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未踏の地

俺が巨人の攻撃を受けて大陸から外にある海をも越えてしばらくすると、先の方に砂漠と岩山に囲まれた所か見えてきて俺はそこへと落ちて行った。


「ぐあっ‼︎…がはっ!」

空間の中で数回大きく転び続けたあと、勢いが収まったのか静かになった。


「イテテテ…良かった、俺はまだ生きてる‼︎」

奇跡的にも俺は打ち傷程度ですんでいた。空間の多重層…とっさの思い付きとは言えど、うまくいって何よりだ。


「こうしてはいられない、神様にゲラルドの様子を聞かなきゃ!」


スキル・神々の智恵発動


「ナルガス!無事だったか⁉︎」


「神様!はい、なんとか…それよりもゲラルドは?みんなは大丈夫ですか?」


「落ち着けナルガス、ゲラルドのみんなは無事だ

あの巨人はどうやらお前を倒すのが目的だったようだが…身に覚えとかはないか?」


「身に覚えですか…一つだけあります」


「なんだ?」


「実は…」

俺は教会のライさん達が作ってくれた修行場に入って、ハニワ型のゴーレムを相手に集団戦の練習をしていたこと。


そして、その中で目には見えないが黄色い気配の奴がルーナに近づいていたので、ハニワの一体をつかんでそいつに投げつけ、遠くへと飛ばしていったことを自分の分かる範囲で答えた。


「…恐らくそいつは魂になってさまよい続けていたルシフェルだ

ちょうど万年龍だったゼムノスの問題があっただろ?あの時ずっと奴の痕跡がないか探すためにバタバタしていたんだ」


「そうだったんですね…じゃあ、あの巨人はそのルシフェルなんですか?」


「それは俺にも正直分からねぇんだ

第一、先代の神が初めに作ったこの世界がどんな仕組みで成り立っていたのかさえ、後から神になった今の俺でもまだ分からねぇくらいだしな…

とにかく、お前が無事だということはライを通して俺が伝えておく!」


「ありがとうございます!それでここは……どこなんですか?」


「そこはアルハツァク…巨大な岩山と汚れたオアシスしかない、広大な砂漠地帯になっているんだ

そこに生き残ってる奴は、砂漠の猫族・イェルガー族だけなんだが用心しろよ?

奴等は迷いこんだ奴はなんであろうと地のはてまで追いかけ食い殺す獰猛な獣そのものだ!

無理に戦ったり話しかけようとはせず、その場から逃げろよ?」

えっ、何そのヤバそうな連中……


「逃げろって、方角すらも分からないんですよ?太陽を見て方角をみたくてもこの砂煙の中じゃどこにも見当たりませんよ!」


「安心しろ、今いるところから比較的マシな所に移動できるのはちょうど風が向いている方向にだけまっすぐ進めばいい…

ちょうどその方角が東になっているから、動くなら今だぞ」


「分かりました、ありがとうございます!…ちなみに何日でゲラルドに着くんでしょう?」


「……お前の足でだと、順調に行っても10年だ」


「10…年?うう、校長は誰が代わりになってるのだろうか?それにみんなと模擬戦するはずだったのに俺、何もできないまま大人になっちゃうのか?空を飛べることが出来れば少しははやく…」


「それなら少し険しいが、10年はかからずともそれよりは少し早く帰れる方法がある

だがイェルガーの縄張りを過ぎた先にしかないぞ?

