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なんだこの鳥……

テントの外から僅かに入る光が顔に当たり、眠い目をこすって俺は外に顔を出す。


もう朝か……昨日の晩は俺とレダが町のみんなから質問攻めにあいまくっていて本当に大変だったな?おかげで寝不足だよ。


「んん~~!」

俺がテントの幕を開けたことで、外の光が中に入り込み家族みんなを照らし出す。

その光を浴びたレダ、お父さんとお母さんがのそのそと起き始めてきた。


「ふわぁ~!お兄ちゃんおはよ~」


「ああ、おはようレダ…服はだけてるぞ?」


「うにゅ?……はわわ~!見ないで⁉︎」

いやいや、そんな格好して言われても


「あはは…向こうを向いておくからちゃんと直しときなよ?」


「ぷぅ~」

いちいちかわいいやつだな。


「ん~…おはようナルガスよく眠れた?」


「おーナルガスおはよう!昨日は大変だったなぁ?」


「ううん、まだ寝足りないよ。だってほとんど朝近くまで起きてて質問されっぱなしなんだから」

そう。昨夜子供達を含めて、朝日が少し山の上から顔を出す寸前まで起きていたのだ。


「ハハハ、なかなか楽しかったぞ!」


「起きるのつらい~」

レダは眠たい目を擦りながら、昨日の晩の出来事を思いだして若干げんなりしている。


「フフ!そうね、夜更かしは子供には苦しいって感じるのは当然よ」

お母さんも眠そうではあるが、どういうわけか元気である。


「お前らやっと起きたか。飯にするぞ~!」

ジグルさんは全くこたえてないのか元気に近寄ってきた。


「お?ジグルおはようさん!昨日は盛り上がってたなぁ‼︎」


「がっはっは、本当にな!とりあえず朝飯を食って移動しながら話そうか」


「おう!」

ジグルさんとのあいさつを済ませて、俺たちも着替えて皆の集まっている場所に足を運ぶ。


「おーいナルガスにレダ!おはよー‼︎」

俺たちがテントから出て皆がいるところまで来ると、シエッタが元気よく声をかけてきた。


「「おはようー」」


「昨日はいっぱいお話しをして夜遅くまで起きてたけど、ウチもみんなも大満足だよ~!」

シエッタはホクホク顔で俺たちに笑いかけてきた。


「んもぅ恥ずかしいよぉ…」

この子達も、レダが俺にとった行動を根掘り葉掘り聞き続けていたのだ。


「あはは……」

俺も照れくさくて笑う事しかできない。


間もなく冒険者達を交えて朝食に入るその前に、俺とお父さんはジグルさんに軽く弓の扱い方を教えてもらうことになった。


「とりあえずそろそろ飯だから簡単に説明するぞ~?」


「「了解!」」

俺とお父さんも、しっかりと聞く。


「弓は力づくではひけない…まずは体がふらつかないように足を少しだけ開く。そのあと弓の弦を矢の後ろにある溝にまずひっかけてみな?」


「溝って、この小さい隙間の事か?」

お父さんはジグルさんに尋ねてくる。


「おう、それだそれ!ナルガスはどうだ」


「こうかな?」

ひとまず言われたように溝にはめた。


「おう!ちゃんとはまってるみたいだな?じゃあ次はひきかたを教えるぞ?

腕の力だけでは弓の弦はひけねぇから、まずは矢と弓を持ったまま両腕を上にまっすぐあげろ。

そして体の向きは正面の標的から垂直に向けるように立つんだ!弓を持つ腕はまっすぐ伸ばしたまま、前まで持って来ることだな。

矢は体半分から少しだけ奥に引っ張るのを意識するのと、あとは力みすぎんなよ?」

俺たちに見えるようにお手本を見せながら分かりやすく教えてくれたジグルさんに習って、それぞれやってみた。


「おお、思ったよりも軽くひけるぞ!」

お父さんは一発でコツをつかんでいた。


「おっ?やるじゃねぇか!んじゃあそのまま目の前にある木に当ててみな」


「おう!」


バシュン!……スカッ!


「当たらねぇ!」


「ガハハハ!そりゃあ一発で当たるやつはそんなにいねぇさ」


「よーし俺も!」

ギリギリギリギリッ!っと、弓の持ち手が鈍い音を立ち始めた。


「ナルガスは力みすぎだ。深呼吸してもう一度構え直せ!」


「わ、わかった!」

俺は素直に従った。


「すー、はー……」

息をはき終えてから、改めて矢をつがえるとさっきまでの引きにくさが嘘みたいになくなってすんなりと構えることができた。


パシュッ!……ザクッ


矢は見事にまっすぐ飛んで木に当たり……はせず、地面に刺さってしまう。


「「惜しい!」」

お父さんとジグルさんが同時に叫んだ。


本当に惜しかった!


