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悪役令嬢な魔王の娘と優等生生娘な女聖騎士の板挟みになり、町長の息子の気苦労が絶えません  作者: ヘラジカ
第四章:聖騎士のダンジョン視察

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聖騎士のダンジョン視察 その4

女聖騎士に魔王の娘の不可解な強さを疑われてしまった。

だが、今悩んだところで何も策が思い浮かばない。

今日はこれ以上ボロが出る前に引き上げた方がいいかもしれないな。


「ダンジョンのモンスターとも戦えた事ですし、早いですが今日はもう帰りませんか?」

「そ、そうですわね。今日はもう帰りたいですわ」


よかった、魔王の娘も同意してくれた。

後は女聖騎士さえ満足していてくれれば、これ以上は何事も無く済みそうだ。


「御二人共、今日は本当にありがとうございました。私もダンジョンに入ったおかげで、色々と得るものがありました」


俺の提案を女聖騎士が快く受け入れてくれたのはよかった。

だが、違うぞ。

お前がここで気を抜いてどうするんだ、まったく。


「ライト様、礼を言うにはまだ早いです。ダンジョンは出るまでが肝心。ここで満足だと言うのならば、このまま置き去りにして帰りますよ」


まさか、女聖騎士がダンジョンを脱出する事そのものを忘れているとは思わなかった。

ここを単なる訓練施設か何かと勘違いしていたのか?

魔王の娘ではないが、ここままここで置き去りにして餓死させようかという考えが一瞬頭を過る。


「そ、そんなの酷いですわ! 置き去りだなんて、あんまりですわ!」


何で、そこで魔王の娘が動揺するんだよ!


「失礼しました。確かに、早計でしたしダンジョンから出るまでが修行の一環ですね。お礼の言葉は、ここを脱出した時に改めて言い直します」

「分かっていただけたのならば、それで結構です。ところで、帰りの道は覚えていますでしょうか?」


俺は、追い打ちをかける様にダンジョンに入った時からの疑問を女聖騎士にぶつける。

先ほどの様子なら、当初の懸念通り覚えている訳が無い。

意地悪かと思ったが今後の事もあるし、上手く行けば魔王の娘の事を有耶無耶にできるかもしれないと期待した。


「えっ、あっ、そ、その……分からない、分からないです。ど、どうしよう!?」


いつもは平静な女聖騎士が明らかに動揺し、そして狼狽している。

想像以上の事に、こっちまで動揺しそうだ。

──今ので、明らかに嫌われただろうなあ。


「ご心配なく、私が予め地図と現在位置を把握できるアイテムを用意しておきました。これで帰れます」

「よ、よかった。本当によかった。こんなところで死ぬなんて、私、どうしようかと、どうしようかと、ううっ……」

「ライト様、落ち着いてください! 帰れますから。道具もありますが、念のために私が来た道を覚えていますから。大丈夫ですから」

「もうっ、しっかりしてください。さっきまでの威勢は何処に行ってしまわれたのですか!?」


俺と魔王の娘で何とか女聖騎士を落ち着かせる。

心ここにあらずと言った感じの女聖騎士に幾度となく言葉をかけ続け、彼女の心を何とか戻させた。


「先ほどは失礼を……いえ、さっきから謝ってばかりですね。大丈夫、落ち着きました。アイス殿、帰りの道案内をお願いできますか?」

「わかりました。私が先頭を歩きますので、付いてきてください」


こうして、俺の道案内でダンジョンから出る事になった。




出るまでの段取りには時間がかかったが、その後は何事もなく俺たちはダンジョンの入口まで戻って来た。

それなりにダンジョンの奥までは進んでいたのだが、所詮は入口である第一階層内での事だしなあ。

大した事が起こるはずもない。


「では、御屋敷に帰りましょうか」

「あの……今度こそ、ありがとうございました。ダンジョンに入ったおかげで、その、色々と学ぶ事ができました」

「それは良かったです」


社交辞令かもしれないが、女聖騎士が満足してくれたならそれでいいか。

それに予定外ではあったが、女聖騎士もあそこまでショックを受けたのならば、しばらくはダンジョンに入りたいなんて言わないだろうしな。


「それで、改めてお願いなのですが、これからも時々でいいですから私と一緒にダンジョンに入ってくれないでしょうか?」


……は?

おいおいおいおい!

実際大した事無かったとは言え、あんなに失態晒しながら動揺までしておいて、まだダンジョンに入りたいと!?


「恥ずかしながら、ダンジョンに入る事で自分の未熟さを再確認する事ができました。それを忘れないためにも、週に一回くらいはダンジョンに入りたいのです」


勉強熱心な聖騎士様だな。

だが、俺の目の届かないところでダンジョンに入られるのはやはり面倒だ。

断るわけにもいかない。


「ライト様が望むのでしたら。ただ、無理はしないでください。危険な場所ですし、今日触れたのもダンジョンのほんの一部分に過ぎませんので」

「わたくしも、何時でも御一緒しますわ」

「感謝します」

「とりあえず、今夜はもう帰りましょう。話の続きは帰路の道中か帰ってからで」


面倒事が続く事になってしまったが、仕方がないか。


今回の女聖騎士の様子からして、怪しんでの視察だとしたらあまりにお粗末である。

したがって、得体の知れないダンジョンに興味がある以上の理由はない可能性が高い。

女聖騎士の真意が依然として不明なので油断はできないが、町の危機という段階ではないと分かり、俺は安心した。


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