なので[渡り]ができるコウテイアホウドリ族というお気楽な連中がいる住処を探せ」

ん?コウテイアホウドリって…まさか


「コウドルの故郷…かぁ」


「ふふふ、そう言うことだ…彼らの住みかは今立っているところから北の方角にいる

かなり危険な道だが本当に行くのか?」


「行きます…できれば食われないように逃げ延びてはみるつもりですけど」


「おう、頑張って生きろよ!あいつらにもこの事を伝えておいてやるから安心しろ」


「はい…じゃあ行ってみます!」


「おう!」



ナルガスは一人、一刻も早くゲラルドに戻るため、危険な所へと足を運んでいくことにした。その様子を、神は天から静かに見守っている。


その頃、ゲラルドでは泣き続けるゼムノスを励ますため皆が囲んでいた。


「ワシだけ!ワシだけがおめおめと戻って来てしもうた…どうすれば良いんじゃ〜」


「お、お兄ちゃんは絶対死んでなんかいないもん!だから大丈夫なの‼︎」

レダは泣いているが、決してくじけずにいようと大声を張り上げていた。


「そうよ!まだ諦めちゃダメ、ゼムノスさん」


「ジルカの言う通りですわ!それにご覧くださいな

ライ様がちょうど神様からのお告げを聞いておられますよ?きっと、ナルガス様のご無事を聞かせてもらってるのでしょう」


「おーいサラティ、みんな~‼︎」


「ルネーガ!それに、みんなも…」

サラティ達の前にコルナ達別パーティを含めたルードスチームと、ナルガス達の両親や国王ミアギルド長達、そしてジグルさんとギウルさんがここ離れの教会へと集った。


「「ナルガスは‼︎」」

両親が一番早く息子の事を聞きに来た。


「うっ!く…あの方はワシを空間に閉じ込めて先に逃がすためゲラルドにまで蹴りおとされたあと、何重にも重ねたと見える空間操作と盾を使って防ごうとされてました!

じゃがむなしくも、遥か遠くへと飛ばされて行ったのです!ワシがもたついていなければ……」


「…皆よ、我の言葉を聞いて頂きたい」


「……」

この場にいる全員が静かになり耳を傾けていた。


「神から伝えられたのだが、ナルガス殿は今も無事…とのことだ」


「よ、良かった!」


「おおおーー‼︎」

ここにいる皆全てが嬉し泣きする者と、感激の余りに雄叫びをあげる者がいる中、ライは複雑な表情で、まだ続きがあると告げる。

 なので興奮覚めやまぬ者も、努めて冷静に聞くよう意識した。


「今ナルガス殿は、アルハツァクと呼ばれている広大な砂漠地帯にまで飛ばされてるとのこと…」


「アルハツァクだと‼︎我らの移動手段では15年はかかってしまう所ではないか⁉︎」


「国王様はご存じなのですか?」

ミアギルド長はおずおずと聞いてきた。


「うむ…遥か昔10先代前の王が、そこからはるばるこの地に来たと聞いた事がある!

