武器の調査 その5
「それで、実はエルフの武器と言うのは魔法で強化された木の剣で、エルフの魔法が使えないと使いこなせないんです」
「なるほどなあ。俺たちの作っている剣にも大なり小なり魔法をかけてあるんだが、エルフのは使う時に魔法をかけてなきゃ駄目なタイプか」
こんな感じでドワーフたちにエルフについての話をしている。
実はまるで役に立たない情報で怒られでもしたらどうしようかと思っていたが、そんな事はなくて安心した。
「俺たちもそういう武器は作れるが、それだと魔法が扱えない人間には使いこなせないからな」
「誰でも使える武器を作れるところが俺たちドワーフがエルフより優れているところだな、わはは」
「この前、あの女聖騎士の小娘にモンスターをけしかけてみた感じだと大した事はなかったが、使い手の力量で左右されるとなると油断はできないか」
ドワーフたちが各々に感想を言い合っているが……。
けしかけたって言うのは、もしかして?
「まさか、私たちがこの前女聖騎士とダンジョンに入った時に出てきたモンスターって……?」
「それなら、一部始終監視させてもらったぞ」
「普段はそこまでダンジョンの侵入者の監視なんてやらないんだがな」
「エルフの手下とやらの実力を見てみたくてな、丁度いい感じのモンスターの群れを用意してみた」
やっぱりか。
通りて、都合よくモンスターが集合していたわけだ。
「ところで、町長の息子の坊ちゃん。お前さん、剣の腕はそこそこいいんだが武器がな……」
「防具も含めて実力に合ったいいものを用意してやるから、ちょっと待ってろ」
「お嬢の足を引っ張らない様に、自分の身くらい守れるようにしておけ」
「あ、ありがとうございます」
ドワーフから直々に武器を貰えるのは嬉しい。
俺の事も少しは気に入って貰えたのか?
それとも、単に魔王の娘の人徳のおかげか?
そういえば、魔王の娘が見当たらないな?
俺がドワーフたちと話している間に何処に行ったんだか。
ただ待っていて暇なので、俺はその辺を見て回る事にした。
俺たちが来た場所は大きな鍛冶場と言ったところだろうか?
地下でありながら広場になっていて、そこに溶鉱炉が並んでいたり、金床で何かを作っているドワーフもいる。
そういえば、この前のモンスターもドワーフたちが用意したと言っていたなあ。
もしかするとモンスターの養殖場もあるのかもしれないが、そこには近づきたくない。
うっかり迷い込んでも怖いので、怪しそうな場所には近づかないようにしないと。
そんなわけで、細部まで歩き回るわけにもいかずに広場を一周して戻る。
すると、魔王の娘も何時の間にか戻ってきていた。
「おっ、アイスくん丁度よかった。これ新しい装備一式だって。装備してみてよ」
ドワーフが用意したと思われる装備一式を魔王の娘から手渡される。
言われた通り、俺は早速装備してみる事にした。
「おー、似合ってる似合ってる」
金属製の軽くていい感じの防具一式だ。
ちょっと動いてみた感じでは、動きに支障が出る程重さを感じる事は無い。
「剣も、鞘から抜いて見せてよ」
魔王の娘から手渡された剣を抜いてみる。
そして、軽く素振りをしてみると、こちらも手に馴染む。
惜しいのは試し切りするものが無いところか。
「いい感じだ!」
「よかったね、アイスくん」
「ああ、凄く嬉しいのだが、できればこれを使う様な事にはなって欲しくないのが本音かな」
「へー。男の子は戦闘大好きだと思っていたけど、そうでもないんだ」
悪かったな臆病で。
俺も父上も臆病でなければ魔王なんかに素直に従うわけがない。
だが、そのおかげで町が魔王に滅ぼされる事も無く今まで平和を保っているわけだ。
「でも、今後あの女聖騎士と一緒にダンジョンに入る時に必要なんだよ、この装備。次はもっと強いモンスターをぶつける予定だし」
「そういう事か。あの女聖騎士、今後もダンジョンに入るとは言っていたが、どうだろうか?」
「だとしても、無理にでもダンジョンには入れなきゃ。私もドワーフさんたちも色々見てみたいし」
無理やりは面倒だ。
女聖騎士が素直にダンジョンに入ってくれることを祈ろう。
「私も色々貰ったし、それじゃあ帰ろっか」
「色々って? さっき何処かに行っていたみたいだが」
「換金用の武器を幾つか貰っていたの。それと、一応戦闘用に弱めの剣を一つ」
「弱めの剣? 普段から身に着けているこの剣じゃ駄目なのか?」
「これは……でも、他の人間に見られる心配も無いし、ここでなら大丈夫か」
魔王の娘は一瞬何か嫌そうにしていたが、すんなりと剣を抜いて俺に見せた。
その刀身は黒光りしていて、何と言うか奇妙な美しさを感じる。
「これ、黒曜石の剣なんだよ。地の底の溶岩を鍛え上げた最上ランクの剣なんだ」
「ほう、かっこいい見た目だけでなく実際凄いんだな」
「そうだけど、まだ人間界には出回っていない武器だから、人間が見ている前では抜きたくないんだよね」
成る程、それでさっき一瞬だけ嫌がる様な感情を見せたのか。
「そんなに飛び抜けて強いのか?」
「うん。そのまま使っても結構強いと思う。けれど、こんな風に魔力を込めて使えばもっと凄いんだよ」
そういって、魔王の娘が黒曜石の剣に力をこめると、刀身が漆黒の炎に包まれた。
その姿は、女聖騎士が木の剣をエルフの魔法で変化させるのに似ているが、何処か違う気もする。
「か、かっこいい!」
「でしょでしょ? 本当はもっと自慢したいんだけど、中々見せられないのが残念なんだよね」
「これを見せられないからの弱めの剣なのか」
「そういう事。この前みたいに素手で倒してもいいけど、強い敵でそれやると怪しまれるかもと思って」
魔王の娘も、彼女なりに真の実力を見せずに手加減していたのか。
何時もながら適当そうに見えてしっかりしていて、本心を読めないところが内心恐ろしく感じる。、
それはそうと、お互い収穫もあり色々と分かって良かった。
こんな調子で聖騎士側の真意も分かればいいのだがな。
……まあ、頑張ってみるか。




