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Another episode:00

以前活動報告で上げたものの修正版です。

気分のいい内容ではないので、閲覧ご注意ください…。

それは、遠い記憶。





『お前は将来医者になって、跡を継ぐんだ』



『それが、人殺しが出来る最大限の償いだ』



物心ついた時からずっと言われている言葉。

今でも私を雁字搦めに縛り付ける。





父は日本でも有数の病院の院長兼理事長。

母は私を産んだ時に亡くなった。

元々体が弱かった上に、2度の流産を経験したとのこと。

それに、私は逆子といい、本来なら頭が下の状態で子宮にいるはずが、足が下になっていた。臍の緒も絡まってたらしく、帝王切開──お腹を切らないと産めない状態だった。

しかし、どうしても跡継ぎが欲しかった父は無理やり産ませたそうだ。

私を切って産んだことにより体の限界が来てしまい、そのまま帰らぬ人となったそうだ。聞いた話だから詳しくは知らないけど。



『切る事がなければあいつはまだ生きていた』



『お前は人殺しだ』



ずっと父の言葉がリフレインする。

私は罪滅ぼしのために医者になる。

父の選んだ学校に行き、父の選んだ小児外科医になる。

────そう、決めていたはずだった。






「───きれい」



医療が進んでいるというドイツについて調べていた時、広告には異世界を舞台にしたゲームが描かれていた。


私の過ごす日常とは全く異なる世界の話。

日本とは違う風景の数々。

興味が出た。指が触れた。


そこには、想像もしてなかった世界が広がっていた。






「おい、真琴!また塾をサボったのか!!いい加減にしろ!!」



頬に鈍い痛みが広がり、鉄の味が口の中を駆け巡る。

強く打ち付けた膝が痛い。



「お前は罪人なんだ。贖罪の機会を与えているというのにそれすらも無視するのか」



異物を感じ吐き出す。───歯が折れていた。



「なら生きている意味などない。死んでしまえ」



「死───」



あぁ、そうだ。死んだ方が楽だ。

私は、死ななきゃいけないひとなんだ。


どうやって死のう。いつ死のう。痛いのは嫌だなぁ。

そんなことがぐるぐると頭を駆け巡る。

試しに手首を切ってみよう。───ぽたぽたと血が出るだけ。痛みがあるだけで、死には遠かったようだ。



なにかいい方法はないかな。探していると、目に入ったのはあの時の広告だった。


あの綺麗な世界。


気付いた時には、その世界に入っていた。





「エリオット尊い…エリペル最高…」



元々憧れていた、現実を忘れるための異世界ゲーム。広告を見るだけで留めていたそれは、始めてみたらその世界に没頭していた。

主人公となり、選択肢を選ぶことにより物語を進めていく。私はこの世界の住人になれた気分だった。



特に気に入ったのは、常に笑顔を絶やさないサブキャラのエリオットと、私と似た境遇のペルラ。

ゲーム内では接点は特にないものの、とある二次創作者さんは異様にこの2人のカップリングを推していた。

それにまんまとハマってしまっていたのだ。


重圧に押し潰されているペルラを、幼い頃から募らせてきた大きな愛で包み込むエリオット。

───私にも、こんな人がいれば、と憧れを抱かずにはいられなかった。






それから、辛うじて通っていた学校も行かなくなった。

それがバレた日から暫くは父に殴られたり蹴られたりとしたけど、反応しなければ次第に飽きてか放置していった。

休んでいても課題はやれと大量の宿題を置いて行く。…まぁ、知識を得ることはそこまで嫌いじゃないし、高校すら卒業出来ないのは今後に影響するかもしれないと思い、ゲーム傍らそれだけは頑張っていた。



ねぇエリオット。

いつか私にも、エリオットみたいな存在が現れるかな。

憧れにも似た感情は、今の私の生きる原動力だった。






「お前が跡取りを産めばいいのか」



「い゛っ」



床に叩きつけられ、限界まで足を開かされる。

部屋着にと着ていたジャージは脱がすのも面倒がったのか、ビリビリと引き裂かれた。

逃げようにも叩きつけられた衝撃でまともに動けない。これからされることに予想がついた。


いやだ、いやだ

けがさないで


パンツをずらし、そのまま肉棒を突っ込まれる。



「ぁ゛─────っ!!!!」



いたい、いたい、いたい、いたい




ぱたた、と血が滴る。



「お前は人殺しなんだ。これくらいの痛み、当然だろう?」



血を潤滑油に、乱暴に動いた。

ムードも、シチュエーションも、あったもんじゃない。



生理現象か、血以外の液体が出てきて、痛みと同時に気持ちよさを感じ始める頃には、あまりの嫌悪感に吐いた。



「汚い」



ばしん、と頬を叩かれる。

もう、声も涙も出なかった。



お腹の中に広がる温かく気持ち悪い物を受け止めるのを感じて、また吐き出した。







そんな日々が約半年。

エリオットだけが生きてる理由だった。

どんなに汚れてても、変わらない笑顔で迎え入れてくれた。

圧倒的な安堵感と、ちょっとの罪悪感。



「汚されてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」



あなたにみせられるすがたじゃない。

枯れたと思っていた涙はまた溢れ出す。



エリオットのためにと動かしていた指は次第に止まり、ベッドへと倒れ込む。

もう無理だ。私はあなたを見る資格もない。



毎日のように中に出され、二か月前から生理が来てない。

…多分、出来たんじゃないかな。

でもごめんね、私、あなたのお母さんになれないや。



あぁ、眠いな。


瞼を閉じる。

夢の中だけでも、綺麗な私で、幸せに笑えてるといいな。

でも、笑うって、どうやるんだろう。






その瞳は、二度と開くことは無かった。


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