第七話 友人とのひと時
ぎりぎり間に合いました。
来週はもう少し頑張って早く出したいですね。
「・・・碧、お前が来たかったとこって」
昨日、碧から電話で街に行かないかと言われ、二つ返事で了承した俺。
八坂も一緒に誘われ、街の駅に集合し、碧に案内されるがまま、どこかのビルへと足を踏み入れた。
エレベーターで4階に上がり、扉が開いて驚いた。
圧倒的な光量が目に入り、大音量の電子音。
そう、
「ゲーセンだよ!!」
ゲーセンだ。
【伏見さんがすごくウキウキしてますね】
「ああ、俺も久しぶりに見た。碧が目を輝かせているところ」
普段は冷静で落ち着きのある美人な顔をしている碧だが、ひとたび好きな所へ来ると人が変わったようにはしゃぎ出す。
趣味には全力だもんなぁ・・・
「ねえ詩苑!はやくはやく!」
「そんな急かすなよ・・・八坂もいるんだぞー」
「あっ・・・ごめんごめん。お恥ずかしいところを」
無邪気な笑顔を浮かべる碧を見てると、なんだかこっちも楽しくなってくる。
八坂も同じ気持ちなのか、自然と笑顔になっていた。
【私のことは気にせずに、楽しんでください】
「そんな事言わないでよー僕はみんなで遊ぶために来たんだから」
「でもゲーセンって基本的に二人か一人で遊ぶゲームが多くないか?」
「詩苑ってば無知だなぁ・・・無知無能!」
おう。なんだお前。いきなりウザキャラにでもなったのか?
「今日わざわざここに来た理由を教える時が来たね!うん!教えてあげよう!」
【いつもの伏見さんじゃないみたいです】
「大丈夫だ八坂。俺も同じ感想だ」
「実は今日リリースの筐体が沢山あってね。それがこのゲーセンに全て集ってるわけさ!」
お前ってそんなに早口で喋るんだな。
「お、おう」
碧の勢いに押し負けてたじろいでしまう。
「あーいま引いたよね!?普段は冷静で落ち着きのある完璧な僕なのに、ゲームのことになると人が変わったようになるからって引いたな!?」
エスパーかお前は。
「安心しろ。どんなお前でも俺はお前の友達であり続けるさ」
「うわ何そのセリフくっさ」
「・・・」
いきなり冷静になるなよ泣きたくなるだろ。
【二人ともすごく仲がいいんですね】
俺達のやり取りを面白がっているのか、プルプルと肩を震わせながら、八坂はメモを書く。
なんでそれで文字がぶれないんだ・・・
「さすがは中学からの仲って感じだな」
「正確には中学二年生の後半からだけどね」
「悲しくなるから合わせてくれない?俺泣くよ?」
なんで今日のお前そんなに辛辣なの?
「よーし、早速遊ぼう!」
「無視しないで碧くぅん!?」
・・・泣きたい。
「それで、このゲームはなんだ?」
碧に連れられて行き着いたのは、中々大きいゲーム筐体。
壁側に大きなモニターとその下には約四メートル四方の床板があり、その周りは手すりのようなもので囲まれていた。
「これ?これはいわゆるリズムゲームだよ」
こんなにでかいヤツが?
「これこそ今日リリースされたゲーム。その名も」
「その名も?」
「ダンシングバトルロワイヤル!」
「・・・微妙に長い名前だな」
ダンシングってことは、あれか、この中で踊る系のあれか。
ダンエボみたいな?
八坂もキョトンとしている。
まず八坂は普段こういう所に来たりするのか?
