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悪役令嬢な魔王の娘と優等生生娘な女聖騎士の板挟みになり、町長の息子の気苦労が絶えません  作者: ヘラジカ
第七章:魔王と勇者殺し

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魔王と勇者殺し その4

俺が呼んだわけでもない。

勇者が呼んだ様子もない。

だが、女聖騎士は唐突にこの部屋に入って来た。


「何なんですか貴方は! エルフに気に入られているのをいい事に聖騎士団に散々迷惑をかけたかと思えば、それに飽き足らずこの町に押しかけて」

「勇者に対してそんな生意気な態度だから、中央から左遷されたんじゃないのか?」

「くっ……!」


何しに来たんだ、こいつ?

だが、おかげで魔王の娘の緊張状態も和らいだ。

とりあえず、この場だけは何とか流せるかもしれない。


「ライト様、突然どうなされたのですか?」

「衛兵からアイス殿が勇者の居場所を探していると聞いたのです。それで、こいつがまた何かやらかしたのではないかと急いで駆けつけました」

「失敬な! 僕が何をやらかすというんだ!」


──どうやら、お互いを知っている感じだが。


「あの、お知り合いなのですか?」

「ええ、彼は何と言ったらいいか……その、聖騎士ではないのですが聖騎士団と深く関わる人物と言うか……」

「聖騎士と同じ能力を持っているんですよ。だから、時々聖騎士団のお手伝いをしているんです」

「戯言を……貴方のせいでどれだけの聖騎士が痛い目を見た事か」

「あれは弱すぎる人たちが悪いのです。それに、エルフの意向でもありますし、逆恨みもいいところです」


女聖騎士の言い分を信じるならば、この勇者は元から結構な厄介者として嫌われているのか。

勇者本人もパーティーメンバーが見つからないと言っていたが、もしかすると性格に難があっての事なのかもな。


だが、これから殺される人間だ。

勇者の言い分を聞いて肩入れするメリットはない。

正直どうでもいいが、この場だけはとりあえず収めておくか。


「大丈夫ですよ、ライト様。今回は私の方から一方的に勇者さんに用事があって訪ねただけですし、用事ももう終わりました。私の事を心配してくれての行為には感謝しますが、長居は無用です。帰りましょう」

「私も、こいつ何か嫌いだから早く帰りたい。ですから、聖騎士様も御一緒に帰りましょうか」

「えっ!? あっ、はい。そういう事でしたら、私もこれで……」

「それでは、これで失礼するよ勇者さん」

「分かりました。あの、パーティーメンバーの件、アイスさんからもよろしくお願いします」

「ああ、いい人間がいたら紹介するよ」


俺と魔王の娘、そして女聖騎士は勇者の泊る宿から出た。


「す、すみません。出過ぎた真似でした!」

「いえ、そんな事は無いです。むしろ、あの勇者の情報を集めていたところなので助かりました」

「そうですわ。まさか、あんなに嫌われ者だったなんて」


実際助かったのは本当だしな。

ナイスタイミングだった。


「勇者の情報……ですか?」

「ええ、何でも第八階層まで一人でたどり着いたとの噂が流れていたので、念のために」

「そうでしたか。確かに、あの勇者は少なくとも私よりかは強いです。ですが、ただ強いだけではダンジョンの奥に進んでも帰還できない事は私が身をもって知っています」

「ですので、私もそこが気になっていたので調査していたのですが、色々調べた結果疑惑は晴れました」


そこが気になっていたのも事実だが、本当は別の目的もあるんだけどな。

だが、それを含めて済んだ話だ。

そして、これから魔王の娘が終わらせるだろう。


「お口直しと言う訳ではございませんが、これから三人でケーキでも食べに行きませんか?」

「いえ、私は見回りの途中に慌てて飛んで来ただけなので、申し訳ないですが仕事に戻ります」

「あら残念。では、またの機会に」

「それでは失礼します」


魔王の娘の誘いを断り、女聖騎士は行ってしまった。

さて。


「邪魔者は消えた事だし、一旦御屋敷に戻ってアイスくんと二人っきりでお話しようか。勇者の殺し方について」






屋敷に戻り、魔王の娘の部屋に行く。

メイドにお茶とお菓子を持って来てもらった後、いよいよ二人だけで話し合う事となった。


「んー!! やっぱり、こうやってお菓子を食べている時が幸せだなあ」

「あの、例の件について話し合うんじゃあ……」

「もうっ、帰ったばっかりなんだから少しは休もうよ」


先程、勇者と対面した時のあの緊張感のまま話し合うのかと思っていたら拍子抜けだ。

逆に言えば、アレがあったからこそ休める時の休息も必要という事か。


「……殺し方は……決めてあるから……大丈夫だし……ゆっくりしよう」


魔王の娘がクッキーを頬張りながら答えた。

そう急ぐ話でないのなら、俺もお茶を頂くとするか。


「こうやって平穏な日々を暮らしたいのものだが、やはり殺しとは荷が重いなあ」

「……何言ってんの? こうやって平穏な日々を送るために勇者を殺すんだよ」


俺の何気ない愚痴に、お茶でクッキーを流し込んだ魔王の娘がそう答える。

──平穏のため、か。


「あの何か嫌な感じがする勇者は、ダンジョンの第九階層におびき出して殺しちゃいます」

「確かに、まだ誰も到達していないダンジョンの深層で殺すなら証拠も見つからないが、どうやっておびき出す?」

「私とアイスくんで連れて行くんだよ。あいつダンジョンの深いところに行きたがっていたから喜んで付いて来ると思うし」


成る程、町長の息子である俺が誘えば勇者も安心して付いて来るか。

殺されるなんて微塵も考えずにな。


「ドワーフたちに頼んで第九階層に強力なモンスターを一体用意させて、勇者を殺させるから」

「そのモンスターを勇者が倒してしまったら?」

「私が直接勇者を殺すんだよ。モンスターはあくまで勇者の実力を測るのが目的だから、多分こっちになるかも」


勇者の実力次第ねえ。

第八階層のモンスターを倒せる実力を持っていて、第五階層が限界の女聖騎士より強いという事しかわからない。

モンスターに殺されてくれる程弱ければ単なるダンジョンの犠牲者だから、後腐れも無くていいのだけどな。


「それじゃあ、準備ができたらアイスくんに伝えるね」


俺も……覚悟を決めよう。


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