「もう少しで当たりそうだったな!この調子で暇を見つけて練習していけば、問題なく当たるようになるだろう」


「やるじゃないかナルガス‼︎」


「ありがとうお父さん」


「とりあえず扱い方は分かってくれたみたいだから一旦朝飯でも食うか!出発したら道中は弓でザコモンスターと戦ってみると良い。」


「おう!」


「はい!」

ひとまず皆のもとに俺たちは戻った。弓を使えばたいして音が出ないから、敵に気づかれずに倒せるはずと俺は考えていた俺。


皆と朝食をとっている時に弓の使い方を覚えた事を皆に話したら、冒険者達の一人でエルフの女性が会話に入ってきた。


「あら坊や、弓を覚えたのね?練習は結構いるけれど、当たるようになるとやみつきになっちゃうわよ?」


「へぇ~良いなぁ…ウチも今度ジグルさんに教えてもらおうかな?」


「じゃあ、オイラも覚えておこうかな?ずっとビーにばかり戦わせるてるから、いつ疲れてもおかしくないもの」


「るねーが、アリガトウ!」

ビーはルネーガのところまで降りてきて顔を擦り付けてくる。


「よし、シエッタにルネーガ!今日のギルドでやることが済んだらお前達にも教えてやるよ」


「「ハーイ!」」

朝食を済ませ、手っ取り早くテントなどの片付けを済ませて出発の準備をしていると…


「ナルガス殿~!」


「あっ、ライさん!おはよう。何でジルカさんがライさんの側で顔を真っ赤にしてるの?」


「ムッ!これはその…すまぬ、ナルガス殿にはまだ言えぬのだ。」

あー、これは大人の事情だな?なら聞くのは無粋か。


「大丈夫だよライさん!ジルカさんも良かったら一緒に来たら?一応仲間って事で!」


「えっ⁉︎あ、うん…そうだな?ありがとう」

ジルカさんは慌てて返事をしたあと、また真っ赤な顔を俯かせた。


こりゃ本気で惚れてるな?


「坊っちゃん達!」

毒スライム達が皆近づいて来た。


「できたら俺達も一緒に行きたいんだが、どうやらこの体の持ち主たちの顔は全国指名手配されてるみたいでな?ここからは別行動しておこうかと思う。

何か困った事があったら、この小箱を開けてみてくれ」

毒スライムのリーダーは、緑色の小箱を俺に渡して来た。


「これは何に使うんだ?」


「この中には俺達10人分の分身体を入れてある…蓋を開けてくれたらどこにいようと俺達がこの分身のもとに飛んで来れるぜ?」


「なにそのとんでも能力⁉︎」


「それはお互い様ですぜ坊っちゃん?とりあえず早く行かないとこのままだべってたらまた日が暮れますぜ!」


「ああ分かった!じゃあまたな」


毒スライム一同「へい!」

俺は首領になったつもりで彼らを見送っていると、ジルカさんがふと後ろで語り出す。


「はは、やっぱ男の子はこういうの好きだねぇ」


「はっはっは!まあ男子はそういうものに憧れるものだからなぁ」

ライさんは、隣で楽しそうに笑っている。


「えへへ…じ、じゃあそろそろ俺達も行こっか!」

俺達は皆が集まっている所へと移動した。


「よし皆揃ったな?じゃあ行くぞ!」

ジグルさんとギウルさんが先頭に立ち、冒険者達も後に続く。


お父さん達とヴォルス達の後ろにライさん達がつき、俺は殿を務めた。脇道から現れるスライムやファングラビットで練習をするためでもある。


おかげで標的に当てるコツも少し掴んだので、今から本格的に皆のサポートをする事にしよう。


「ナルガス殿、弓の扱いが上手くなりましたな」


「ありがとうライさん!エルフの女冒険者さんが言ってたけど、本当に当てられるようになるとこれって楽しいよ。」


「ナルガスこっちに来てくれ!さっそく弓矢で落として欲しいやつがいるんだ。」

俺はジグルさんに呼ばれたので、前に行くことになった。


「ごめんライさん、前の方にちょっと行ってくるよ」


「ウム!ご用心めされよ」


「ナルガスの坊や、羽目は外さないようにね?」

ライさんとジルカさんが、それぞれエールを送ってきた。


「もちろん!」

俺は早速ジグルさん達と合流して何を落として欲しいのかを尋ねる。


「すまないな…実はさっきから上を飛んでいるあの変な鳥みたいなやつがこっちを攻撃してきてたまらないんだ。ちと練習だと思って射ってみてくれねぇか?」


「確かに結構動き回ってるね?とりあえずやってみるよ」

俺は早速矢をつがえ、しっかりと狙いを定めてあの妙な鳥にめがけて矢を放った。


バシュッ!


