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創造神エル。
彼と4人の妻たちとこの星々を産み落とし、作り上げた全ての始まりの神。
後の初代女王陛下と恋に落ち、嫉妬に塗れた妻たちに殺された。
「それが、あの瘴気…?」
「マルガリータは初代女王陛下の名前です。以前、女王に聞いたことがあります」
「なるほど…創造神は当初、負の感情に塗れていたと思われます」
最愛の人と分かれる辛さ、それを分身とはいえ自分以外に任せるという不安と嫉妬、騙された悔しさと怒り、死にゆく恐怖────それが創造神ともなれば、とてつもない力になることは想像つく。
そこに妻たちの負の感情が合わさることにより更に強大となった。
女神たちが作り上げた上、定期的に女王による封印のかけ直しは行われるものの、少しずつ綻びは出来るはずだ。
「……あの、フェリオ。この話理解出来る?」
「いえ、全く……」
「で、だ。どうするんですか?エリオット」
「情報が全くありませんが…あまり悠長に構えていると、一体化が進んでしまうかもしれません」
「そうなるとエリオットごと倒さなきゃならないって訳か……」
ゲームの知識を持つ私でも、この状態はどうしたらいいのか全くわからない。
実際、体を乗っ取られたペルラは死んでしまっている。
……私は、エリオットを殺せる…?
「ペルラ、無理しなくていいよ」
「スーリヤさん…」
「確かに、あんなに優秀な人材を亡くすのは惜しいです。…なんとか、方法を探りましょう」
「ニコラスさん…」
「まずは瘴気を削ぎ落としてみましょう。…傷付けねぇって約束は出来ないが…やれる事はやるさ」
「フェリオさん…」
「僕たちに任せてください。女王陛下を護る、4本の剣を」
「リュカさん…っ」
4人の瞳が、黄金色に輝く。────なんだろう、不思議と身体が楽になる。
「ありがとう、ございます…っ!絶対、取り戻します!」
…………ん?
「そういえば、皆さんどうやってここに来たんですか?後つけてきたとか…!?」
「あっ、そういえば!」
「いえ、私たちは湖のほとりで陛下と結界を張っていたのですが…」
瞬間、閉じられていた燭台のある部屋へと繋がる扉が粉々に砕け散った。
広がるは、先程より濃い瘴気。
「……っ!?がはっ」
「ペルラ、下がってて!」
「…うわぁ、あの時の…。また私とマルガリータの仲を引き裂くのかい?」
何故だろう。声はエリオットのはずなのに、全く知らない人の声に聞こえる。
恐る恐る姿を見ると、漆黒の瘴気を纏った、エリオットが佇んでいた。
綺麗に輝いていたエメラルドグリーンの瞳は、闇に塗り潰された。
「返してもらうよ、私のマルガリータを」