ドラゴンは止まらない
感情は欲望の先にある、そう言ったのは何処かの哲学者だ
欲望を果たすと笑みが溢れ果たせないと怒り悲しむ、それを感情竜が吸い尽くす、しかし同じ種でありながらもそれとは全く別の竜もいた
ヴェノムドラゴンだ、憎悪は欲望から生まれ復讐する欲望を産む無限ループにより感情竜の中で最強と言われていた、それが今復活しようとしている
静かな教会で黒のゴスロリドレスのアリサが座っていた、その目線の先には赤い髪の神父がノートに記していきながら彼女の話を聞いていた
「その体は?ヴェルド、そんな趣味があるとは知らなかったよ」
「勇者に宿った体で復活しただけだ、そっちはどうだ」
ノートから視線をずらし少女を覗いた神父はため息を吐いてこたえた、ロウソクに火を灯し改めて顔を見つめ合う
「変わらないよ、黄昏の杖にドミナスと感情竜もこっち側」
「俺の力はいらんか?」
「まさか、例のドラゴンを倒すには君の力が必要だ。それにアレを壊すのも君にしかできない」
「これが終わるとなにが始まるんだ?俺は世界を征服すれば良いんだがな」
神父が呟いたそれを聞いたアリサは不敵な笑みを漏らしその声が木霊した
木の板を殴ると手に衝撃が伝わりうめき声をあげながらその場にしゃがみ込む
「これも失敗かよ…」
俺は4作目のドライバーを外し呟く、前のは増幅させすぎてダメだったし今回は魚人の肺を使って威力が足りずに失敗
「呉島、悪いが私はこれから任務に行くことになった。その間は師匠の元で修行してくれ」
「え、わかりました」
急に現れた騎士団長はそう言い残すと何処かへと去っていた、取り敢えずはその師匠に会いに行くか
「え?師匠?」
騎士団の馬車に揺られクータから少し離れた山の近くにある教会を兼ねた孤児院に俺たちは来た
後ろには巨大な霊園があり教会も手入れが行き届いていないので蔦が伸びホラー映画じみた雰囲気を感じる
「おいおいマジかよ、幽霊を切れとか言わなよな?」
「取り敢えず教会に入るしかないな」
重苦しいドアをノックすると白髪の少女が出てきた、目は濁った青で顔はモデルに居そうなレイナやエルザとは違うタイプの美人
「先生からお話はお聞きしています、どうぞこちらへ」
案内されたのは教会の小部屋、ノックをすると老人のどうぞと言う声が聞こえ部屋に入る
中にいるのは麻色の髪を右目だけを隠すように伸ばし修道服を着て紳士的な雰囲気を醸し出す、部屋には小さなクローゼットと簡素な木のベッド、そして部屋の中心に置かれたボロボロのテーブルを挟んだ方に座った老人に促され椅子に座る
きぃと音を立てた椅子と静かな部屋、老人から溢れ出る強者の雰囲気に飲まれそうになり平常心を保つ
「私は元騎士団長のリーグス・レックです、ランスロットから話は聞いています呉島様はヴェノムドラゴンを宿していると聞いているのですが」
「居たんですが前に暴れた時に何処かへ行ってしまって」
「なるほど、では剣術を教えましょう。これからは朝に薪割りと朝食、昼に剣術の訓練と山で狩猟を行いますので」
なんと言うか簡単な修行だな、しかも量は少ないし
そして次に連れられたのは俺たちの部屋、小さい部屋で本棚が2つとベッドが2つの2人部屋だ。リーグスは
「こちらにお着替えください」と丁度いいサイズの黒のジャケットと白のシャツ、それに着替え部屋から出る
今日は飯食って寝るだけ、出来るまでの間は部屋で適当に潰す事にしたが何かがこちらを見ている
「お前らなにしてんだ?」
リックの声に現れたのは俺より年上や年下の年齢は様々な子供達、そういえばここ孤児院も兼ねてたっけ
「よろしくお願いします〜」と簡単に挨拶する全員の顔を見ると1つ気になることが
なぜ顔や腕などに傷があるのか…孤児院で傷とか小説なんかだと神父が暴力を振るったり…でもあの老体では一斉に襲いかかれば普通に勝てるしあの老人の性格でそれはないだろう
「取り敢えずは様子見だな…」
