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最強チートの持ち腐れ  作者: 三波 秋弘
国を巡る旅
37/43

最初の希望

俺とレイナは寂れた屋敷の門を開いた、錆が手につきズボンで拭う

庭は雑草が生い茂り手入れが行き届いてい事を表している、木製の扉も蝶番が軋み歪な叫びをあげる

ここの家主は辺境の村出身の商人で金貨数10万枚程の財産を築き貴族に成り上がったが今は禁止されている獣人の奴隷売買を行い他の商人たちから恨まれていた

「家主は何かから逃げるように家具を馬車で運んだのが最後に見た姿だった…今はオンボロ幽霊屋敷か」

玄関に入ると割れた花瓶や埃だけ、左右に伸びた廊下と二階に上る階段だけがある

「とりあえず右からね」

レイナの前を行きフラッシュライトで照らし進んでいく、空は曇り初めどんどん薄暗くなっていき雰囲気を増す。最初の部屋は食堂で大きなテーブルが置いてあるのだが1つだけ目立っているものが

カラスの頭蓋骨が並べられ真ん中にろうそくが燃えている異様な物体、詳しい事は分からないが明らか魔法や魔術の類な事はわかる

「これは…ハーフリングを留める魔術ね、でも玄関に入って一度も出なかったわ」

「ボッチリングになってるのか?」

「その可能性はあるわね」

ボッチリングとは流産した子供が親を憎みなるアンデッド、ハーフリングは丁重に葬うとなるアンデッドで家を守る地縛霊

多分ここの家主の子が流産したがハーフリングにしたしかし夜逃げした後はこの魔術に捧げる花を怠った

次の部屋は客間、ベッドが並べられ埃まみれの机が置かれている

ベッドを調べようと近づくと机が派手に倒れた、その場で飛び跳ね叫び声をあげてしまう

「ひぃぃ!なに?!」

「ただ机が倒れただけよ、悪霊ぐらい私が抑えれるわ」

冷静に状況を伝えるレイナから顔をそらし俯向く、カッコつけて前を言っていたくせにビビるのは素直にダサい

せめて何かカッコつけたいと思いつつ部屋を調べるがなにもなく他の部屋も同様で最後に二階に上がる

部屋は3つしかなく分かれて探すことにした、俺は書斎をレイナは子供部屋を

本棚には本が並べられており全てが埃をかぶっているが赤い表紙の本だけは埃がない、それを手に取り中を見ると家主の日記のようだ

『…日 今日は出産日だ、妻も楽しそうに話している』

『…日 流産だった、魔術師に頼み埋葬した』

やはりここの子供のボッチリングのようだ、次のページから何か異変が始まっている

『…日 ロイヤルワイバーンの卵を落札した』

『…日 息子の様子がおかしい、何かがいるとうわ言のようにつぶやいている。魔術師が手を抜いたか?』

『やはり何かがいる』

『ヤツがいる、卵を狙っているのだろう』

『ヤツの入ってこない地下の倉庫に隠れることにした、入る方法も変えた。大工が変えるなと言っていたが緊急事態だ』

『ヤツがいないうちに財産を隠した、私ではなく家族を狙っている様だ囮に使うしかないが』

「地下か…パスワードを変更したって事は何処かに隠し扉が?」

レイナを呼ぶが反応はない、背中を伝う冷や汗といやな予感。子供部屋を開けると誰もいないだが壁にべったりと赤い手形が付いている

「うわぁぁ!!」

叫び声を上げた瞬間に花瓶が倒れ部屋から飛び出る、すると窓ガラスが叩かれた

「ぎゃぁぁ!!??」

階段を転げ落ち食堂の倉庫に身を隠しているとワイン棚の後ろに何かかあるのを見つけた、レイナも心配だが先にボッチリングを鎮めれば見つかるだろうと棚をどかすと三色のレバー