確か当時の種族がイェルガー族は猫族の中でも一番獰猛で、さ迷う旅人を構わず食い殺す程の暴食民族だと

もっともここ…当時のゲラルドに来てからは徐々に荒い気性はなくなっていき、多くの種族とも交流を持ってはいたらしいがな」


「じゃあ今は?」


「…そこについては神から聞いたことを我の方から伝えましょうぞ

イェルガー族は今に至るまで、このゲラルドから再び離れて故郷である砂漠へと戻っているそうです

そして過去と同じく、さ迷う旅人を食い殺す連中に戻っていると……」


「嘘…じゃあナルガスは‼︎」


「レアナ落ち着け!あの子は強い…だから必ず無事に帰って来るさ!」


「わかってる、分かってるけど!それでも不安でたまらないわよ…」


「…ライさん、神様はお兄ちゃんになんと言ってくれていたの?」


「ナルガス殿の足では、順調にいっても10年はかかるそうですな

そして、イェルガー族の住みかの北にあるコウテイホウドリ族の国に順調に着けば、空を飛んで来る分だけ早く着くと言われたようです

ナルガス殿は少しでも早くここにたどり着く望みにかけ、危険な道を選んだと…」


「コウドル…」

リオンは、かつて自分が忌み嫌った相手の国がナルガスの帰還に必要不可欠な存在になったことを聞き、複雑な気分になっていた。


「リオン…」


「平気よエリオル…ありがとう気遣ってくれて」


「うん…そっか!じゃあみんな絶対大丈夫だよ

お兄ちゃんが無事に帰って来ることを信じてみんなでずっと待とう?何年かかってもいつでも迎え入れる為にじゅんびしなきゃ!」


「そうだな?あいつが更に強くなって戻って来るかも知れねぇし、このゲラルドを俺たちだけでも守れるようみんなで強くなろうぜ!」


全員「おう‼︎」


「待ってヴォルス!それも必要だけどさ、ナルガスの代わりに校長先生になれる相手っているの?」


全員「………」


「ワ、ワシが…ワシが坊っちゃんの代わりに校長とやらになろうではないか!」


「ゼムノス殿‼︎」

ここにいる皆が、一斉にゼムノスに注目する中でただ一人…国王のドルガノフ・ヴァン・ゲラルドが静かにゼムノスを見据えていた。


「……お主がワシを信じるか否かは自由じゃ

じゃがワシは、かつて敵として戦ったレダお嬢様から受けた痛烈な仕打ちと神・ゼオとナルガス坊っちゃんの慈悲故に生かされた!

それなのになにもせず、ただのうのうと生きていたらと思うと歯痒くて辛抱できんのじゃ!

じゃからずっととは言わん…あの方が帰って来るまでの間ワシに留守を預からせてはくれ!頼む…」


「あれ?なんか私すごく嫌なイメージしかついてない気がする…」


子供達「ソンナコトナイヨ?……スススッ」


「え~、ちょっとみんな⁉︎」

レダの怖いところをここにいる子供達皆が思い出してレダから目線を反らし、レダはそれを知って抗議する。


「まあレダは怒ると豹変するのが分かっちゃったからなぁ…私も怖かったし」


「おれもすごく怖かった…」


「ふ、二人までぇ~‼︎」

レダ達のやり取りが隣で繰り広げられていても国王とゼムノスは全く目をそらす事なく、共にまっすぐ数秒間ほど見つめ続けていた。


「フゥ、仕方がない……良かろう!本日よりナルガスに代わり、ゼムノスをルードス学園の校長に任命する!」


「…感謝する」


「その代わり激務が予想されるが構わぬな?」


「無論ですじゃ!」


「ゼムノス殿、かたじけない!」


「じゃ…新しい校長・ゼムノス先生にナルガスの仕事を引き継ぐに当たって相談し会わないとね?みんな!」


全員「おおー!」


「お兄ちゃん、私たちは大丈夫だから何年かかっても良い…必ず帰ってきてね?それとお兄ちゃんのお嫁さんは私だけなんだから!」

レダは天を見上げて、今必死に帰る手段を探しているであろうナルガスへと恋慕う乙女のごとく、心静かに待つことを決めたのだった…



一方、現在ナルガスは北に向かい順調に進め……そうにない事態へと陥っている。


「…あちゃ〜、いきなりこうなっちゃったか!できれば穏便に事を進ませたいんだけどなぁ?」

目の前にはまるでご飯に早くありつきたくてうずうずしているといった感じに、血走った目をした猫族の姿が見えている。


「うわぁ、まともじゃないよこの緊迫感

とにかく殺さない程度に本気で戦いながらここを押し通らせてもらうとするか!……行くぞ‼︎」


「シャーー‼︎」


「ナ"ーオー!」

俺の声を合図に、連中も威嚇の声をそれぞれが出しながら突撃してくる。


砂地だから足を何度もとられるのがかなり苦しいけれど、歩幅を狭くすれば対処しやすい。


「うおぉぉ~‼︎」

相手達に負けないくらいの勢いを感じる雄叫びをあげ、疾風のように駆け出した俺。


すれ違い様に相手の武器を持った手だけを、集中的に狙いを定めて順次切りつけて行った。


「ぎゃあ‼︎」


「いでぇ~!」

まだ来るのか!


「はぁぁーー‼︎」

細かく移動しながら、俺は相手の手や足を次々と切りつけて戦意を奪おうとした。


その直後、一人のイェルガー族の子供が武器をもたずその鋭い牙で噛みつこうと突っ込んできたので、伏せてからすかさず腹に一撃だけ蹴りを食らわせた。


「かはっ!」


「悪いな、急いでるんだ」

そのまま包囲網を突破し駆け出そうとしたところで、思いがけない事態が起きた!


