商品名決定にて
昼下がりの酒場。
客のいないカウンターに、透き通るような淡い青色のゼリー状のものが並んでいた。
光に照らされてぷるぷると震えるその姿は、見ているだけでも涼しげだ。
「うーん……味も見た目も完璧っすけど、名前が地味っすね」
リリィが腕を組み、真剣な顔でテーブルを覗き込む。
「アクアジェルじゃダメ?」
「ダメっす! なんかこう……もっと“ぷるん!”て感じが欲しいんすよ!」
シズクは苦笑しながらグラスを磨いた。
「擬音で名前を決めるの、初めて聞いたな」
「じゃあ、『ぷるるん』とかどうっすか?」
「……可愛いけど、飲み屋のメニューに並ぶと浮くな」
「なるほど。じゃあ、『ゼリィーン』!」
「それもう擬音が暴走してるよ」
「うーん、難しいっすねぇ……。“ぷるぷるっす”だから……」
リリィが口に手を当てて考え込む。
そして――
「……ぷるっしゅ!」
「……ん?」
「い、いや、今のは! “ぷるぷるっす”って言おうとしたんすけど! 噛んだだけっす!」
慌てて手を振るリリィに、シズクは肩を震わせた。
「ぷるっしゅ、ね」
「ち、違うっす! 今のはナシっすから!」
「いや……なんか悪くないな」
「えぇっ!? 噛みっすよ!? 失敗っすよ!?」
「でも響きがいい。短くて覚えやすいし。ぷるぷるしてるのも伝わる」
「うそぉ……っす……」
その時、仕込みを終えた常連のライルが入ってきた。
「お、なんか光ってるもんあるな。これ新作か?」
「はい、試作品です。“ぷるっしゅ”って言うんです」
「ぷるっ……しゅ?」
ライルが一瞬黙ったあと、吹き出した。
「ハハハ、いいじゃねぇか! 覚えやすいし! ぷるぷるしてるし!」
「笑うなぁぁっ!」
顔を真っ赤にして抗議するリリィ。
「ほら、もう覚えられてる」
シズクがくすりと笑う。
「うぅ……なんか納得いかないっすけど……まぁ、受けたなら……いっか!」
リリィはむすっとしていたが、常連の「うまいな、これ!」という声にすぐ笑顔に戻った。
「名付け親っすからね! “ぷるっしゅ”はあたしの作品っす!」
「噛んだだけのね」
「し、師匠ぉぉぉ!」
その日から、酒場の新名物「ぷるっしゅ」は常連客の間で大人気となり――
リリィは“噛んで名付けた天才”として、しばらくイジられ続けるのだった。




