表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【BL】日高兄弟は一緒に暮らしたい 〜 十ヶ月ぶりに会った弟がメッチャ怒ってる  作者: 城山リツ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/8

第2話 二年前、汗の匂い

 高二の夏。

 弟は部活に明け暮れていた。バスケ部だ。

 高校に入ってすぐにレギュラーに抜擢された。だから真宙(まひろ)はがむしゃらに頑張っていた。


 毎晩ヘトヘトで帰ってくる。

 眠りながら飯を食う。

 ろくに会話もできずに寝てしまう。そんな夏だった。




 両親はその日一泊旅行に出かけていて。

 オレは夏休みを持て余しながら、家で一人本を読んでいた。


「ただいまあ……」


 夕方、ヘロヘロになった声で真宙が帰ってくる。

 オレは、疲れてそうだなあ、と思いながらもリビングで読書を続けていた。


「ああ、兄貴ぃ、いたんだぁ……」


 オレを見て、安心したような笑みを浮かべる真宙の顔に、ドキッとした。

 多分部活でかなりしごかれたんだろう。家族を見て気が抜けたような顔だった。


「真宙、大丈夫か? 練習キツいんじゃない?」


 自分の声が上擦っているのがわかった。

 汗だくの、少し陽に焼けた逞しい腕に、心がザワつく。


「んん……ヘーキ。一年で俺だけレギュラーなんだ。頑張らないと」


「とりあえず風呂入ったら?」


 ザワザワする心を落ち着けたくて、オレは弟を早くここから追い払いたかった。

 だけどこの日の真宙は、いつもよりもいっそう「甘えん坊」だった。


「んーん、疲れた……」


 むずがる子どもみたいに、真宙はオレが座っているソファまでやって来る。


「ねむい……」


 隣に座ったかと思ったら、そのままオレの膝を枕に寝転がった。


「おい、寝るなら部屋で寝ろよ」


 感じた頭の重みが大きくて、真宙の体がいつの間にか大きくなっていて、オレのザワついた心臓が一気に跳ねる。


「やだあ……ねむい……」


 真宙はそのまま目を閉じる。オレをソファに釘付けにしたまま眠り始めた。

 規則正しい寝息が聞こえて、オレは読書をする手も止まる。

 真宙の呼吸だけがオレの頭の中に響いていた。


 汗の匂い。

 導かれるように頬に触れる。

 少し濡れた自分の指先が、熱くなっていく。


 真宙の汗が、オレの思考をおかしくさせた。

 それを舐めたいと思ってしまった。

 弟の唇を、自分のものにしたいと思ってしまった。


「あに、きぃ……」


 甘えた声でオレを呼ぶ。

 その吐息ごと奪ってしまいたいと思った。




「──起きろ、バカッ!」


 血が体中に逆流していくのを感じて、オレは慌ててソファから立ち上がる。

 真宙の大きな身体もソファから半分落ちた。


「いっ、たあ……」


 のそりと起き上がる真宙に、オレは罵声にも似た声を上げる。


「汗クサイんだよ! さっさと風呂入って来い!」


 顔が熱い。きっと赤くなっている。

 けれど、怒りで赤い訳ではない。

 それを知らない真宙は口を尖らせて立ち上がった。


「はあーい……」


 面倒くさそうにリビングから去る弟の背中を、初めてこんな気持ちで見送った。

 その時気づいたんだ。

 

 オレは、真宙に劣情を感じている。

 もう、一緒に暮らせない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いつもと違う表情と甘えられるとドキッとしますよね。 汗をなめたくもなります。 …なるのか?中々の上級者ですw 気持ちを今回は上手くごまかせたけど、次が来るのがこわくなりますよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