「…ぎゃあ~‼︎」


「ちぃ、また奴か⁉︎」


「全員逃げろ~‼︎」

声のする方を見るとそこには、今まで見たことがない大きさの虫型モンスターが突如砂の中から姿を現していた。


イェルガー族の一人をその強靭な顎で捕らえ生々しい肉を咀嚼する音をたてながら、一瞬で息絶えた猫族が骨も残らず食い尽くされるその瞬間を俺は見てしまった。


「う、うえ~⁉︎…ゲホゲホ!」

なんだよこれ、気持ち悪すぎるよこんな光景は!

これがここの日常だっていうのかよ!


「キャー‼︎待って、まだ私の赤ちゃんがぁーー!」


「バカ!あれはもう助からん…置いていくんだ‼︎」


「い、いやあぁぁーー‼︎」

こんなのがいるなか、この人達は生き残ってきたというのか…


『イヤアァ、助け……きゃあああっ‼︎』

やめろ…


『逃げろ~!…うぎぃやあぁ〜‼︎』

ヤメロ‼︎


「『誰か、あの子を助けてぇ‼︎』」

しばらく忘れそうになっていた怒りと憎しみが、目の前の惨状によって再び過去のトラウマを引き起こされる。


俺は己の怒りを解放し、目の前に立ち塞がるモンスターへとぶつけた!


「やめろぉーーー‼︎」

彼らと戦っていたときとは明らかに違う速さで駆け出し、俺は芋虫タイプのモンスターに対して自前の双剣を握りしめ、飛躍と着地してを幾度となく繰り返し連続攻撃を続けた。


その時の俺はもはや、憤怒の鬼と化していた事だろう…


イェルガー族「………」

目の前で起きている事が信じられないという目で、彼らはじっとナルガスを見つめていた…


「ちぃ!キリがねぇ…やっぱり思いっきりこいつで切り刻んでやる‼︎くらえ、円風刃×2!」

体液のついた双剣を素早く回すと、濃い草色をしたしぶきが辺りに飛ぶ。


両手に持っていた得物を収納してすぐ、俺は自慢の切れ味を誇る風魔法の刃を二つ展開した!


「ギギィ~~‼︎」


「とどめだ、食らえ~!」

巨大芋虫モンスターは俺の円風刃の前にむなしく敗れ去る。後に残ったのは細かく切れた肉片と、一際大きい摩石が落ちていた。


「はぁ、はぁ、はぁ…ざまぁみろ!……うっ」

あー、ダメだ。さっきお腹の中身の物を吐き出してしまった分、気分が悪くなったかも知れない。


「ははは…俺はもう助けたこいつらに食われちまうかなぁ?神様…レダにみんなも、帰ることができなくなってごめんよ」


「……あ、あなた」

気絶してしまった俺を見て、イェルガー族は全員俺の周りを囲んでいく。

ここまで、か。なんか短い猫生だったかもなぁ?


目を閉じて周りが真っ暗になっているままだが、まだ俺は神様の間についてないのかな。それに、涼しい風が立ちこめてきて先程みたいな砂煙が当たることもない。


ここは一体どこなんだ?


「俺は、地獄にでも落ちたのか…」


「アッハハハ!何いってんだこの野郎は…どっちかというと俺たちが生きてるのが地獄そのものじゃねぇか!寝ぼけてねぇでさっさと起きやがれ‼︎」


「ぐへぇ⁉︎」

い、生きてる。てか俺は誰に蹴られたの?


慌てて目を開けて体を起こしてみると、俺はテントみたいな幕の下で寝かされていたようだ。目の前にいるのは、イェルガー…族?


「えっ?何で、どうして俺は生きてんだ」


「まだ寝ぼけてんのかおめぇは?あのキリング・ミールをあそこまで細かく刻んでくれといてよく言うぜ全く!」

キリング・ミールと呼ばれているあのイモムシモンスターの肉は、驚く事に他のイェルガー族が大人から子供までうまそうに食っていた。


「お、お前は誰だよ」


「あん?俺はルガース…イェルガー族の子ルガースだ!お前は?」


「お、俺の名はナルガス!西の都市ゲラルドから来たんだ」


「な、何ぃ~⁉︎おーいみんなこっちにいますぐ来てくれ!こいつゲラルドから来たんだとよ」


イェルガー族達「ええ~⁉︎」

あれ、俺変なこと言った覚えは無いんだがこれはどうしたことか。


「なんだよ君は!何でまたゲラルドからこんな地獄の中に来てんだよ!