小声で呟き部屋のベッドに寝転んだ、リックに飯ができたら起こしてくれと伝えた
「この街は呪われている、ならば修道院の我らがそれを解くまで」
聖銀の刃に悪霊用のオイルを垂らし教会の壁に退魔の魔方陣を記していく、この教会の背後には巨大な墓地がある。と言っても名の知れた騎士や王族と貴族など高位な者を埋葬する場所だ、一般市民には何の関係もない場所
それ故、悪霊が出てもギルドにクエストを出す事は出来ずこの教会のものたちが祓ったが今回ばかりは誰かを頼らなくてはならない
以前に帝国のネクロマンサーがここの墓地を襲撃し戦力を得ようとしたが失敗し死に際に呪いを残した、墓地に毒が溜まり続けいつかは街に出る
「毒竜の卵…しかもグレイブドラゴンか…」
独り言を呟くリーグス、背後から来る気配を感じ背後を振り返る紫の髪を風がなびかせる中性的な顔立ちの少年
「師匠ご飯できましたよ」
「ジャック、あの勇者と英雄にこれを倒す事ができると思いますか?」
ジャックと呼ばれた長髪の少年はいいえとしか言えなかった
「ひぃ、マジ…俺ちゃん死んじゃう…ゲホッ」
斧を振りかぶり薪にする木を割っていたが30分も経たずに俺は音を上げた、腕と腰に衝撃と疲れがきてもう何1つ動かさせないほど疲弊していた
この後は朝食を食べて山に登る、そして剣だけで獣を狩らなくてはならない
少し木の陰で休んでリックの薪割りを見ていた、俺は何度も外し薪が変な形に割れたがリックは綺麗に1発で真っ二つに割れている
「なんかコツがあんのかな…」
朝食が出来たと少女に伝えられ食堂へと案内され席に着いた、飯は干し肉とパンそして質素なスープだけ
味はわからなくても腹は減るので数分と経たずに食べ上げ狩りの時間まで少し魔法を勉強する
魔素を練り上げ無理やり体を動かし精霊か悪霊に渡すネクロマンサー、死霊術士
魔法使いと魔術師、魔法はしっかりと原理が解明され誰でも扱えるいわば銃のような物だ、弾である魔力と詠唱であるリロード、そしてトリガー
逆に魔術は何1つわからないが儀式と素質があれば扱える、自販機が俺にとってのイメージだ素質が金、儀式がボタンを押す、構造なんか大半の人は知らないがやり方はわかる
「しっかしどうしてネクロマンサーの資料が多いのかねぇ」
本に栞として適当な紙切れを挟み外に出た
「そっち行ったぞ!!」
「うぉらぁ!!」
眼前に迫るイノシシの腹を剣で切り裂く、臓物を撒き散らしながらイノシシは木にぶつかり絶命した
「っっう、いってぇ!」
鋭く切れたが臓物が引っかかり腕が持っていかれそうなほどの速度で通り過ぎた、剣は刃が少し欠けイノシシも血が大量に出ている
「内臓っているかな?」
「売れば安いが薬の材料になるからいるんじゃないか?教会だし」
リックは手頃な細い丸太を転がし縄でイノシシの足を結びつけ担いだ、溢れた内臓を無理やり裂けた腹に詰め込み俺も担ぎ教会へと戻った
「下手だなにいちゃん」
「あ?」
「内臓切ったら薬の材料にもならないし綺麗に切れるところじゃないから剣の刃が肉に刺さってる」
手際よく解体している少年がダメ出しをしてきた、初めてイノシシ狩ったしそんなこと何も知らなかった
「まっ、食う分はあるからいっか。あっ、ベルねぇが呼んでたから教会の地下に行っといてね〜」
ベルねぇことベリファに薬の調合を教えてもらった、まず回復薬に使う薬草とトカゲの尾をすり潰し水で薄める、これで筋肉弛緩剤の出来上がり
「一本飲めば丸2日は動けない強力な薬よ、扱いには気をつけて」
「はーい」
薄い紫の液体を瓶の中で転がし使い道を考える、敵の飯に淹れるのはできないし矢に塗るとかか?
食堂へと足を運んで晩飯に手をつけようとすると1人の声を聞いた
「じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい、兄さん」
白髪の獣人が自身の部屋に入るのを見た、ここには獣人もいるのか…なんて考えながら晩飯に手をつけた