赤、緑、黄の順で赤だけが上がっている、しかし何のヒントもなしで当てるのは無理だし警報装置として間違った順にやれば鈴が鳴りボッチリングにばれてしまう

少し息をつこうと腰をかけると棚の後ろが傷ついているのを見つけた、赤と黄色の場所だ。もしかして反対側から何かボタンか何かで元の場所に戻ったのだろう

赤と黄色のレバーを使うと鐘がうるさく鳴る、扉がドンドン!と激しく叩かれノブをガチャガチャと回されるワイン棚で防ぎ鼓動を抑えると地面が崩れだした

「ウソォ?!!??」

落ちた俺は意識を失った




リックがエルザのもとに着くと立ち尽くす彼女の姿を見つけた、眼下には汚れまみれの獣人達

「どうした?」

「スリの犯人は獣人だったんだ、でも…」

獣人達の居場所を奪った人間達を恨んでいるだろうと思いエルザは話せず離れてみることしなかったらしいリックと共に話しかけてみるが誰もが離れていく

だが離れた場所にいる犬耳の老人だけは逃げもしなかった

「あの…すいません」

「なんだ?殴るのか?金はないぞ?こんな老体じゃすぐくたばっちまうぞ?」

生気のない目は白く濁っていて目を見ていると足がすくんでしまう

「いえいえ!そんな事はしませんよ!」

「白髪のウサギの獣人って知らない?」

エルザからの質問に驚いたのか老人は顔を上げた、その顔には汗を浮かべすがる様な声で答えた

「リースが何かしたのか?金なら払う、ここには顔が効くんだ。頼むあの娘を許しやってくれ…」

「彼女は街でスリをしています、何か事情が?」

リックからすればスリの事情はどうでも良いのだが急に態度を変えた老人に憐れみを感じその質問の答えを待つ

「あの娘は、リースは明るい娘でな…孤児達の面倒を見ておった、廃屋敷を見つけてはそこに子供達を住ませておる、金のないワシらは孤児どころか明日の自分すらも危うい状況でな子供を捨てるしかない時は何も言わず引き取ってくれたんじゃ」

「そうですか…居場所は?」

「頼む…リースを許しやってくれ…」

「何もしません、居場所を教えてくれませんか?」

リックの宥める声に心を許したのか老人は居場所を教えてくれた、その場所は

「呉島達のいる屋敷だ」


「ぐぇぇ」

瓦礫を払いのけ辺りを見渡し状況を確認する薄暗くそして気温が低いワイン棚が立ち並びここは隠し倉庫の様だ

かなりの広さで適当な部屋に入ると獣人の子供が3人いた、2人をかばう様に犬耳の少年が前に出た、手のひらには血が垂れていて白い破片が付いている

もしかしてあの花瓶を割ったのって、こいつらか?

「なぁんだ、幽霊じゃなかったかぁ…」

俺を驚かせた事よりも霊的な物じゃなくてホッと安心し緊張がとける

「手ェだせ」

少年は怯える様に手を出しこちらを伺っているリュックから回復薬をとりだし少年の手のひらを優しくとり回復薬を垂らす

戦いの傷を癒す事は出来なくてもこう言った軽い怪我は治せる、少年は怪我のなくなった嬉しそうに笑顔を浮かべ少年は俺の手を引いた

連れてこられたのは大部屋で中に10人ばかしの子供がいる、皆一斉に隠れたが1人だけ白いうさ耳の少女が出てきた

俺よりも年上だろうか体格差はなくとも幼い顔立ちながら大人びた雰囲気を出している

「どちらさま?」

「ここの調査に来た者だ、あんたらはここを不法占拠してるのか?」

「はっ、不法占拠?誰もいなくて外で悪霊が飛んでるボロ屋敷を王国が必要とするもんか!とっとと帰りな」

「そういう訳にもいなくてな…あ、そうだ女の子が来なかったか?」

「女の子?ああ、スペクターにやられて今は「くれしまぁ…くれしまぁ…!」

「レイナ?!どこだ!!」

その時何かが呼ぶ声を聞きその声の主を探ストここから少し離れたあかりの灯っている部屋の中には気色の悪い人の形をした肉の塊がいた

「うわっ!なんだお前!」

腰からスタンロッドを取り出し先を伸ばす、肉の塊は血にまみれ顔の様なくぼみがびっしりと付いていて恐怖を煽る

こちらに気づいた肉塊は手を伸ばしこちらに向かってくる、しかし動きは単調で鈍く攻撃の様な掴みは避けやすくスタンロッドで電流を流し気絶させようとするがなかなかしぶとい

「くれしまぁ…いたいぃ」

レイナの声で呻く肉塊、もしかしたら食ってしまったのか?