「ギュア⁉︎」

矢は見事に鳥に当たったが、急所を外したのかゆっくりと下まで落ちてきた。


「キュー、不覚……」


一同「喋った⁉︎」


「せっかく良い修行だったのに、何してくれるんだい君~!」


「修行だと!」


「なんつーはた迷惑な鳥だ」

ジグルさん達が迷惑そうな顔をして口に出してる中、その鳥はお構いなしとばかり偉そうに自慢してきた。


「迷惑とはなんだい?この私は偉大なるコウテイアホウドリ族一の戦士、コウドルだぞ?頭が高…いだ⁉︎」

偉そうな態度で喋っていたコウドルってやつに、なんとリオンがげんこつで無理矢理黙らせた!


「修行するのは結構だけど私たち先を急いでるの。もう迷惑なマネはしてこないで!相手が欲しいならその辺のモンスター達と戦えば良いじゃない」


「リオンの言う通りなんだが、やけにひどく怒ってない?」

俺は思わずリオンに声をかけた。


「怒るに決まってるでしょ!修行に付き合って欲しいのなら自分から声をかけて相手が良かった時は構わないけど、いきなりおそうなんてただの迷惑よ!

みんな…こんなのほっといて早く行きましょ?」

プリプリ怒りながらリオンはコウドルを睨み付けた後、皆に先を急ぐよう促してくる。


「お、おう」


「待ちたまえ!確かリオンと言ったかな?見たところ多少は腕が立つようだから、この私が修行の相手になってあげようじゃないか。さあ!誰かこの私の傷を直したまえ」


一同「…あ"⁉︎」

バカかこいつ!こんなやつの相手してたら夕方になっても着かない…リオンの言う通りさっさと無視して行くとしよう。


「よし!みんな先を急ごう…夕方までには都市に着けるよう、俺が空間操作で一気に運ぶから」

俺はみんなに一ヶ所に集まってもらおうと声をかけているその横で、リオンが無言であいつの所に戻っていく。


え?リオン何を……って、まさか!


