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起きたくないにゃ

「起きたくないにゃ」


朝だった。


私は布団に埋まっていた。


完璧である。


人類はなぜ布団を発明したのだろう。


偉大である。


ノーベル賞をあげるべきである。


「起きて」


セカイの声がした。


聞こえなかったことにする。


私は眠っている。


たぶん。


「聞こえてるよね」


聞こえていない。


私は眠っている。


たぶん。


「起きて」


「眠いにゃ」


「起きてるよね」


「半分寝てるにゃ」


「残り半分は?」


「布団にゃ」


セカイが笑った。


失礼である。


私は真面目だ。


たぶん。


「起きたくないにゃ」


「なんで?」


「布団が私を離してくれないにゃ」


「君が抱きしめてるんだよ」


私は布団をさらに抱きしめた。


温かい。


柔らかい。


最高である。


「ここに住みたいにゃ」


「もう住んでるよ」


「そうだったにゃ」


完璧な家だった。


引っ越す必要もない。


「朝ご飯できてるよ」


「持ってきてほしいにゃ」


「嫌」


「ケチにゃ」


「そう」


強敵である。


私は寝返りを打った。


ごろん。


ごろん。


ごろん。


「何してるの」


「布団の向こう側に行くにゃ」


「なんで?」


「現実から逃げるにゃ」


「逃げられた?」


「まだ追いつかれてるにゃ」


残念である。


現実は足が速い。


「起きたら?」


「嫌にゃ」


「どうしても?」


「どうしてもにゃ」


「朝ご飯冷めるよ」


私は目を開けた。


重大問題である。


非常に重大問題である。


「何?」


セカイが聞く。


「冷めるのは困るにゃ」


「そう」


「でも起きたくないにゃ」


「そう」


「難しいにゃ」


「そうだね」


人生は選択の連続である。


私は布団の中で真剣に悩んだ。


一分ほど。


「セカイ」


「なに?」


「おんぶにゃ」


「嫌」


即答だった。


解せぬ。


「恋人なのに」


「朝から何言ってるの」


「おんぶにゃ」


「起きて」


「おんぶにゃ」


「起きて」


交渉は決裂した。


私はため息をつく。


布団もため息をついた気がする。


たぶん気のせいだ。


「仕方ないにゃ」


私はのそのそと起き上がった。


偉い。


とても偉い。


褒められるべきである。


「起きたにゃ」


「うん」


「褒めるにゃ」


「偉い」


「もっと」


「朝から頑張ったね」


「えへへ」


単純だと言われることがある。


失礼な話である。


その通りだけど。


私はスリッパを履いた。


一歩。


また一歩。


そして立ち止まる。


「どうしたの?」


「眠いにゃ」


「戻らないでね」


先手を打たれた。


私は渋々キッチンへ向かう。


朝ご飯の匂いがした。


悪くない。


むしろ良い。


かなり良い。


「おいしそうにゃ」


「そう?」


「起きてよかったにゃ」


「それは良かった」


私は椅子に座る。


眠い。


でもお腹は空いている。


人生は忙しい。


「セカイ」


「なに?」


「明日は起こさないでほしいにゃ」


「無理」


「そうだと思ったにゃ」


今日も私は起きたくなかった。


そしてきっと。


明日も起きたくない。

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