「大体は詩苑が知っているものと同じだよ。違うのは複数人で同時にプレイするところかな」
なるほど、だからこんなに広いのか。
「最大四人プレイ可能で、プレイ人数に応じて一人分の床の広さが決まるんだ」
【私初めてですけど、大丈夫ですか?】
「全然大丈夫だよ。ルールも簡単だからね。更に個人で難易度も調整可能。凄いでしょ」
得意気に胸を貼る碧。まだ遊んでないのに楽しそうだな。
「どうやるんだ?」
「んー、そうだなぁ。やってみせた方がわかりやすいかな」
そう言いながら、碧は百円を取り出して筐体に入れた。
軽快なサウンドを鳴らしながら、モニターと床が発光する。
多分七色にピカピカしているんだろう。
光る度に黒の濃さが違うからわかる。
「まずは僕が一人でやってみるから、それでルールを覚えてね」
「見てわかるもんなのか?」
「大丈夫。わかるよ。モニターか僕の足元を見ててね。八坂さんも」
コクリと頷いた八坂は、筐体の外側の手すりに寄った。
俺もそれに習って八坂の隣へ。
碧は脚で床をふみふみとして、何かを操作している。
モニターでは色々な曲名が上下に流れていき、一つの曲名で止まった。
どうやらその曲を碧が踊るらしい。
「よし。見ててね」
碧の顔が真剣になる。
ロードを終え、画面には曲名と難易度、スコアと碧の足元が表示された。
碧の足元は、さっきと違い、光がリズムを刻みながら上下左右に流れている。
「いくよっ!」
碧が声を上げるのと同時、床に丸い光が出てくる。
それを碧がトンっと踏み抜くと、perfectという表示とともに丸が消えた。
「これはノーツって言って、リズムに合わせてこれを踏んでいくんだ。どう?簡単でしょ?」
と、碧は次々に現れるノーツを軽快なステップで踏みながら言う。
「なるほど、八坂はどうだ?わかった?」
【見てる感じは簡単そうですけど、実際にやるとなると難しそうですね】
たしかに、碧を見ているととても簡単に見えるが、油断すると足が絡まってコケてしまいそうだな。
というか、
「お前すごいな・・・」
碧が凄い。
初めはゆったりとしたリズムだったのに、曲が盛り上がりに近付くにつれ、足元のノーツは加速し、数を増やし、リズムもどんどんと早くなっていく。
それを碧は何事もないようにタンッタンッと踏み抜いていく。
「そう?これまだ簡単な方なんだけどっ!」
簡単と言いつつ、碧の顔は真剣そのものだった。
「なんか難易度のところにProって書いてんだけど?」
最高難易度なんじゃねえかそれ?
「気のせいじゃない?」
忙しそうなのに軽く言うなお前。
【凄いですね、伏見さん】
「まさかこんな才能があったとはな・・・」
感想を述べているうちに、ダンっ!と、曲が終わり、リザルト画面へと移る。
「ふぅー」
軽い深呼吸をして、碧がリザルト画面を進める。
『フルコンボ!君はプロダンサーだ!』
と、筐体からDJっぽい声が聞こえた。
「とまあこんな感じ。さっ、二人ともかもん!」
今のスーパープレイを魅せられて俺たち初心者がやる気になれると?
【楽しそうです!】
「八坂!?」
【やりましょうシオンさん!】
まあ、仕方ないか・・・
「詩苑、元気だしなよ」
「俺は元気だよ」
「八坂さんにボロ負けしたからって拗ねないでよー」
「拗ねてない!ただ自分のリズム感の無さに絶望しただけだ!」
【シオンさんすごかったですね】
「八坂ぁ!?笑顔で言うな!煽られてる気しかしない!」
あの後、俺と八坂も加わり、ダンシングバトルロワイヤルをプレイした。
結果としては、八坂が思ったよりも筋が良くて、最終的には碧にべた褒めされていた。
俺はと言うと、自分でも知らなかった絶望的なリズムセンスを自覚させられ、二度とリズム系のゲームをやらないと心に誓ったのだった。
「すごかったねえ詩苑。生まれたての子鹿みたいだったよ」
「もういいだろ!恥ずかしいからやめてくれ!」
自分でもあそこまでできないとは思わなかった。
【人には向き不向きがありますから、自信もってください】
「そのフォローが一番ダメージでけえよ!!!」
八坂は天然さんなのか?時折グサリと刺さる事言ってくるよな!?
「ところで二人とも、お腹空かない?」
「あーもうお昼か」
【確かにお腹空きましたね】
「というわけで、ここにレストランの割引券があります。三人分」
「ナイス碧。行こう」
「八坂さんもこのレストランでいい?」
【おっけーです】
「よし、いこう!」
それから、俺たち三人は昼食を取った後、街でのショッピングを楽しんだのであった。
「ただいま」
「詩苑兄遅い」
帰宅してすぐに、妹が出迎えてくれた。
予定よりも買い物やらが長引いてしまい、帰るのが少し遅くなってしまった。
「すまん、買い物が長引いてな。夕飯は?」
「お兄ちゃんを待ってましたー」
「そりゃ悪いことしたなぁ・・・」
「お土産か何かあれば許してもらえるんじゃない?」
「俺が一人で食べようと思ってたポテチビックサイズを家族で分ければ許して貰えるかな?」
ちなみに五百円。
「・・・太るよ?」
「だから分けるよ・・・」
さよなら俺の五百円。
「だるい」
俺は学校の下駄箱で靴を履き替えながら、今の心境を口に出す。
「まだ朝だよ詩苑」
隣で靴を履き変える俺を待つ碧は、やれやれといった様子だ。
「朝だからだよ・・・」
「あーそうだ、あと二週間で体育祭だけど、どう?」
「・・・嫌なことを思い出させるなよ」
「まだ決意は固まらない?」
・・・どうなんだろうな。
やってみようという思いは、ある。
でも、やっぱり怖い。
「林堂先生から頼まれてるのは下書きだけでしょ?」
「・・・そうなんだけどさ」
言いながら、俺と碧は廊下を歩き始める。
「あと二週間あるし、ゆっくり考えな?」
そうだ。
体育祭まで、あと二週間。
「あ、八坂さん。おはよ」
【おはようございます】
俺は、本当に絵を描けるのだろうか。
色がわからない俺が、絵を描いてもいいんだろうか。
【おはようございます】
もし、失敗したら、どうなるんだろうか。
林堂先生に、怒られるのか・・・?