「おお!リオン、そなたが私を直してく……」

ドゴォォン‼︎


とてつもない轟音を立てるほど強烈なリオンの鉄拳が、コウドルのいる場所の手前に道の横幅いっぱいにまで広がる大きなクレーターを作り出した。


「…………」


「黙りなさい」

低い声でリオンはそう言うと、そのまま踵を返して俺達の元まで戻ってきた。


「り、リオン……さん?」

俺はビクビクと震えながら声をかける。


「ごめんなさいナルガス…私早く行きたいわ」


「は、はい!かしこまりました⁉︎」

思わず敬礼のポーズをとり、急いでみんなの周りの空間を囲み片手に持った俺。


「あっ!ら、ライさん依頼用の薬草はもう大丈夫だよね?」


「ムッ?ええ問題ありませぬ!早く行きましょうぞ」


「分かった!冒険者の皆さん、詳しくは後で話すけど、急いで走るから今はしっかりと体を屈んで衝撃に備えてて!」


冒険者達「え、え?」

俺はコウドルを一度見て放心状態になってるのを確認してから、急いでその場を離れた。


「……」

コウドルは一言も発する事が出来ず、クレーターの中で座り込んだままである。


数分後、あっという間に都市ゲラルドへと到着。

俺が全力で走った為か、空間内は遠心力による重力が強くかかっていたようだ。


町民一同「あー……きつかった」

なんかもう、皆は慣れたみたい。


冒険者一行「………」

返事はない、気絶しているようだ。


未体験の時は、家族もこうだったもんなぁ。


「相変わらずナルガスの全力疾走はきついなぁ…まあ、レダの時よりはまだマシだが」


「お、お父さんひどいよ~‼︎」


「へぇ?レダの方がきついのか。試しに今度運んでもらおうかな」


「も、もうお兄ちゃん⁉︎」

そんなこんなで皆と会話してると、冒険者達がようやく目を覚ました。


「あ~…なんか変な感じだな?まだフラフラする」


「おっ、目が覚めたか?」

ジグルさんが目覚めた冒険者に声をかける。


「ここはゲラルドなの?何が起きたのかさっぱりだわ」


「手荒な運び方をしてごめんなさい。これは、空間操作って言うスキルで皆のいる所だけを空気ごと切り取って、運んでいたんだ」


「なんかもう何から聞いて良いかわかんねぇが、とりあえずありがとよ?お疲れさん」

戸惑いながらも、ここまで連れてきた事に対してお礼を言われた。


「あの変な鳥、リオンの一撃を見てずっと動けなかったみたいだな。無理もねえか…あの力を見せられた日には夢にまで出てしまうだろうからな!」

ジグルさんが笑い飛ばしながら語りだし、周りの子供達も笑っていた。


リオンは…まだ怒っていたので、今はその事に触れないでおくとしよう。


「よし、みんな冒険者ギルドに行くぞー‼︎」


一同「おー‼︎」

ギルドの扉を潜ると、相変わらず冒険者達であふれていた。


「あ!おかえりなさい皆さんよくご無事で!先程地震のようなものが起きていたのを気づかれませんでした?…ってブ、ブラックビー⁉︎」

受付嬢が恐怖でひきつった顔をし、冒険者達も思わず立ち上がり臨戦態勢に入る。


「ま、待て‼︎こいつは味方だ。ちゃんと訳を話すから皆武器を下げてくれ!」

ジグルさんは慌ててこのブラックビーは同行者であるルネーガがテイマーである事と、先程着くまでに起きたことを正直に話した。


「な、なるほど、そちらの男の子ルネーガ君がテイムしてたんですね?ビックリしました!それにコウテイアホウドリのコウドル……あの見栄っ張りな鳥がまた来ていたなんて。

でもリオンちゃんだったかな?素手で地面に穴を開ける強さってどれ程のものか、とても興味深いです!」

受付嬢がとても見たがっていたので、リオンは壊しても良い所がないか尋ねてみる。


「良かったら、壊れても良い所があればやってみましょうか?」


「そうですね…あっ!そういえば外に誰も住まなくなって半壊していた固い壁がある場所があります!せっかくなのでそこに行きましょう。

あっ!ナルガスさん達ごめんなさい、先に用件を伺ってもよろしいですか?」

うっかりしすぎですよ?受付嬢さん


「北の国から飛んできた蜂どもは一匹残らず退治できたのでな?みんな、証明できる物を出すぞ」

俺の代わりに冒険者の一人がそう告げると、それぞれが持っていた袋を下ろし始めた。


「俺達が持っている袋には一つにつき100匹分の部位が入っているんだが…」

俺達にも視線を送ってきたので、レダと一緒に収納ポーチから残りの袋を全て出した。


「これくらいです」

ポポポンっと簡単に出すと10袋だった。


「……」

ギルドの酒場にいる者達や、職員まで目が点になって思考停止する。


「こ、これはまたたくさんやっつけたんですねぇ~?」

辛うじて受付嬢が声を出せてはいるが顔は真っ青だ。


「我の方も薬草採取は済んだぞ?」


「あっ…はい!確かに受けとりました。ありがとうございます」

若干安心した気持ちで、受付嬢がライさんから薬草を受け取った。


「そ、そう言えばナルガスさん。毒スライムの件はいかがでしたか?」

やや何かを期待するかのような目で受付嬢が見ていたので、早速アレをカウンターに出した。


「えっと……あなた方はなぜこんな国宝級の物を持ってこられたのですか?

これは確かキングポイズンスライムというAランクのモンスターが落とすレアドロップで、倒してもなかなか手に入らない代物なんですよ!一体何があったんですか⁉︎」

受付嬢がものすごい剣幕で捲し立て、偽りのない説明を強く求めてくる。

まさかAランクのモンスター扱いだったとは…


俺達家族は相手が転生者であることは伏せて、討伐中に起きた出来事や自分達がしたことを正直に伝えた。


「あなた方家族は本当に、初めて来た時から驚かされてばかりですよね?毒スライム達を許すのもそうですが、まさか神の技が共におられるだなんて。」

気づくと周りの皆が、なぜか神々しいものを見ているかのような顔をしている。


「み、皆そんな顔をして見てもらわなくて良いよ~‼︎」

俺も正直焦ってしまう。


「ご、ごめんなさい!つい思わず……コホン!それでは冒険者の皆様方とあなた方ご家族にライさん、依頼達成おめでとうございます!

