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悪役令嬢な魔王の娘と優等生生娘な女聖騎士の板挟みになり、町長の息子の気苦労が絶えません  作者: ヘラジカ
第十章:追放と復讐の暗黒騎士

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追放と復讐の暗黒騎士 その3

魔王の決断……?

暗黒騎士と一緒に魔王の娘が俺を探していたのはこれが理由か。


「それで、魔王様は一体何を新しく始めるんだ?」

「えっ、いや、そんな改まって言う程の事じゃないんだけど」


何だ?

大した事じゃないなら、それに越した事は無いんだが。


「お父様から、聖騎士団とエルフを潰すお許しが出たんだよ」


おいいいいい!

それ、無茶苦茶ヤバい事じゃねーか!!


確かに、何時かはやらなきゃいけない事だから改まって言う程の事ではないかもしれない。

だが、これは人間界が大きく動く事案だ。


「そ、それで俺たちは何を行うんだ?」

「うーん、基本的に私とアイスくんは今まで通りかな? 強いて言えば、聖騎士団から新しい人間がこの町に送られてきたら撃退するくらい」

「それじゃあ、一体誰が動くんだ?」

「そんなの決まっているじゃない」


そう言って、魔王の娘は暗黒騎士を指差した。


「聖騎士団とエルフの双方に恨みがある彼女が適任だと思わない?」


成る程、そういう事か。

確かに、女聖騎士を中央からこの町に左遷という形で追放して一度死ぬきっかけを作ったのは、聖騎士団とエルフの連中だからな。

暗黒騎士となった彼女は復讐したいに違いない。


……だが。


「エイラムさんの言い分は一理ある。しかし、本当にそれでいいのか?」


俺は、暗黒騎士に問いかける。

すると、彼女はこう答えた。


「聖騎士団とエルフの討伐こそ私の悲願! やります!」


そして、続けて。


「……もう一人の私が止めてほしいと嘆いている。ふふっ、惨めなものだ」


とも、答えた。

そして、それに対して魔王の娘がこう話す。


「私にも、貴女の中に閉じ込められた女聖騎士の悲痛な叫びが聞こえるよ」


俺も最初は驚いた。

魔王の娘が女聖騎士に別の人格を植え付けたんじゃないかと。

だが、この人格も紛れもない彼女自身のものなのだ。


今の暗黒騎士の人格も、元は女聖騎士が閉じ込めていた感情に過ぎない。

そして、その感情を魔王の娘が無理やり魔法で引き出した結果、人格が二つに分かれてしまったと。


「エイラムさん、女聖騎士の人格が表に出てくる事はないのか? その、声が聞こえるんだろう?」

「うん、正確には魂を二分割した感じ。そして、その大部分を今の暗黒騎士が持って行っちゃったから、女聖騎士が復活するのは無理」

「それじゃあ、女聖騎士の魂は、ただ苦しむ事しかできないと?」

「そうだよ。今みたいに叫び声を上げる度に私を楽しませるだけの存在」


魔王らしく悪趣味な事だ。

口にこそ出さないが、こうやって女聖騎士を死んでも苦しませたいがためにやったに違いない。


「でもね、アイスくん。元は一つの魂だから、何れは一つに戻るんだよ」

「今の暗黒騎士が女聖騎士を完全に取り込んでしまうのか?」

「そうじゃなくて、女聖騎士の魂が自分の間違いを認める事が出来た時、自分の本心を受け入れて一つに戻る感じかな」

「そうか。あの時は彼女を説得するまでの時間が無かったからな」

「そういう事。暗黒騎士としての第二の人生が私の与えた恩恵、女聖騎士の魂が二つに分かれて苦しみ続けるのが私の与えた罰」


要するに、聖騎士だろうが暗黒騎士だろうが彼女は彼女か。

今の彼女が本当に望むのであれば、聖騎士団やエルフの討伐も俺は受け入れなくてはいけない。

それが、例え女聖騎士の魂を苦しめる事になったとしても。


「アイス殿、私は私だ。エルフが作った神樹の鎧を脱ぎ捨て、ドワーフが作った漆黒の鎧を身に着けたとしても、それは変わらない」

「そうだな。疑う様な事を言って悪かった」

「もう一人の私も、何時かきっと分かる筈。その時は、私と共にアイス殿の騎士として受け入れてほしい」

「分かった。早く、その時が来る事を願うよ」


俺は他人が苦しむのを見て愉悦を覚える程悪趣味じゃないからな。

幸か不幸か、女聖騎士の悲鳴を俺は聞く事ができない。

しかし、彼女が苦しんでいるのであれば、それが解決するに越したことは無いと思う。


「ところで、聖騎士団を倒すとなると中央というか国が黙っていないと思うのだが、いよいよ国を滅ぼして地上を支配する時が来たのか?」

「国を滅ぼす? まさか。それに、中央と争うことにはならないよ」

「……何故だ?」

「何のためにダンジョンからアイテムを産出していると思っているの? 今の中央は、国家増強のためにダンジョン産のアイテムを買い集めて続けているんだよ」


中央が魔王側と争えば、もうダンジョンからアイテムを手に入れる事ができない。

勇者も死んでしまった今、聖騎士団はもはや用済みと中央から切り捨てられた訳か。


「つまり、魔王様が聖騎士団を滅ぼす決断をしたと言うのは、中央の乗っ取りが完了したと」

「乗っ取りだなんて人聞きが悪いなあ。ただ、魔界との取引無しでは生きていけない国になっただけ」

「中央から人間界に干渉はしないのか?」

「しないよ。私たちに歯向かう聖騎士団とエルフを滅ぼすだけで、中央の人たちは今まで通り。お父様はただ地上と交易をしたかっただけだから」


まさか、それだけのために魔王は地上にダンジョンを出現させたというのか!?


──いや、ここまで回りくどく魔王が動いたからこそ、平和を保ったまま人間界と魔界が結ばれるに至ったか。

理屈は理解できる。

しかし何か、どうにも腑に落ちない気がするんだよなあ。


「でも、ダンジョンを出現させた八つの町は、それぞれ小国に格上げして支配するんだけどね」

「えっ!? どういう事だ!? ってか、この町はどうなるんだ!?」


魔王の娘による突然の爆弾発言に、俺は取り乱してしまった。


「アイスくん、君は貴族になるんだよ」


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