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悪役令嬢な魔王の娘と優等生生娘な女聖騎士の板挟みになり、町長の息子の気苦労が絶えません  作者: ヘラジカ
第八章:聖騎士と勇者殺しの調査

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聖騎士と勇者殺しの調査 その1

突然、勇者が姿を消してから半月。

聖騎士側も勇者が行方不明になった事に勘付いてしまった。


最初の二日、三日は気まぐれに何処かに出かけたのかと思われていた。

一週間が経過した時は、町に飽きて出て行ったのかもと思われていたが、荷物が宿に置きっぱなしで違うという事になった。

そして、いよいよ二週間が経過した時、中央の聖騎士側が何も報告が無い事を疑問視してきたのだ。


そんな訳で、例によって女聖騎士が町長の息子である俺のところに相談に来た。


「いえ、私も勇者は見かけていないですねえ」

「そうですか。ご迷惑をおかけして申し訳ないです。まったく、行方不明になるなんて何処まで迷惑をかければ気が済むんだか」

「ダンジョンで死んでしまったのかもしれません。それが、この町に来た冒険者で一番多い死因ですから」

「それならば、最後にダンジョンに入ったのを入口を守る衛兵が目撃しているはずです」


実際はダンジョン内で死んでいるんだけどな。

人目を避けるために裏口から入れてしまったせいで面倒な事になった。

だが、勇者と一緒に正面入口からダンジョンに入るわけにもいかなかったし、こればっかりは仕方がない。


「成る程。では、町から逃げ出したとかは?」

「私もそういう事にしたいのですが、宿に荷物を残したままなのが引っかかっていまして。おかげで上が納得しないので困っています」

「そうですか。町の中で誘拐されたり殺されたりした可能性は……考えたくありませんね」

「町の中、特に冒険者が集まるダンジョン近くの街も衛兵が見回っていますし、無いと信じたいです。それに……」

「それに……?」

「あまり言いたくはありませんが、あの勇者は私より数段強いです。ですので、そんな彼を殺せる人間がいるとはにわかには信じがたいです」


確かに、あの勇者は強かった。

俺も目の前で戦う姿を見たからな。


だが、魔王の娘の方が勇者よりも遥かに強かった。

それだけの事だ。


「勇者を狙っての犯行ならば何か策を使ったのかもしれませんが、確かに信じがたい話ですね」

「そうなんです。狙われるだけの理由があるだけに、上も勇者の安否を心配しているから困っています。それこそ、魔王が勇者を消したとか言い出して……馬鹿げていますよね?」


いや、案外当たっているぞ。それ。

中央で平和ボケしていた聖騎士様は、魔王が手下を地上に送り込んでいるなんて夢にも思っていないってか。


「あはは、面白いですね。確かに、ダンジョンの最深部が魔界につながっているなんて与太話もありますし。もし、この町に魔王が攻めてきたらライト様は守ってくれますか?」

「当然です! この町も……アイス殿も私が戦って守ってみせます!」


女聖騎士は自信ありげに、しかし少し照れながらそう答えた。


「戦って守る……ですか。私なら、戦わずに降伏して町の人間を守ります」

「!? どうして……そんな事を言うのですか?」

「もしもの話、例えばの事です。ライト様でも敵わない勇者を魔王が倒せてしまうのであれば、一体誰が魔王と戦って勝てるのでしょうか?」

「えっ……!?」

「私は無駄な犠牲は出したくないですし、町の人間を危険な目にあわせるわけにはいきません。勿論、ライト様も大事です。ですから、可能であれば降伏という道を選びます。戦うのは、それが駄目だった時からです」


これは、もしもの話じゃない。

魔王がダンジョンを出現させたこの町の現状だ。


町長である父上が町を守るために選んだ道だが、魔王の支配下というのもそんなに悪いものじゃない。

俺の最近は魔王の娘に振り回されて大変だが、町は今日も平和だ。


「そんな……」


女聖騎士は失望した感じの表情をしている。

魔王に対して降伏という選択肢を提示した俺を軽蔑している感じの眼差しではない。

何か、もっとこう、大きなものに対してどうにもできないという複雑な気持ちの表れだ。


だが、女聖騎士には割り切ってもらって……いや、できれば心変わりして本心から魔王側を受け入れてもらわなければいけない。

そうでないと、彼女を通じて聖騎士団やエルフの情報を手に入れる事ができないからな。

逆に敵対して魔王側と聖騎士団の戦争になっても困る。


それに、あの勇者の様に女聖騎士が死ぬのは忍びない。

……?

俺は何を考えているんだ!?


「いやいや、もしもの話ですよ。そんなに落ち込まないでください」

「えっ……そうですね。今は、もしもの事を考えている場合じゃなかったです」

「勇者、見つかるといいですね」

「そうです! 元はと言えば、あの馬鹿が消えたのが悪いのです!」


とりあえず、女聖騎士の機嫌が直った……いや、悪くなったのか?

少なくとも悪い方向からは逸れたっぽい。


「では、私は他をあたってみます。お忙しいところ、ありがとうございました」

「いえいえ、お気になさらず」


女聖騎士は、そそくさと行ってしまった。


しかし、今の時点で彼女を魔王側に引き込むのは早急過ぎるな。

周りは厄介ものだらけで不遇な扱い、味方は俺だけな状況でも、女聖騎士は聖騎士らしく堅物の様だ。

魔王側に堕とすには、まだ何かが足りない。


はぁ……。

こういう人を堕とすというのはやったことがないし、苦手だな。


女聖騎士は俺と違って、例え圧倒的な力を見せつけられても、それに逆らってしまうかもしれない。

魔王の娘が痺れを切らして女聖騎士に強硬手段を取る前に、何か考え付かないと勇者の二の舞になってしまいそうだ。

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