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最強チートの持ち腐れ  作者: 三波 秋弘
国を巡る旅
34/43

戦場

ケインは敵の攻撃をさばきながら一瞬の隙ではじき返す、急な衝撃に驚いた敵が体制を崩し背後からエルザがナイフでトドメを刺す

「おら!おらぁ!」

斧と剣の二刀流の橘が振るう、エンチャントの光が漏れ血と合わさり妖艶な軌跡を残し相手の兵士が倒れた

リックたちのチームと違いこちらは攻撃特化、回復手段はないのでケインの防御が要だ

だが銃を持つことによりケインの攻撃も有用になっている、ゲームのショットガンは遠くだと威力が弱いが実際は遠距離もいける程の強武器、ショットガンとスナイパーライフルの狙撃能力を生かし近く前にある程度削りそこにエンチャントとパリィを合わせた遠近共に強力なチームとなっているとケインが冷静に分析し

「こんなモンか、橘、エルザ帰るぞ」

と促し前線基地へと歩んでいった

だがその時何者かが行く手を阻んだ、緑の髪をポニーテールにし手にはナイフを持った華奢な少女

ケインの判断は早かった盾を構え銃口をまっすぐ向けた、エルザはナイフで臨戦体制、橘は少し戸惑ったがすぐにケイン達を見て構える

「何者だ?」

その問いの答えはナイフの斬撃、魔鉄の大盾には小さい刃などチリに同じ軽く返されお返しとばかりにショットガンをお見舞いした

それを間一髪の所で少女は交わし背後からきたエルザのナイフを己の獲物ではじき返す、橘はエルザのナイフに衝撃波を付与し己に刃を高温に熱し肉を断ちやすくする灼熱刃を付与すると斧と剣が真っ赤になり少女に切りかかった

「ウインドショット、風斬像」

エルザは風魔法で応戦し相手の隙にナイフから発した風の残像を飛ばす、ショットガンではエルザと橘に当たるため魔法で援護していたケイン

少女は防戦一方を強いられ肌には斬撃の跡が残っている、そこにいち早く気づいたケインは下位の土魔法ラウンドボールを発動させる

「母なる大地よ、かの者に礫となりて穿て」

限りなく鋭利に研ぎ澄ませた土魔法はボールではなく釘に近い形で太ももを狙い穿つ

深く突き刺さった土の釘に呻きながら地面に倒れた少女、エルザは懐からハンドガンを取り出し立て続けに3発を頭に撃ち込んだ

「なんだったんだこいつ、大して強くもねぇし」

「ケルアもそうだが帝国側の女は少し厄介だな、でもなんで上等な装備を弱い奴に?」

「うーん、取り敢えず基地に戻ろ、お腹すいちゃった」

橘は殺し合いの後にすぐ飯を食いたいと言えるエルザに少し引いたが自分の腹の音を聞いて自分にも引いた

「あ、そうだ。このチームの名前どうする?」

「チーム名か…そうだな、ケインと愉快な仲間たちは?」

「俺をメインにするな」

橘の答えにケインは笑みを浮かべながら突っ込んだ、結局チーム名はアタッカーズになった




「疲れたぁ、腹減ったぁ、寝みぃ」

食事場の端のテーブルを陣取り俺は突っ伏していた、あの後もう一度魔帝軍の襲撃がありそれを迎撃しいつの間にか日が落ちた

技術者達はもう基地の修復を済ませ勇者達用のテントも設置し終えていた、もうすることも無いので見張りは兵士が担当し俺たちは飯にする事にし俺はテーブルを確保しているのだ

飯は物体を作るスキルじゃなく魔力で作り出したカレー、勇者の1人が作ったらしい

「俺も飯くらいは…」と意気込んで作ろうとしたができたのは無味無臭のカレーもどきですぐさま消し去ったのだった

「お待たせ、中辛でよかったよな?」

「ああ、ありがとう」

空を見上げ時間を潰していると2つの皿を持ったリックが俺の反対側に座った、カレーは湯気を上げスパイシーな香りを漂わせていた、銀製のスプーンを受け取り桐生達を待っていた

