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【BL】日高兄弟は一緒に暮らしたい 〜 十ヶ月ぶりに会った弟がメッチャ怒ってる  作者: 城山リツ


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第4話 ナーバスだから

 母からメッセージが来た。


『あのね、ヒロくんが勝手に一日早く出ちゃったみたい』


 知ってる、もう来てる。

 真宙(まひろ)にまんまと出し抜かれて、少し慌てている様子の母にそう返してやった。


『あらそう。ちゃんと着いて良かった! あ、ご飯はインスタントなんか食べさせちゃダメよ』


 何だと。オレはチャーハンとかスパゲッティを茹でるくらいしか出来ないぞ。

 そう返したら母はとんでもない事を言ってきた。


『まあ、それでもいいでしょう。後はサラダでいいから野菜食べさせてね!』


 上から目線、そしてめんどくせえ!

 野菜なんていくらすると思ってるんだ。二人分のサラダを作れって言うのか。


『カット野菜とかあるじゃない。袋から出せばサラダになってるやつ!』


 オレはスーパーの野菜売り場を思い出して考えた。

 まあ、それでいいなら楽だけど、金はかかりそうだった。


 食費をくれ。ペイしろ。


「三日間、弟のために生きる」事には同意した。だけど金を出すとは言ってない。

 真宙は高校生で未成年。親が食費を持つのは当然だと思った。


『ペイの仕方がわかんない』


 すっとぼけやがって。

 オレは母宛に送金リクエストを送った。


 だが、母から送金通知は来なかった。




「あの、クソババァ!!」


 オレは思わず携帯電話に向けて怒鳴ってしまった。

 すると真宙は怪訝な顔をして聞いてくる。


「お母さん、なんて?」


「あ、あー……ええっと、お前に栄養のつく飯を作ってやれってさ」


 言い方を変えればなんて事ない内容だ。

 オレは「クソババァ」発言を取り繕う事で精一杯だった。

 すると自他ともに認める「お母さんっ子」の真宙は、母の話題で少し態度を和ませる。


「へえ……兄貴に作れるの?」


 ニヤと笑って揶揄うような口調。

 怒っているよりはだいぶいい。オレは少し安心して指折り数えながら答えてやる。


「今夜はチャーハン。明日はスパゲッティ、試験前夜はカレー! スーパーでトンカツも買おう」


 すると真宙は「おおー」と声を上げて少し笑った。

 怒ったり、笑ったりと忙しいヤツだ。きっと受験間近でナーバスになっているんだろう。


 そうだ、ナーバスなんだ、真宙は!

 だから怒ったりしているのも、理由がないイライラに違いない。受験前はオレもそうだった。


 弟の精神状態を勝手に分析して納得したオレは、気分もスッキリしていた。

 よし、スッキリついでに早速買い物に行こう!


「じゃあ、オレはスーパーに行ってくるから適当にやっとけよ」


 携帯電話とエコバッグを持ってオレは立ち上がる。


「俺も行こうか?」


 そう言う真宙の顔は可愛かった。小さい頃からオレの後をずっとついてきた時の顔だ。

 だけど、並んで歩くなんて真宙の大きさを意識してしまうから、今のオレは避けたかった。


「いいよいいよ、お前はゆっくり休め」


「ん……でも、勉強」


「ここまできたらもうジタバタすんな! せっかく親がいないんだから、羽伸ばせよ」


 真宙の言葉を遮って、オレは勢いのままに言う。

 受験勉強に疲れてナーバスになっているなら、これ以上の勉強は逆効果だと思った。


 それは自然に出てきた言葉だった。とても「兄」らしいと我ながら思った。

 三日間……いや、四日間、オレは弟の受験のために生きる。それを改めて決意させるには十分な台詞だった。


「ん……わかった」


 真宙も肩の力を抜いていい。

 だから一日早く来てしまったのかもしれない。そう思うと、オレさえしっかりしていればいい事だと尚更思う。


 大丈夫だ、上手くやれる。

 真宙の受験を成功させる事だけ考えよう。


 オレは根拠のない自信とともに、アパートを飛び出した。

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― 新着の感想 ―
お母さんは真澄の料理の腕前知ってるのかな? 美味しいので安心して真宙を任せたのかなぁ。
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