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悪役令嬢な魔王の娘と優等生生娘な女聖騎士の板挟みになり、町長の息子の気苦労が絶えません  作者: ヘラジカ
第十章:追放と復讐の暗黒騎士

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追放と復讐の暗黒騎士 その2

あれから俺は、女聖騎士がダンジョンで死んだと虚偽の報告を行った。

女聖騎士が死んだと知った町の人間は皆悲しんでいる。

特に彼女のファンだった女性たちの嘆きが凄い。


死体が入っていない空の棺で女聖騎士の葬式を行ったが、人気者だった彼女への参列者は少なくなかった。

この結果から、この町に来る前の彼女の不遇っぷりも少しは浮かばれたと信じたい。






そして、秘密を知った女聖騎士がダンジョンで殺されてから半月が経過した。


女聖騎士を失った事は、衛兵たちにも今だ大きな動揺を与えて続けている。

無理もない、自警団時代からの付き合いだからな。

衛兵たちと時々話すが、そのショックは今でも抜け切れていない様子だ。


「やはり、ライト様はもう……戻って来ないのですね……」

「ああ、帰らぬ人になったからな」

「突然の事過ぎて、今でもライト様がダンジョンから帰還なさるのではないかと考えてしまいます」

「残念だが、私とエイラムさんを逃がすために彼女は……」


とまあ、こんな感じである。


「俺たち、強くなってライト様の死体をちゃんと弔ってあげたいと思うのです」

「だが、第九階層は危険だぞ」

「それでも、俺たちは強くなりたいのです。ライト様が亡くなったのも、俺たちが弱過ぎて第九階層まで同行できなかったせいですし」


そうか……死体は無いが、まあ頑張れ。

冒険者だろうが衛兵だろうが関係ない。人間が強くなる事が魔王や魔王の娘の望みらしいからな。


「やっほー。アイスくん、そんなところにいたんだ」


衛兵の拠点にいる俺を見つけた魔王の娘が、声をかけてきた。


「ひぃぃッ、あ……暗黒騎士! ──し、失礼しました。どうしても慣れなくて」


俺のところに近づいていた魔王の娘は、同行者を連れている。

全身を漆黒の鎧で包み、顔がフルフェイスの兜で見えない人間。

町の人間からは、町長の取引先の娘のボディガードとして知られている存在だ。


「あの禍々しい姿に毎度身構えてしまいます」

「ハハッ、暗黒騎士とはそういうものだからな。仕方ない」


そう、彼……いや、彼女は暗黒騎士。

無口で殆ど喋らないが、稀に喋った時に聞こえるフルフェイス越しのごもった声から、微かに中の人間が女性と分かる。


しかし、町の人間は誰もその鎧の中身を見た事がない。

それ故に暗黒騎士は皆から不気味に思われ、同時に恐れられてもいる。


「気味悪く思っているかもしれないが、腕は確かだ。アレのおかげで第九階層から勇者の死体も無事回収できた」

「ライト様の死体はやはり見つからないのですか?」

「残念ながらな。だから、彼女が今でも生きているんじゃないかと思う気持ちは俺にも分かる。だが、俺たちは現実を受け入れて前に進まなければいけない。そうだろう?」

「……そうですね」


本来は俺が偉そうに言う台詞じゃないんだけどな。

だが、女聖騎士の不可解な死を隠すには、俺が彼女を無惨に見殺しにした事にして恨まれるくらいが丁度いい。

そうする事で女聖騎士が死んだかどうかの真偽から目を背けさせられる。


「もう、貴女が黙っているから皆が怖がっているじゃない」

「……申し訳ありません」

「違う! そこは『ごめん』って軽く言うの!」

「……はい」


おいおい、それは人前でこんな格好をしているのが原因だろうに。

だが、皆の前で暗黒騎士の素顔を見せるわけにもいかないからな。

この格好も仕方がない。


「アイスくん、行こうよー」

「はいはい、分かったよ。それじゃあ、また今度」


俺と魔王の娘、そして暗黒騎士は衛兵の拠点を後にした。




「衛兵たちは女聖騎士を失った事を思ったより引きずっていたな」

「それだけ魅力的だったって事じゃない? 私は今の方が好きだけど」

「そうだな。俺はどっちも好きだが……騎士殿は前の職場に未練はあるか?」

「……いいえ、特には」


俺の問いかけに対し、暗黒騎士は少ない口数で答える。

そして、暫く間を置いた後、続けてこう答えた。


「私が騎士として守りたいのは、アイス殿だけなので」


随分と変わってしまったなあ。

いや、今の方が距離が縮まって打ち解けた本来の姿……なのか?


「あの時は驚いた。まさか、目を覚ました彼女がこうなるなんて」

「『生まれ変わった』って言ってほしいかな? おかげで彼女は過去の柵から解放されて自由になれたのだから」


そう、魔王の娘によって殺された女聖騎士は、暗黒騎士として蘇ったのだ。


しかし、驚いたのはそこではない。

蘇生した女聖騎士からは、それまで執着していた聖騎士への思いが吹っ切れていた。

殺される前はあんなに魔王を毛嫌いしていた彼女も、今ではすっかりこちら側の人間である。


「それにしても、どうしてこうも変わるかなあ?」

「言っておくけど、洗脳とかしていないから。これが彼女の……元女聖騎士の本心で、素直な姿なんだよ」

「そう言われているが、本当にそうなのか騎士殿?」

「はい。……これまでは無理をして聖騎士らしく活動していたけど……今は、幸せです」


とまあ、こんな感じである。

女聖騎士だった時の彼女は、聖騎士らしく振舞おうと色々頑張っていたので口数もあった。

だが、本来は口数も少なく大人しい、暇な時は部屋で本を読んでいる女性という訳だ。


そして、生まれ変わった彼女が暗黒騎士となった理由が二つある。

一つは彼女の俺に対する思いの現れ。

そして、もう一つが……。


「アイスくん、聞いて。お父様が決断を下したの」

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