これからリオンちゃんの攻撃力がどれ程のものか見に向かいたいと思いますので、興味がおありの方は私についてきて下さい。見学の間、皆様の報酬は残ったスタッフが準備してくれますのでどうぞご安心を!」

受付嬢がカウンターから離れて従業員用の扉から出てきて、俺達を先導するように歩き出した。

俺ら町の者達はもちろん、このギルドに来ていた全ての冒険者や、なんかボテボテした体つきをした猫族の中年男が偉そうに歩きながらついてきている。


恐らくあれがギルド長だろう。相当暇してるのか?


到着した所は、本当に瓦礫が崩れて落ちそうなくらいボロボロの家が頑丈そうな壁だけを残して建っていた。

コンコン!っとリオンも俺も軽く叩いてみたが、確かにものすごく固そうだ。材料は何を使ってるのか、俺もちょっと気になる。


「フフッ!どうリオンちゃんとっても固そうでしょ?何でもプラチナ原石と言う物を加工した特別な壁らしいわ。だからどんな力自慢でも壊せなかったし…」

受付嬢がどこか遠い目で、目の前の壁を見上げている。


「うーん、一発じゃ難しいわね……何発も叩き込めば多分行けそうだけど」


全員「……はい??」


「えっ?リオンこれいけるの?」

俺もふと問いただすが、返事は同じ。


「いけそうかな。叩き続けてしまえば十分壊せるもの!でもいまいち気がのらないのよね……何でかな?」


「そんなもんなのか。あっ!じゃあ、一番ムカつくことを思い出しながら殴ってみたら?少しはスッキリするかも」

俺がそれとなく提案を出したら、快くその方法を受け入れた。


「それ良いかも!さっきのあの鳥を殴りたくても殴れなかったせいでイライラしてたからちょうど良いわ!」


「⁉︎」

俺とレダは反射的にオーラ視のスキルを発動すると、真っ黒なオーラがリオンの全身を包んでいた事に気づく。


「お、お兄ちゃん何あれ!怖い⁉︎」

レダが怯えて俺に抱きついてくる。


「お、俺も怖いよ⁉︎みんなも下がって下がって‼︎」

俺の必死の叫びに皆は素直に従う。


「スーー、ハーー……」

リオンが深い深呼吸をして目の前の壁を睨み付ける……そして次の瞬間!


「ハアァーーーー‼︎」

ドゴゴゴゴゴゴ‼︎


リオンによる怒濤のパンチとキックがプラチナ製の壁に容赦なく炸裂!すさまじい程の衝撃音が、都市中に広がっていった。


「このこのこのこの‼︎」

俺達の顔が真っ青から徐々に白く変わっていく。

こんな攻撃を受けたやつは、間違いなく原形を留めてすらいないだろう。


「…ハァーー‼︎‼︎」

最後に強烈なパンチを決めた瞬間、プラチナ製の壁は全て細かく砕かれた状態へとなってしまった。


全員「‼︎⁉︎」

もう誰も驚き過ぎて言葉が出なかった。


「ハー!なんかスッキリしたわ~‼︎」


「ヨ、ヨカッタデスネ」

俺、もう泣きたい……ライさんなんか表情が固まりっぱなしで動けてないもん。


「う、受付嬢さんちょっと良い?」

レダが恐る恐る受付嬢に声をかける。


「は、はい何かなレダちゃん!」

つくり笑顔を無理矢理つくって応対する受付嬢さん。


「えっとね、目の前にいるリオンとあと五人の子達も冒険者になりたくてきたんだって……なれるのかな?」


「プラチナ製の壁を細かく砕く人材なんて、一人も見たこと無いですし聞いたこともありませんよ!リオンちゃんがなれないわけありません!」

狂ったような大声でレダに叫ぶ受付嬢さんであった。


「ひゃあ⁉︎」

レダもビックリして尻もちついた。


「大丈夫?レダ!」

こけてしまったレダを抱き起こそうと、お母さんが助けに行く。


「う、うん。ありがとうお母さん」


「ご、ごめんなさい!なんかもう混乱しっぱなしで‼︎」

その気持ち、皆同じだよお姉さん。


俺達ルードスの町民は、都市ゲラルドで誰も無視できないくらいの偉業を立て続けに知らしめた。なかでもリオンを含め他の子供達もみんな、目を見開くほど驚く才能を持っている事を知る…


この時から、後の世に渡りステータスとスキルの発見によって世界中の種族の運命を大きく左右する出来事へと繋がっていくのであった。

ルードスから都市国家ゲラルドについた面々の中で、驚異的なパワーを見せつけたリオン。

彼女の格闘センスも、今後のモンスター討伐においては問題ないと言えるだろう。

だが密かに、彼女を含めたルードスの子供達を利用しようと考えている存在がいる事に気付いている者は、受付嬢一人を除いてまだ誰も知らない……

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