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悪役令嬢な魔王の娘と優等生生娘な女聖騎士の板挟みになり、町長の息子の気苦労が絶えません  作者: ヘラジカ
第六章:聖騎士様の動向

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聖騎士様の動向 その2

それから次の日の夜。

女聖騎士に自警団の件の進捗を伝えるために、俺は彼女の部屋を訪ねた。


「自警団を衛兵に昇格させる話ですが、町長に話した感じでは前向きでした。日程は未定ですが、自警団の各々も含めた正式な話し合いの場を近々設けるとの事です」

「分かりました。余程の事が無ければ上手く行くと見て大丈夫でしょうか?」

「はい、その認識で大丈夫かと思います」

「そうですか。それを聞いて安心しました」


元より反対する内容じゃないからな。

むしろ、こちらとしても是非とも押し進めたい案件でもあるし。


やれやれ、この一件はとりあえず片付いたのだが……。

やはり、父上との話に出てきた女聖騎士が左遷されたきたという疑惑が気になる。

女聖騎士には安心しているところ悪いが、少しばかり鎌をかけて探ってみるか。


「いやあ、自警団の組織強化の話が進んだのもライト様のおかげですよ。ありがとうございます」

「いえ、お役に立てたのならば幸いです」

「一部には、ライト様が左遷されてこの町に飛ばされたなんて噂する不届き者もいますが、とんでもない。こんなに町のために働いて結果を出す優秀な御方が、中央から左遷されるはずありません」

「えっ!? いえ、あの……アイス殿には随分とお世話になっていて、やはり嘘はつけないと言うか、その……」

「──どうかなさいましたか?」

「ごめんなさい! 私、中央から左遷されてこの町に飛ばされたんです!!」


ず、図星だったか!

まさかと言うかやはり、父上の憶測通りだとはな。


「私……この町に一人飛ばされた時は本当にどうしようかと思っていました。そんな時、アイス殿に何から何まで助けて頂いて……」


そうだったのか。

この様子だと、任務どころか住むところすらままならない無茶苦茶な状態で飛ばされたっぽいな。

一体どんな事をすれば、こんな仕打ちを受ける事になるのか?


「アイス殿のおかげで衣食住どころか、聖騎士としてこの町でも働けるようにもなりました。むしろ感謝したいのは私の方です」

「いえいえ、とんでもない。私たちが聖騎士様に対して行った事など些細な事ですよ」


何か想像以上に恩人になっているみたいだな、俺。

町にやってきた聖騎士をうちに泊めて、余計な事をしないように色々と世話するのが既定路線だったとはいえ。


「しかし、ライト様も大変だったのですねえ。私なら裸一貫で知らない土地に飛ばされるくらいなら逃げ出してしまいます」

「私もできる事なら逃げ出したかったです。ですが、私を引き取ってくださったヌーム家のためにも、それは叶いませんでした」


ヌーム家ってのがよくわからないが、養子だったのか。


「御存じないかもしれませんが、ヌーム家と言うのは聖騎士の名門の一家です。その家の跡取りとして養子になった私は、聖騎士を辞めるわけにはいかないのです」

「失礼ですが、そんな大切な役割を養子に任せて大丈夫なのでしょうか?」

「聖騎士と言うのは基本的に師弟関係で後継者が誕生します。ですので聖騎士の家系は基本的に自分の子供を弟子として育てるのですが、前にも話したように聖騎士になるためにはエルフの魔法が使えないとダメなんです」

「すると、聖騎士の子供がエルフの魔法を使えなかった場合は?」

「アイス殿の御推察の通りです。その場合、聖騎士の家系を絶やさないように、エルフの魔法が使える人間を養子として引き取り、弟子として育てます」

「成る程。それで、エルフの魔法が使えるライト様が養子に」


女聖騎士が当初から妙に腰が低いと言うか、悪く言えば権力者のそれではなかったのはそういう事か。

この町に来たのが生まれも育ちも名門の家柄の聖騎士だったとしたら、当初危惧した通りに横暴で扱い辛かったかもしれないな。


「ですが、そうなるとライト様は名家の血筋でもないのに選ばれて聖騎士になったのですから、やはり優秀なのではないでしょうか?」

「買いかぶり過ぎ……と、言いたいところですが、それを認めなければ養父である師匠を否定する事になりますので、素直に受け止めます」


女聖騎士も内心では複雑そうだなあ。

本人としてはそうでもないが、名家を背負っている以上は優秀でなければならない──か。


「しかし、そうなると優秀なライト様が中央から飛ばされたというのが不思議でなりません。よくある話なのですが、もしかして名家の血筋でないのを妬まれて、誰かにハメられたのでは?」

「あまり仲間を疑いたくは無いのですが、私も実は内心そう考えています。跡継ぎに困った騎士の家が養子を迎える事は珍しくないのですが、やはり一部には血筋に拘る方もいらっしゃいますので」


半分本当でもう半分は嘘だろうが、本人にその自覚がないパターンだな。

この前のダンジョンでの振る舞いといい、自分を家柄に見合った大きさに見せようと張り切り、周りからウザがられて飛ばされたと見た。

血筋を理由に誰もやりたがらない田舎町での任務にも就かされるわけだ。


それに、養子とはいえ名家の人間であるはずなのに、従者が一人もついていないのも気になる。

悲しい事に聖騎士の家柄を守るための道具としてしか扱われていないのだろうな。


つまり、そこが女聖騎士の隙となっているわけだ。

上手く突いてやれば、こちら側……魔王側に懐柔できるかもしれないな。


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