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仕入れの旅にて7


 朝の山里に、鳥の声が響く。

 朝靄が立ち込める中、シズクは軽く伸びをして外の空気を吸い込んだ。


 「……いい朝だな」


 今日は次の街まで下りる予定だ。

 荷物をまとめ、宿の女将に礼を言いながら外に出ようとした――

 が、ふと気づく。


 「……あれ? リリィ、まだ来てないな」


 隣の部屋をノックしてみても返事がない。

 嫌な予感がして、そっと扉を開ける。


 「……リリィ?」


 ふかふかの布団の中で、寝癖をつけた頭がぴょこんと動いた。


 「……むにゃ……あと五分っす……」


 「五分じゃなくて、出発時間だって!」


 シズクの声に、リリィが飛び起きた。


 「うわぁっ! ま、まじっすか!? やばいやばいっす!!」


 慌てて髪をとかしながら、寝間着のまま荷物を詰め込み始める。


 「靴が、あれ? 杖……じゃなくて、荷袋どこ行った!?」


 「落ち着いて。順番に――」


 「無理っす! 師匠先行っててください!!」


 「置いてくわけないだろ……」


 結局、支度が整ったのは出発予定より三十分後。

 宿の前で待っていた女将が、笑いをこらえながら見送ってくれた。


 「若い子は元気ねぇ」


 「……すみません、朝から騒がしくて」


 「いいのよ。にぎやかな方が宿も喜ぶもんだわ」


 リリィは背中に荷物を背負い、申し訳なさそうに肩をすくめた。


 「……ほんとすみませんっす、師匠。寝る前に湯冷めしたのが悪かったっす……」


 「湯冷めしたら早く寝なきゃって言っただろ」


 「うぅ……次は絶対寝坊しないっす……」


 「次ってなんだ。もう旅の最中は、起きるのも訓練だぞ」


 リリィは苦笑しながら頷いた。

 けれどその横顔には、少しだけ決意の色が見える。


 「……師匠。今日こそは、寝坊した分、ちゃんと役に立つっす!」


 「頼もしいな。でも寝坊した時こそ力抜かないと失敗するからな」


 そう言ってシズクは軽く笑う。

 山道を抜ける朝日が二人の影を伸ばしていく。

 遅い出発ではあったけれど、その日の旅は穏やかな笑いで始まった。


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