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悪役令嬢な魔王の娘と優等生生娘な女聖騎士の板挟みになり、町長の息子の気苦労が絶えません  作者: ヘラジカ
第七章:魔王と勇者殺し

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魔王と勇者殺し その6

当初の計画通り、ダンジョンの深層にて魔王の娘が勇者を襲う。

ああ、やはりこうなってしまったか。


「貴様、自分のやっている事が分かっているのか!? 僕は世界の救世主となる勇者だぞ!!」

「君は実に馬鹿だなあ。お前が勇者だからここで死ぬんだよ」

「なっ!? 勇者である僕を狙っての犯行か!?」


魔王の娘の発言に勇者は驚きを隠せないようだ。

まさか自分を狙ってくる人間がいるとは夢にも思わなかったのだろう。

まあ、勇者の目の前にいる魔王の娘は見た目こそ人間だが、中身は魔族なんだけどな。


「仕方ない。詳しい理由は知らないが、この勇者を倒そうというのならば最悪死んでもらう他ないな」

「へえー! 私を倒せるつもりでいるんだ」


先程勇者の次元の違う能力を確認した俺は、アレに勝てる奴はいるのかと思った。

だが、勇者に襲い掛かる魔王の娘の剣を見ると黒曜石特有の黒光り以外は特に変化がない。

剣に魔法をかけて漆黒の炎を剣に纏わせていないということは、魔王の娘はまだ本気を出していないという事だ。


「何だと!? さっきの不意打ちといい、ふざけた真似を!!」

「そう思うなら、さっさと言った通りに私を殺してみせてよ」

「言われなくても!!」


勇者は魔王の娘から一旦距離を取り、今度はこちらからと言わんばかりに自分から魔王の娘に襲い掛かる。

その攻撃を魔王の娘は剣で受け止めるまでもなく、すんでのところで華麗にかわす。


「ほらほら、どうしたの? 当たらないよ。これでも勇者なの?」

「う、うるさい!」


勇者は必死で攻撃を繰り返すが魔王の娘に当てる事ができない。

そうして勇者の呼吸が乱れて息も絶え絶えしてきたところで、魔王の娘が動く。

一瞬の隙を突き、その手に持つ黒曜石の剣で勇者の体を腹から背中まで一刺しで貫いたのだ。


「ぐッ! ごはっ……馬鹿な……能力で強化したはずの無敵の鎧が……どうして……」

「無敵だったの? 初めて聞いたんだけど」


魔王の娘は勇者の体から黒曜石の剣を引き抜く。

その剣を見ると、今度は漆黒の炎に包まれていた。

勇者が能力で強化したエルフの魔法も、魔王の娘の本気の魔力には敵わなかったわけだ。


「ち、畜生……こんなところで死んでたまるか!」


勇者は俺の方に視線を向ける。

いや、正確には俺の真後ろにあったはずの扉だ。

この部屋に入る時に通った扉の事だが、元より管理者用のものなので、こちらからは只の壁になっていて見えない。


「もしかして、逃げるつもりだった? でも、もう遅い。入る時に使った扉は一方通行だから通れないんだよ」

「そ、そんな……」

「お前はここで私に殺されて……じゃなかった。ダンジョン奥深くのモンスターに殺された事になって惨めに死ぬの」

「なっ!?」


魔王の娘の言葉が勇者を精神的にも追い詰める。

こんな時でも魔王の娘は真剣な口調ではなく、いつもの明るい調子で喋るので、それがまた一層怖い。

勇者だけでなく俺ですらゾクゾクする何かを感じてしまう。


「ううっ……何でだよ……何でだよ……」

「何でって、そんなに知りたい? じゃあ、教えてあげる。私が魔王の娘で、お前が魔王を倒そうとしている勇者だからだよ」

「そんな、だったら最初から仕組まれて……。それじゃあ、そこの男も町長の息子に化けた魔物か何かなのか……?」

「ううん、違うよ。アイスくんは地上の人間で、町長さんの息子なのも本当だよ」


信じられないと訴えかける目で、勇者が俺を睨みつける。


「貴様! 何故……何故、魔王に協力するんだ……何故、俺をハメたんだ!?」

「何故って、お前が魔王様を倒すには程遠い実力の、口だけの正義の味方だからだ」


きっと勇者は魔王に協力する人間がいる事が凄くショックだったのだろう。

だが、そんな彼に対して俺は冷たく現実を突き付けた。


「あーあ。もう少し賢ければ普通に生きられたのに、残念」

「賢くだと!? 例え負けると分かっていても、魔王には……世界を守るために魔王には……屈してはいけないんだ……」

「へぇ。命乞いとかしないんだ」

「誰がするか! くはッ……はぁ……はぁ……」


魔脳の娘に刺された傷が深く、勇者は弱ってきている。

腹の辺りから流れ出す血も止めきれずに、辺りには血だまりが広まるばかりだ。


「苦しそうだね。ここまで頑張ったご褒美に、せめてこれ以上苦しまないように息の根を止めてあげる」

「何……を……はぁ……はぁ……」

「今ならエルフの魔法の効き目も弱まっているし、効くでしょ多分」


魔王の娘が何やら魔法を使う。

すると勇者はぐったりとし、これ以上喋らなくなった。


「死の魔法を使ったんだ。だから、苦しまずに逝けたんじゃないかな?」


魔王の娘なりの情けってやつか。

しかし、死の魔法とは物騒だなあ。


「この死体。どうやって片付けようか?」

「何言ってんの? 勇者がダンジョン探索に失敗して死んだ事の証明に、死体はこのままにしておかないと」

「そ、そうか。だが、ここは第九階層だぞ。俺たちが発見した事にはできないし、到達者が出るのは何時になる事やら」

「うーん。まあ、その内現れるんじゃない? と言うか、町の冒険者にもまだまだ成長してもらわないと困るし」


ぶっちゃけ行方不明のままでも特に困らないだろうしなあ。

いや、待てよ?

勇者を捜索するために聖騎士団が重い腰を上げて捜索に来るのは困る。


……何か、手を打たなければな。


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