第6話 怒ってても可愛い
寝不足であくびが止まらない。
講義中をほぼ居眠りで過ごしたが、眠気と疲れは取れなかった。
真宙がやってきて二日目の朝。
オレはほとんど眠れなかった。
弟に朝食を作ってやる、というなけなしの根性で起き上がる。
が、結局トーストとハムエッグを焼いただけの質素なものだった。
真宙は寝ぼけながらそれをもくもくと食べていた。頭に寝癖をつけて。可愛い。
いや、これは弟が可愛いという意味だからと心の中で葛藤しつつ、大学へ逃げ出した。
昼食はコンビニで買うように言い聞かせて小遣いを渡す。
誰もいない部屋で、真宙はのんびりしたり、たまに勉強したりするんだろう。
受験直前なんだ、これで心の余裕を作って欲しい。
だから講義は昼までなんだけど、オレは大学の図書館で午後を潰すことにした。
二人きりになるのが気まずいから帰りたくない、という事ではなく。真宙のためなんだ。
ここも静かでうららかだ。すぐに眠気に襲われたオレは図書館の端の席でぐっすり眠った。
「遅かったね」
夕方、スーパーで惣菜を買いながら帰宅すると、玄関先で真宙がぬぼっと立っていた。
顔はやっぱり怒っている。恨みがましい目つきだ。やはり弟はナーバスになっているんだろう。
「あ、ああ、一年のうちに出来るだけ単位取ろうと思ってさ。講義めいっぱい入れてんだ」
嘘ではないが、本当でもない。
今の時期は大学も受験準備で休講が多い。オレの午後もそんな感じだったが、それは言わなかった。
「ふうん……」
真宙の目つきは治らない。機嫌が悪いのがデフォルトのままだ。
勉強のしすぎじゃないのか? 少しサボったらいいのに。でも不安で勉強していないと落ち着かないのもよくわかる。
「ま、真宙は? 今日は何してたんだ?」
「そりゃ……勉強の総仕上げと、少し昼寝」
おお、昼寝をする余裕が出たか。オレはそれを聞いて少し安心した。
「そういえば、お前、大学ってドコ受けんの?」
何気なく聞いたつもりだったが、真宙はギロリと睨んで答える。
「金犀学園」
「エッ!? ウチ?」
オレの大学を受けるなんてのは初耳だったから、オレは殊更驚いた。
「……やっと聞いたと思ったら、その態度かよ」
「えっ、なんで?」
真宙はますます不機嫌になっていた。よせば良いのにオレは狼狽えついでに聞いてしまった。
「なんでオレと同じトコ受けるんだ?」
「……いいだろ、別に! 兄貴、腹減った!」
急に癇癪起こす所は母そっくりだ。血の繋がりがないのに。母に溺愛された結果だな。
「わかったよ、すぐに支度するから。漫画でも読んでろ」
「フン!」
怒りながらソファを陣取って、オレが昨日買った雑誌を広げる真宙。
プリプリ怒っているのに、兄貴の言う事は素直に聞いて漫画読んでる。可愛い。
不機嫌な真宙も可愛いと思えてきた二日目。
だけど、オレと同じ大学を受験する理由はついに聞けなかった。