当日は俺だけじゃなくて、吹奏楽部や声楽部、碧と八坂がステージに立つことになる。
そこで、もし、絵を描けなかったら、
【シオンさん!おはようございます!!!】
目の前に八坂がいた。
ほぼゼロ距離で、目の前にでかでかと文字が書かれたメモ用紙があった。
「・・・お、おはよう」
やばい、気付かなかった。
【考え事でもしてたんですか?】
そういえば、八坂は隣のクラスだったな。
「まあ、そんなとこだ」
「詩苑は考え事すると周り見えなくなるもんね」
・・・そうなのか?
「はぁ・・・なあ碧、空って何色だ?」
「何さいきなり・・・青色だけど・・・?」
「青・・・ねぇ・・・八坂は?」
【青です】
「だよなぁ・・・」
俺には灰色にしか見えねぇなぁ・・・
「ようお前ら、お早い登校だな」
と、俺が空を見上げていると、前方から声がした。
「林堂先生、おはよう」
【おはようございます】
「・・・おはよう」
ちょうど階段を上るところで、林堂先生が上の階から降りてきた。
「なんだぁ詩苑。悩み事か?」
「悩み事だな、主にあんたのせいでな」
「ひどいこと言うな・・・やるって言ったのはお前だろ?」
「そうだけど・・・」
「一度やるって言ったならやり切れ。お前ならできるさ。絵が嫌いなわけじゃないだろ?」
俺は、絵が好きだ。
今も、昔も。
絵を描くのは・・・どうだろうな。
【シオンさんは好きですよ。絵を描くのも、見るのも】
「え」
【私にはわかります。シオンさん表情豊かですから】
「顔は口ほどにものを言うってね。詩苑は他人の絵を見てる時とか凄い顔してるよ」
・・・すごい顔って何?
【目を爛々と輝かせてますね】
そうなの?
「昔っからそうだな。詩苑は」
「そうなのか?」
「なら、今日放課後時間あるか?」
「俺はいつでも暇だ」
「部活があるだろ?」
「・・・そのうち行くさ」
「そうかい。今日知り合いがカフェを開店するんだ。その一番初めの客として誘われてな。良かったらどうだ?」
「先生が生徒を連れ回すのって大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。友達としてだから」
なんだその言い訳。
「あの、それって僕達も」
「おーいいぞもちろん」
【私は今日用事があるので】
「わかった。じゃあ伏見と詩苑、放課後教室で待っててくれ」
「分かりました」
「わかった」
「よし。じゃお前ら早く教室いけよ。もうすぐ時間だ」
「もうそんな時間だったのか・・・」
話し込んでいる間に時間が経っていたらしい。
「八坂さん、またね」
【はい。また】
「おう。じゃあな」
教室の前で、八坂と別れる。
教室の中はいつも通り、ガヤガヤとしていた。
自分の席に座って、一息つく。
チャイムがなって、朝のホームルームが始まる。
窓の外を見ると、快晴。いい天気。
やっとハッキリと冴えてきた目を瞬きしつつ、日直の号令に合わせて、起立気をつけ礼。
着席して、先生からの連絡を聞いて、一時間目の準備。
「・・・よし」
さて、今日も一日。
頑張りますか。
続
鈴ほっぽでェす!
さて、物語はちょうど半分辺りでしょうか、体育祭まであと2週間らしいですが、現実の高校はいつ頃が体育祭なんでしょうかね?
そんなことを思いながら、次回は詩苑くんに大きな変化がおとずれる回になるといいなと思います。
では、今回はこの辺で。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