自害目的だったのか?だったら俺たちがあの肉を食ってから君を遠慮なく食い…ってぇ~!何すんだよ母さん‼︎

死にに来るような奴は早めに食ってやるのが一番じゃないか⁉︎」

一人の男の子が、母親らしきイェルガー族の女性に思いっきり叩かれた。


「バカ言ってんじゃないの!この子は私たちを助けてくれたんだよ?そんな子を食ったら逆に悲しくなるじゃない‼︎

ごめんね?ウチの子が変なこと言っちゃって…ほらルガート、ちゃんと謝りな?」


「え~?だって俺達は…」


「い・い・か・ら!早く謝る‼︎」


「わ、分かったよぉ…あの、変なこと言っちゃってごめんよ」


「えっ?あ、ああ別に構わないけれど…何故ゲラルドからここに来るのが死に場所と言われてしまうんだ?」


「はぁ?おめぇただのバカか!「ば、バカぁ⁉︎」あの虫をみたら分かるだろ?この砂漠はな、全てあいつらの巣の真上にできてるんだ!

簡単に言えば、俺達は奴等のエサなんだよ‼︎」


「そ、そんなところだなんて知るわけがないだろ!

ついさっきゲラルドに来てたでっかい巨人に攻撃されて、運よく生きて行き着いたのがここだったんだから!」


「なんなんだよその巨人って…まさかここらにいるキリング・ミールよりも大きいっていうのかよ」


「ああそうだ!俺は今すぐにでもゲラルドに戻りたい…そのためにはここより北にあると聞くコウテイホウドリ族の国に行って、空から俺を運んでもらうようにお願いをしに行きたいんだ‼︎」


「…ウソは言ってねぇみたいだな?みんなどう思う?こいつをこのまま行かせてやるか、それとも夜まで待ってもらうか」


「待ってもらおーよー?にぃに」


「ラーナ…」

女の子?それにしてはガリガリ過ぎない?


「ルガースの、妹か?」


「おう、俺と弟のルガート…そんでもって妹のラーナだ!ほら、ちゃんと挨拶できるか?」


「できるもん!あたしもう3歳なんだから…はじめましてラーナだよ!おにいさんのおなまえは?」

ラーナと名乗ったこの女の子は外見はほとんど食べてないのか、かなり痩せ細っていた。


ボロボロな状態の砂漠と同じ色をした小さいシャツ以外、何も着れない程に…

それにも関わらず、こんなに明るく挨拶をしてくれたこの子の姿を見て、俺は心を痛めた。


「…ラーナって言うのか、いい名前だね?俺の名前はナルガスだ」


「ナルにぃに、ナルにぃに!」

俺の前で、名前を呼びながら嬉しそうに跳ねて回るラーナを見てると、昔のレダを思い出す。


「…ルガース、この子病気でも持ってるのか?」


「⁉︎なんでそう思うんだよ…」


「こんなに明るくてむじゃきな子供をお前達が大事にしてないわけがない

食い物があっても、この子は見ても食べようとはしてないじゃないか」


「ナルガス、君は医者なのかい?だったら俺達のラーナを助けてくれよ!」


「残念だけど俺は医者じゃない…でも状態を見る方法はある…[鑑定]って言うスキルがね?試しに今から見てみるからラーナはそこで大人しくしてごらん」


「うん!」


鑑定


ラーナ レベル1


HP50/100 MP10/500

スタミナ30/500


状態異常=[食中毒]

・原因 仲間の死骸を食った為


オリジナルスキル

 闇の目

(どんな暗い闇のなかでも、クリアに見ることができる)


スキル…全て不明


称号

アンデットイーター[屍喰らい]


「……ッ!」

なんて事だ…これほど危険なステータスはいままで見たことがない。

どうする?みんなの見ているこの場で堂々と言うか、それとも……


「?どしたのナルにぃに~」

ダメだ、俺にはこの子は殺せない!


