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悪役令嬢な魔王の娘と優等生生娘な女聖騎士の板挟みになり、町長の息子の気苦労が絶えません  作者: ヘラジカ
第九章:魔王の娘と女聖騎士

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魔王の娘と女聖騎士 その4

「魔王の側に来いと!? ふざけるな! 誇り高き聖騎士がそんな事、できるわけがない!!」


恐れていた通り、やはりこうなってしまったか。


女聖騎士をこの場で殺してしまう事は容易い。

だが、魔王の娘はそれを望まないし、俺もそれは同じだ。


勝機は無いが、説得する他ない。


「ライト様、お願いですから落ち着いてください。冷静に考えてください。ライト様がこちら側に来なければ、私たちは貴女を殺さなければいけませんし、こんなところで死んでも何も守れません」

「何故です……何故です、アイス殿! ただ勇者が町にとって邪魔だから殺したと言ってくだされば、私は町のため……アイス殿のために事態を黙認して、これまで通りの日常を過ごせたのに……ううッ……」

「ライト様……」

「なのに……なのに……何故、魔王なんかに、魔王の娘なんかに協力してしまったのですか!!」


なんてこった。

魔王の事なんて微塵も出さずに、適当に理由を付けて町のために勇者を殺した事にすればよかったのか!?

後悔先に立たずってやつだ。


いや、そうじゃない。

女聖騎士は、俺や父上が魔王に協力しているという一点について怒っているのだ。


まったく、これは女聖騎士がこの町に来ると分かっていた時から、ずっと注意していた事じゃないか。

聖騎士団に魔王の存在がバレれば大変な事になると。

彼女が聖騎士である限りはどうしようもない問題なのか、畜生!


ん、待てよ?

だったら、女聖騎士に聖騎士を辞めてもらえばいいんじゃないか?

そうすれば、彼女の柵も消えて素直に……。


「ライト様、でしたら聖騎士など辞めてしまわれればよいではありませんか。そうすれば、魔王様に逆らう理由も……」

「聖騎士を辞めろだなんて……アイス殿のお願いであっても、そんな事をしたら私にはもう何も……何もかもが無くなってしまいます……」


駄目か……。

だが、微かに手ごたえの様なものはある。

あと一押しで……聖騎士で無くなった彼女を埋める何かさえ与えられれば……。


しかし、そんな俺と女聖騎士の問答に痺れを切らしたのか、魔王の娘が再び女聖騎士を問い詰める。


「もうッ! 言ったでしょ? 貴女は聖騎士団からも見捨てられているの、既に何にも無いの! でも、私たちの側へ来るなら望むものは可能な限り何でも……」

「黙れッ! 例え聖騎士団の大半から見限られていても、私を養子として拾ってくれたヌーム家のためにも諦めるわけには!」

「その、貴女を養子に引き取った第二の実家とも言えるヌーム家は、この町に配属された貴女のために何かしてくれた? とっくに見限られているに決まっているじゃない!」

「くッ!」


魔王らしい強引なやり方だ。

そして、局面が局面なのか何時ものあの変な喋り方ではなく、普通に喋っている。

この際、どんな方法でも女聖騎士を説得して殺す事を回避できればいいのだが、果たして……。


「いいじゃない、こっち側に来れば。歓迎するから」

「黙れ! 誰が魔王の娘の言う事なんか」

「またそれ? 強情! だったら、アイスくんの事は要らないんだね」


なッ!

何故そこで俺!?


「気付いていないと思ったの? 好きなんでしょ、アイスくんの事?」

「違う! 私とアイス殿はそういう関係じゃない!!」

「ほらほら、照れなくてもいいから」

「私にとってアイス殿は恩人として尽くしたい相手なだけで、そんな、恋仲になりたいとか、ふしだらな気持ちじゃない!!」


俺の事を好きとか何だよ!?

いや、元を言えば女聖騎士をたぶらかせと魔王の娘に言われていたのだったな。

とは言え、結果を出せたとは自分でも思えない。


やはり女聖騎士が言う通り、俺には恩人として接していただけか。


「ふーん、いいよ、だったら私がアイスくんの事を独り占めしちゃうから」

「い、いきなり何を言っているんですか!?」

「言ってなかったっけ? 私はアイスくんと政略結婚するんだよ」

「ほ、本当なのですか、アイス殿!?」

「はい。エイラムさんがそう言うならば本当です」


今持ってくる話かよ、それ?

だが、魔王の娘には逆らえないし、本気で政略結婚したいと言うならばそうする他ない。

例え魔王側には俺なんかと政略結婚するメリットが何も無く、単なる戯れの一種だったとしてもだ。


「アイスくんはね、私の言う事なら何でも聞いてくれるんだから。例えば──ねえ、キスして。アイスくん」


魔王の娘は、唐突に俺に対して艶めかしく、しかし何処か力強く命じかけた。


いきなり何を言い出すかと思えば、この局面でキスしろだあ!?

だが、そんな気持ちや俺の意志とは無関係に、俺の体は勝手に動く。

そして、次に体が自由になった時、俺は魔王の娘の唇に自分の唇を重ね合わせていた。


「お……俺は、何を!?」


慌てた俺は、思わず魔王の娘から一歩離れてしまう。


「私の言う事なら何でも聞いてくれる……そういう契約を交わしたの。だからアイスくんは私だけのもの。私が命じれば足だって舐めてくれるんだから」


契約……だ……と!?

何時の間にか、魔法か何かをかけられていたのか!?


「え……エイラムさん、これは一体!?」

「ごめんね、アイスくん。あの時、契約の口づけを交わしちゃった。てへッ」


あの時って何時の事だ!?

魔王の娘と口づけを交わすなんて事……何時かの御礼とか言って突然にしてきた時のか!!


そして、先程からの一連のやり取りを見せつけられていた女聖騎士が、何故か絶望の表情を見せている。


「そ、そんな……」

「そんなに動揺してどうしたのかな? でも、貴女が私に仕えてくれるなら、貴女にもアイスくんを好きにさせてあげる。魅力的な話だと思わない?」

「思いません!!」


魔王の娘の甘い言葉に対して、女聖騎士は強く否定してそれをはねのける。

単に女聖騎士本人には魅力的でなかっただけなのか、それとも……。


「今、ようやく迷いが吹っ切れました。アイス殿は魔王の娘に操られていただけで、何も悪くないと。そして、私は戦わなければなりません。アイス殿をあの女から解放するために!」


そっちの方向に行ってしまったか……。

俺の事を心配してくれるのはいいが、元より魔王の娘の圧倒的な力には逆らい様がないのだ。

だから、女聖騎士も大人しく従って平和的に解決してほしかったのに、こんな事になってしまうなんて。


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