「テメェ、レイナを!!」

「ダメ!」

うさ耳が俺の腕を掴んだ、振りほどこうとするが力が強く動かせない

「ソラは彼女を助けようとしてるの!」

「ソラ?」

意味がわからない、まず声の主はあの肉塊で部屋の中には服のはだけたレイナが横たわっていてうさ耳が俺の腕を掴んでいる涙目で

肉塊は俺の腕を掴むと肉の中に取り込んだ

「うわっ、やめろ!」

「落ち着いて、外のスペクターの影響を取り除いてるの」

肉の中は暖かくとても安心できる、俺の腕を吐き出すと階段から落ちた時の痛みは無くなっていた

「ごめんな」

肉塊…ソラの頭の部分に手を伸ばし撫でる、顔はないが喜んでいる様で体を揺らしている

「ソラはここに住んでたハーフリングさ、屋敷にいるスペクターは近づくだけで幽死病を発症しちまう、ソラはそれを治す唯一の方法さ」

起きたレイナのもとに走るとまずソラに向けて叫んだ、起きた瞬間に気色の悪い肉塊がいたら誰でもビビる

次に服が無い事に叫んだ

俺はスキルで少しブカブカなコートを作りレイナに渡す、幽死病の症状は服にも移り服が溶けていく服を切り治療したのでないそうだ、同人誌な展開でなくて済んだ事に喜ぶべきか

レイナを連れて先ほどの部屋に行き軋む椅子に腰をかける

「ウチはリース、獣人の孤児を預かってる者さ」

「外のスペクターは?」

俺は見ていないがレイナは襲われた瞬間に見えたそうだ、そこをソラが助けてあそこに連れて行ったらしい

「アレはここにいた親子のスペクターさ、顔が2つあるんだ…恐ろしいよ、そこの部屋に閉じ込められててね…あたしらがアレを解放しちまったんだ、そこからソラが肉体を得てウチらを助けてくれてるんだ」

「ん?おかしいぞ…スペクターは家主の家族でソラは流産された子でわかるがヤツって?」

隣で子供と遊んでいたソラは急にその場にうずくまり身を守る姿勢になった、その時鳥の声が響く

「ヤツがきたね、スペクターを作った鳥が」

ケャーと鳥の鳴き声が響くと建物が激しく揺れ始めた、崩れた床下から見えるガラス窓からは顔の解けた化け物が見えた

「おいおい、なんだよ、あいつは!あんたは鳥の化け物も預かってんのか?」

「馬鹿言ってんじゃないよ、アレはここの家主が手に入れたワイバーンの卵を追ってきたゴーストワイバーンさ」

あのバケモンに狙われてたんだよあの家族は、リースは子供達を奥に行かせ武器を取り上に上がっていく

「あいつはウチが攻撃しなきゃ出て行かない今ならスペクターも居ないしとっとと帰りな」

「レイナ…ちょっと来てくれ」

その場から離れレイナに問いかけた

「俺はあいつらを助けたい、別になんかあるってわけじゃないんだ…なんか、こう」

表現できない気持ちを言葉に表せず少しどもっているとレイナが俺の手を引いた

「いいわ、付き合ってあげる…私も同じ気持ち」

レイナは魔力倉庫から予備の杖を取り出しリースの後を追う、俺も悪霊用のオイルを新たなナイフに垂らし外に出る

リースは身体能力の高さを生かし木々を伝いなまくらの長剣で殴っている

「レイナ!援護頼んだ!」

ゴーストワイバーンに近づき一太刀浴びせるが少し声を上げるだけでダメージは見られない、左翼を振り上げた瞬間にレイナの氷が突き刺さり攻撃を阻止した

UMPもダメージはなくまだナイフを使う方が良いだろう、近づいては切って攻撃前に逃げてを繰り返していると風が起きた

足元をすくわれ倒れ背中に走る激痛と重量に襲われる。左翼がのしかかり掴まれている

必死にもがくが固定され下半身をついばまれた

「やめろ!!くそくそくそくそ!!!」

必死にナイフを刺すがビクともしない、内臓をぶちまけられるが頭に何かが入ってくる

小さい男の子と痩せた女が倉庫にいてどちらも怯えきっている、今見ている視点からは嘴が見える

(これ、ゴーストワイバーンの記憶か?)

すると両名から青白い光が体から抜けどんどん形を形成していく、それはどう見ても幽霊だ

白い光を浴び元の視界に戻る、その時1つの直感を受ける

「レイナ!あのハーフリングの魔術を壊せ!」

「わかった!」

炎魔法を放ち魔術どころか部屋すら消し去った、するとスペクターが飛び出しワイバーンの顔を食い始めた

「しゃあ!!!ザマァみやがれ鳥野郎!!!」

悪霊は自分を殺したものを狙う特性がある、自分を狙い続け恐怖と飢えを敷いた、それにあの魔術実はハーフリングだけでなく悪霊も沈める効果を持っている

スペクターがワイバーンの目を抉り貪ると青白い火を出しどんどんと燃えだしていく

「これ使うか…!」

ナイフの金具を外し魔力を流す中の魔鉄が魔力により軟化し鞭状になる、それを使いワイバーンの腕を掴み引っ張る、体制を崩し倒れたワイバーンに立て続けにグレネードを投げ直後に残りの悪霊用のオイルの入った瓶を投げる