「これなんだと思う?」

リックは懐から小さい酒瓶を二本取り出した、初めて飲んだワインではなくラム酒の様だ

「お主も悪よのう、共犯者は必要か?」

「もちろんだ相棒」

ラム酒を受け取り素早く魔力倉庫にしまう、酒の2本ぐらいパクっても大丈夫だろ。と言うか今の俺ちゃんめっちゃ悪だな、未成年飲酒と殺人の2連犯罪、まぁ異世界だし

桐生達も揃いカレーを食す、米とカレールーの元の世界の味を思い出し感動する

「美味いな、こんな美味かったけ?」

橘しみじみとした感想を聞きながらただスプーンを口に運ぶのだった


テーブルに置かれた木のジョッキ、中には並々に注がれたワインが入っている

今は就寝前の自由時間で女子達が森の泉に体を洗いに行っている、その間振舞われたワインをただ飲んでいた、俺は以外と酒に強く銃のメンテをしながら酒を飲む

「よしっ、これで全部だな」

並べられたメンテナンス用具を消し手を水で洗う、しかし良く何発も撃って整備不良を起こさなかったな…

次からはメンテを怠らない様にしなきゃな

酒を飲みながら適当に特撮ソングを鼻歌で歌う、桐生は爆睡してケインは馬に餌を与えに、橘は武器の手入れをしにテントへ戻った「暇だなぁ、スマホも無いしゲームも無い」

「酒ならあるぞ」

リックの声に気づきその方向へ歩む、テントの陰に隠れた柵の近くで木箱に腰掛けリックは星の広がる夜空を肴に先ほどのラム酒をラッパ飲みしていた

「飲みすぎんなよ?」

何も言わずリックは空を見上げる、夜空を彩る星達、神秘的なものを感じ俺も木箱に腰掛ける

「なぁ、お前の親父って騎士団長なんだって?」

「…ああ、今の騎士団長ランスロットの先代だ五年前の魔帝軍の侵攻を防ぐために出たら片腕失って引退した」

「そうか…悪いな、なんか。でも片手でそこまで上手く教えられるとかすごいな」

「これは団長流と言ってな騎士団長しか学べない流派だ、剣と他の武器を合わせて使うんだ」

リックの父は失った右手で槍を持ち左で剣を使っていたらしい、槍で敵を貫き動けなくなったところを剣でメッタ刺しの方法を使っていた

「団長流はすべての流派の剣術を合わせてできたんだ剣だけでも強いからな」

「橘も似た様なもんだな」

「二刀流じゃない、剣に合わせて武器を使うんだ」

「どうい「リック〜?呉島〜?」

橘が何やら呼んでいる、聞きたいことはまだあったがまぁ明日聞けばいいか

「悪い悪い、裏で酒飲んでた」

魔力倉庫からラム酒を取り出し飲みながら表に出る、呼んだ理由は水浴びの時間なので呼んだそうだ

テーブルの方を見るとレイナが見えた、青い髪が濡れポニーテールを解いた状態で髪を乾かしている、隣に座っているエルザも少しうなじが見える

舌を少し噛み理性を保つ、俺ちゃん良くあんな美少女達といて我慢できたな

「俺の下半身がハザードしそう」

「アホか、下手な下ネタは寒いだけだぞ」

「はい…」

軽く返され何言ってんだと自分でも思う、酒の飲み過ぎか?




「…あれ…?まだ朝じゃねぇな」

欠伸をこぼし簡素なベッドから立ち上がる、外はまだ暗く兵士達の談笑と楽器の音色そして松明が燃える音だけが聞こえている

ぐぅと腹の音が鳴り異常な喉の渇きと空腹感に襲われる、食事場ならまだ料理あるだろうし分けてもらうかと外に出るとカレー喉のスパイシーな臭いよりとても香ばしく上品な香りが鼻腔をくすぐる

そこからはただ匂いにつられフラつきながら足を進めた、たどり着いたのは死体置き場

死体からアンデッドが生まれるのを防ぐために聖水がまかれている、臭いの主は一番はじの聖水がかかっていない死体

生気の無い眼と固まった血そして肌についた泥、その全て空腹を煽る

「なんで俺は」

そこからは本能に従い喰った、腕にかぶりつき爪も筋肉も何もかもを食った、頭にかぶりつき雨の様に眼球を舐めまわし潰し貪る

臓器も心臓も腕も脳みそも腸も足も何もかもを喰った、貪った

しかしいくら喰おうと腹が満たされることはなかったし血を飲もうと喉は潤う事もなかった、口を切り歯が欠け鼻血がとめどなく溢れる

赤い血はいつの間にか黒く濁り、俺は______




人間をやめた

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