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悪役令嬢な魔王の娘と優等生生娘な女聖騎士の板挟みになり、町長の息子の気苦労が絶えません  作者: ヘラジカ
第六章:聖騎士様の動向

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聖騎士様の動向 その4

それから程なくして、魔王の娘の望み通りに女聖騎士との三人でお茶会を行う事となった。

時間は昼、場所は酒場である。


「ここでお茶会というのも久しぶりですね」

「しばらく、こういった機会もありませんでしたので開催してみましたわ」


そう、魔王の娘が酒場をリニューアルした時以来か。

相変わらず店は賑わっていて、事業の成功がよく分かる。


「それで、聞きましたわよ。自警団の組織改革を成功させて、町を守る衛兵を誕生させたそうじゃないですか」

「ええ、まあ……」

「素晴らしいお仕事ですわ。これで、この町も更に発展するというものですわ」

「そんな、まだ気が早いです。これから町長さんと正式に話し合わなきゃいけないですし、まだ先の話です」


実際のところ、話はとっくに通っているどころか、むしろ進んですらいるんだけどな。

だが、女聖騎士には悪いがこちらにも準備というものがあるんだ。

少なくとも、ダンジョンの裏口が完成するまでは時間を稼がせてもらうぞ。


「ところで、興味深い話を聞きましたわよ。何でもダンジョンの入口を衛兵に守らせるそうじゃないですか」

「はい、そのために衛兵の拠点をダンジョン入口に作ろうかと」

「と言う事は、衛兵の訓練等もダンジョン内で行われるのでしょうか?」

「それがいいと、私も考えています」


女聖騎士の奴すんなり答えてくれたな。

やはり、衛兵の訓練目的だったか。


「この前、私がダンジョンに入って御二人に恥ずかしいところを見せてしまった時に気付いたのです。私は町を守る者の一員なのに、ダンジョンについて何も知らないと。そして、それは自警団……後の衛兵も同じであると。ですので、訓練の一環としてダンジョンの調査を行いたいと考えています」


うーん、衛兵によるダンジョンの調査か。

ちょっと面倒な話になってきたぞ。

表向きは訓練目的だとは言っているが、女聖騎士に他意はないのかが見えない。


魔王の娘はこの疑わしい女聖騎士にどう出るか?

あまり強く出てボロが出ないといいのだが、心配だ。


「素朴な疑問なのですが、衛兵の訓練になる調査とは一体どのようなものなのでしょうか? わたくし、気になりますわ」

「それは勿論、ダンジョンの地図を作成する事です。ダンジョンの構造さえ分かっていれば、中で迷っている冒険者を衛兵が救出する事もできますし」

「冒険者の救出のためなのですか?」

「はい。私が初めてダンジョンに入った時、帰り道が分からなくなった私は焦ってしまい、御二人にご迷惑をかけてしまいました。ですので、その経験から今度は助ける側になりたい、そう思ったのです」


女聖騎士の話を聞く限りは純粋な善意の様に思える。

そして、例え何か裏があったとしても衛兵となる人材は元からいる町の住民。

何かおかしな点があったとしても、こちらの耳に入るはずだ。


俺ならば、しばらく泳がせて様子を見るな。

だが、魔王の娘はどう答えるか?


「まあ、それは素晴らしいですわ。きっと冒険者の生存率も上がることでしょう」

「ですので、是非とも実現したく頑張っています」


やはり様子見か。

だが、無理に反対をして二人が揉め事を起こすなんて事もなく、正直ホッとしている。


「ですが、衛兵たちの装備はどうなさるのですか? 聖騎士様にはエルフの武器がありますが、彼らには」

「そ、それは……」


おいおい、そこは考えていなかったのかよ。


「ライト様、一応言っておきますが、ダンジョン攻略に使う様な強い装備を買い揃える予算は出せませんよ」

「でしたら、わたくしたちでダンジョンから集めるというのはどうでしょうか?」

「成る程、それは名案です」


確かに、魔王の娘の案はよさそうだ。

ダンジョンに女聖騎士だけを連れ込む口実にも使えるしな。

それに深層に潜る目的があれば、女聖騎士の正確な実力も計りやすい。


「御二人共、申し訳ないですが、また宜しくお願いできますか?」

「勿論ですわ」

「ライト様のお願いとあらば」


まさか、こんなに早くまたダンジョンに入る事になるとはなあ。

だが、衛兵用の装備を整えるとなれば次は深層に潜る事になるな。

深い階層の地図は手に入らないだろうし、俺がマッピングするしかないか。


ダンジョンから脱出する魔法でもあればいいんだが。

魔王の娘が魔界と人間界を行き来する時に使っているゲートの魔法で何とかならないだろうか?


「ところで、エイラムさん。ダンジョンから脱出する魔法をご存知ではないですか?」

「えっ!? そ、そんな便利な魔法聞いた事もありませんわ。ねえ、ライト様?」

「アイス殿、残念ですがエルフの魔法にもそのようなものは……」

「そ、そうですか」


何か変だと思った矢先、突然魔王の娘が俺の耳を掴み、そして俺の耳元で囁いた。


「人間に転移魔法はまだ早い」


今のは俺が迂闊だった。

例のゲートを出す魔法は、まだ魔界にしか存在しないのか。


「さ、さあ。今日は色々決まりました御祝いに、ケーキでも食べましょう!」


魔王の娘が先ほどの会話を流そうと、慌てて追加のケーキを注文する。

俺は自分の軽率な行為を恥じ、次のダンジョン探索でしくじらない様に身を引き締めた。


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