バリンとガラスが割れグレネードの爆発、地面がえぐれオイルのせいで火柱が上がる。甲高い鳴き声はかき消され煙を掻い潜り出てきたのはスペクター

「くそっ、まだ生きてやがる」

ナイフのオイルはもう乾いていて使えないし残りのオイルはさっきの爆破に使ってしまった

ウィップモードを変形させ魔鉄が硬化する、刃が伸びた状態でノコギリのような状態になるソードモードに

互いに睨み合った状態で間合いを見極め一歩ずつ離れる、リックや橘みたいに剣についてはろくにわかっていないので相手ノコギリの攻撃前に切るしかできない

最初の一撃はリースだった

振りかぶったなまくらは避けられスペクターの爪が迫る、目を閉じ死を覚悟した時肉の切れる音が響くそれはソラが前に出て肉を切らせた音だった、幾ら鋭利な爪でも厚い肉の壁は避けずソラに腕を掴まれた

すると空から橘とリックの2人が落ちてきた剣から垂れるオイルにより一度離れたスペクターを2人に任せソラのもとに走る

もうとっくに息絶えたようで少しも動かないソラをリースは抱きかかえ涙をこぼしている

「ソラはウチを初めて助けてくれた人だったんだ…親がいなくて寂しくて、でもソラはウチをずっと…」

どうやらリースはソラに助けられ希望を持てた、そんな自分が他の獣人の孤児たちの希望になれたらと孤児を預かるようになった

「太陽はただ俺たちを照らしてるんだ黒い太陽じゃ何も照らせないぞ」

仇を取るためスペクターに走ると異変が起きた

唸り声を上げるとどんどんと青白い炎が地面から溢れる、同時に視界が揺らぎ呼吸ができなくなり地に膝をつし意識を手放す


「ドラゴニックハート…ヴェノム」

呉島は口から言葉を紡ぐ、青白い火に対抗するように赤黒い煙を上げ怨竜の鎧を纏い頭には竜の頭を模した兜が現れ持っていた剣も白い刃から黒に変わり禍々しいトゲが生えている

獣のような咆哮を上げスペクターに駆け寄り剣を振り上げた、それを受けたスペクターは叫び声を上げ爪でひっ掻くが鎧で防がれ呉島はその場で跳躍し脚部のノコギリ状の装甲で相手の肩から引き裂き頭を握りつぶした

「呉島、意識は?」

橘の希望は虚しく答えは咆哮、剣による応酬が続く

力が強いといえど粗雑な剣技でバフのかかったおかげで少しの力で凌げる、だがそれすらも追いつかない連撃に少しづつ押されていく

リックと共に防いでは鎧に攻撃を繰り返しているが効果は見られない、窮地かと思いきや1つの盾とナイフに救われた

「悪い、遅れた」

「外の兵士に説明してて遅れちゃった、クレッシーが暴走したの?」

「あいつ自身が使ったんじゃない」

ケインの盾に防がれ気が立っているのか唸り声を上げる呉島、今までとは違い自分の意思ではないという事はアリサの力がついてきたせいかと考える桐生、ケインに筋力上昇と神経過敏を付与しリックと橘に治癒力を高める魔法をかける

呉島は明らかに今までと違い強くなっている、スキルを使わずリックに勝るとも劣らないその力にケインは臆していた、剣技に置いてリックは騎士学校では講師にすらも負けたことのない天才で団長流を学んでいる

それを受け流せるほどの力、それを自分では防ぎきれないのは理解していた

最初に会った時に一度戦った事もあって実力は理解している、あの時は酔っていたという事もあり負けただけで実力でいうとこの仲間内で1番弱い、魔法も劣り物理攻撃も隠密も劣るし銃に関してもだ

それでもヴェノムドラゴンの力によりパワーは段違いに上がっている、盾が一撃受けるたびに削れていく体力

スキルを使おうにも攻撃スキルは仲間を巻き込む、防御系もあいつの力じゃ簡単に壊される

「呉島!!お前はなんだ?!人間か?!ドラゴンか!!」

「ぐぁぁ!!」

橘の呼びかけに答えるような頭を抱えた呉島、ケインはその隙に兜を掴み解毒薬を流し込む

即効性の薬が効き始め鎧が溶けていき呉島の顔が露わになる、虚ろな目からは生気を感じられずヴェノムドラゴンに飲まれかけている様だ

「戻ってこい、呉島」

「た…ばな」

呉島は地に倒れた

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