるよう、これからナルガスの援護に向かっていきますので万全の状態で来てください」

天使長・グレニエルが上空の天使軍から離れて降りてきて、共に戦う事を告げた。


「良かった…まだお兄ちゃんの体力は十分あると思いますが、変なところで失敗しやすいので

お兄ちゃんの負担が少しでも減るのなら私も落ち着いて待てます…天使様」


「ええ任せてください……ただ分からないのですが、あの子一人でも一瞬で倒せそうな気が私にも思えてならないのに、何故彼はそうしないのでしょうか?」


「お兄ちゃんは多分、皆の力を見たいんだと思います

あと、少しでも皆と一緒に何かをやりとげたい…そんな風に私は感じます

それにこんな約束もしてくれた……例え更に強くなるとしても、絶対怒りに身を委ねないって!きっとこれが、1番の答えかもしれないです」


「そうですか…あの子は神様と皆の約束を守ろうとしているのですね?では私も早速神様の元に戻ってこの事を伝えた後、あの子の側へと向かって行きます」


「はい!」

レダが満面の笑みで答えると、グレニエルも頷き上空へと戻っていく。

しばらくして彼らは、急いで援護に向かっていった。


「レダ!僕達は転移魔法でルードスとゲラルドの皆に各自でこの事を伝えてくる…だからもう少しだけ待っててくれ」


「分かったエリオル!早く帰ってきてね」


「もちろん!」

エリオルはヴォルス達のいる場所へと戻り、輪になって集団転移を開始した。


「おーいレダちゃんちょっと良いか?」


「えっと、どうしたのルガースさん?」


「実はよぉ、少しの間で構わねぇからラーナの相手をしてくんねぇか?ゲルルに空へと逃げられてしまったせいか退屈過ぎてあそこでごろ寝し始めてよ

俺はあそこからこちらに向かってくる…俺達の家族を迎えに行ってくるから!」


「え?……ふぇ⁉︎何なのあの見たことない乗り物!」


「あれはな…俺達イェルガー族が作り上げた水陸両方移動する事ができる、世界にひとつしかない船だ!どうだすごいだろ?」

ルガースの指差す方向に見えたその乗り物は、キリング・ミールの皮で作った帆と大陸のどこにあったのか、たくさんの木材と竜種モンスターの首を船首にした物を含め鱗等のパーツ、そして船の外側にはキリング・ミールの牙が生えたかのような突起物が無数に至る所から出ているといった、外見がとても奇怪な乗り物であった。


「いやぁ、コウドル達の国から出て強敵と戦って過ごしている間にちょうど移動中だった家族と再開してな?

俺とラーナが倒した素材を使えば、風を受けて砂漠だけしか移動できなかったイカダからもっと良いものが作れるって俺の弟…ルガートが言ってきたんだよ

それで持ってた素材を全部渡したら、あんなのができ上がっちまったんだ!はっはっは‼︎」


「へ、へぇ~…」

リアクションすら出なくなったレダは、気にするなと言われつつルガースにそっと背中を押されて、ラーナの所へと進んでいった。


「…私、お兄ちゃんだけが突拍子もない事をするんだと思ってたけど違ったのね?ラーナ」


「うふふ!そう言うことよレダお姉さん……そうだ!一度でいいから私と同じように、レダお姉さんも魔法で武器を作って見せて?」


「魔法で武器をつくる?どうすれば良いの?」


「簡単よ!自分の使いたい武器を頭でイメージして魔力を練ると……はい、こんな感じで私の鎌が出来上がり♪」


「………」

思考停止でフリーズしてしまったレダを、ラーナは彼女が正気を取り戻すしばらくの間、柔らかいその頬っぺたをプニプニして遊ぶ格好で退屈しのぎを始めた。



こっち…ハニワ・ルシフェルを相手にしていた俺は、まだまだ時間稼ぎをしていた。しばらくすると俺のそばに来てくれた天使様達も、ともに奴を食い止める手助けをしてくれるようになっのだ!。


「…皆、どんだけ来てくれるんだろう?後ろから神様と天使様達が来てくれたけど、まるで俺達が考えているのを知ってるみたいに時間稼ぎを一緒にしてくれてる?

良かった!これなら動きすぎで疲れずに済む」


ナルガスは皆が揃ってくれるまで、更に一人地上で踊るように跳ねながらルシフェルの周りを何度も回り、来るべき時が来るまで何故か一人で歌いながら動いていた。


「すっかり遊んでやがるなナルガスは……

まあ怒りに囚われるなと今まで釘を刺してきたし、守ってくれていて俺も安心ではある

それにこれはなかなか…面白い方法で野郎の動きを止めることができそうだな?」


神ゼオはナルガスが相手に身動きをさせないように跳びはね続けている中で、地面が少しずつへこんでいったのを見てとある奇策を思いついたのだった。

更新が遅れて、申し訳ありません…リアルが忙しかったもので。

明日の朝か今日の夜にでも、かけるときに書き上げていきますんでよかったらまた見にきてくださいね?


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