だから、今は状態異常の事だけ伝えよう。


「…ラーナ、君は食中毒って病気にかかってる

もしかして死んだ仲間の死骸か体に悪そうな生の肉とか食べなかったかい?」


「ふぇ…」


「本当なのかラーナ!」


「うん…しんじゃった子のからだを、たべた」


「なんてことを⁉︎仲間の死体は放っておくと歩く屍になると言ってるじゃねぇか!」

ルガースは思わず大声で叫んだ。


「う、うぇ~ん!ごめんなしゃい~‼︎」


「歩く屍⁉︎」

それ完全にゾンビじゃないか!


「ナルガスは知らないだろうね、イェルガー族はもともとどこにでもいる普通の猫族だったんだ

だがこの砂漠に点在しているオアシスの水を飲んだ時、突然体が変化して死んだ奴の体がムクリと起きていくから仲間なのに殺さなきゃいけなくなったと、俺達は代々聞いて育ってきたんだよ

おまけに、俺も直接見ちゃったんだ…キリング・ミールの牙にやられて、後から死んだ俺の好きだった女の子をみんなでこの天幕から外に出した時に

俺は帰っていくみんなに気づかれないように戻って、もう一度姿を見に行ったんだ!そしたら……うぅ」


「ルガートお前……」

兄のルガースが、弟の肩に手を置く。

妹のラーナはひっきりなしに泣きじゃくっていた。


「ラーナ、私たちはあなたを捨てます

あなたは先祖から受け継いだ掟を破ったのですから…」


「えっ!」


「お、おかぁさんー‼︎」


「あの、俺が口出しするのは変かもだけどずっと我慢してばかりだったら、子供でも大人でも食べてしまうんもんじゃないの?ましてやこの子はまだ3歳なんでしょ?」


「ナルガス君、私たちは先祖の掟を守り続けてきたからこうして生き残る事ができたの…娘はそれを破ってしまった

この子はもう、これ以上生き残れないのよ…もう何日も食べ物を口にしてないから、こんなにまでなったのに!どうすれば助かるって言うのよ‼︎」


「…ここには、あのキリング・ミール以外に岩場とかで何かないの?もしかしたら治せる素材が見つかるかもしれない」


「そんなもの、掟の中では語られて来なかったんだぞ!適当な事言ってんじゃねぇナルガ…ス⁉︎」

ルガースは思わず言葉につまった。


何故なら俺の体を、漆黒の小さな稲妻が纏い瞳の色は紅蓮に染まり始めていたからだ。

とうとう我慢もできなくなった俺は、この周りにいる奴等全員に聞こえるよう叫んだ。


「適当なのはどっちだルガース‼︎俺は助けるためにできることを探そうとしてるだけだろうが!

それを掟、掟とばかり言って自分の気持ちをかき消してんじゃねぇよ!」


イェルガー族「⁉︎」


「俺は絶対諦めねぇ!俺は調合のスキルも持ってるんだ…なにもしないまま終わらせてたまるかよ!」


「じゃあ俺にも…いや、俺達にも教えろよ!

お前がスキルって呼んでるものをどうすりゃとれるのか、何をすればラーナを助ける事ができるのか俺達に教えてくれよ‼︎

誰も平気で今の生活を受け入れてるわけねぇだろうが!だから…抗う方法があるというのなら、教えてくれ!

それでラーナやみんなを守れるというのなら、教えてくれよ…」


「ルガース……分かった、教えるけど分かることだけだ」


「十分だ!ラーナ、俺も必ずお前を助ける…だから信じろ‼︎」


「うぅ~…にぃに~~!」


周りも俺達に触発されたのか、ルガースの意志に賛同した。

今助かるかも知れないたった一人の少女の命を救うために…

砂漠という過酷な環境で生きるイェルガー族の直面している危機を知ったナルガス。なんか助けたいって姿勢がカッコいいですね。

次の更新は今日の午後21時です!

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