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褒められたいにゃ

「働きたくないにゃ」


朝だった。


私はソファに寝転がりながら言った。


セカイは新聞を読んでいた。


「そう」


「働きたくないにゃ」


「知ってる」


「働かなくても生きていける方法を考えたにゃ」


セカイが新聞をめくる。


興味がないらしい。


失礼な話である。


私は真剣だ。


たぶん。


「聞くにゃ」


「聞いてる」


「聞いてないにゃ」


「聞いてるよ」


「では質問に答えるにゃ」


「どうぞ」


私は咳払いをした。


こういうのは雰囲気が大事である。


「猫は働いてないにゃ」


「うん」


「鳥も働いてないにゃ」


「うん」


「つまり人間も働かなくていいにゃ」


「そうはならない」


即死だった。


解せぬ。


私はクッションを抱きしめる。


理不尽な世の中である。


「おかしいにゃ」


「そう?」


「猫を見習うべきにゃ」


「猫は猫だからね」


「ずるいにゃ」


「何が」


「猫だけ」


セカイは笑った。


私は真面目なのに。


たぶん。


「では第二案にゃ」


「まだあるんだ」


「あるにゃ」


私は偉い。


働かないための努力をしている。


「宝くじを当てるにゃ」


「買ってないよね」


「そうだったにゃ」


第二案終了。


私は天井を見上げた。


人生は厳しい。


働きたくない者に優しくない。


「第三案」


「うん」


「セカイがいっぱい働くにゃ」


「嫌」


「即答にゃ」


「即答だよ」


私は深く傷ついた。


気がした。


「恋人なのに」


「恋人だからだよ」


「解せぬ」


「働いて」


「嫌にゃ」


会話が一周した。


良くない傾向である。


このままでは永遠に平行線だ。


「セカイ」


「なに?」


「仮ににゃ」


「うん」


「私が働いたら褒めるにゃ?」


「褒めるよ」


「いっぱい?」


「いっぱい」


私は考えた。


褒められるのは好きである。


非常に好きである。


だが。


「働くのは嫌にゃ」


「そう」


「褒められたいにゃ」


「そう」


「難しいにゃ」


「そうだね」


世の中は難しい。


私は目を閉じた。


考え事をすると眠くなる。


不思議である。


「眠いにゃ」


「寝たら?」


「働かなくていい?」


「起きたら働いて」


「悪夢にゃ」


「そう」


私は毛布を引き寄せた。


逃避は大事である。


人類の知恵である。


たぶん。


「セカイ」


「なに?」


「働きたくないにゃ」


少し沈黙があった。


そして。


「知ってる」


いつも通りの返事だった。


私は満足した。


分かってくれているなら、それでいい。


働くかどうかは別問題である。


私は目を閉じる。


今日も私は働きたくない。


そしてたぶん。


明日も働きたくない。

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