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こうなるとわかってたから、ずっと隠してきたのに。







「……なんの、ことかな。聞き間違えた?」



「僕がペルラの言葉を聞き間違える?有り得ないよ」



なんつー自信だ…。

繋いでいた手は更に強くなり、話すまで緩めるつもりは無いのだろう。



「…痛い、跡つく」



「そう」



…ね?



「……話せることなんて、なにもない…っ!」



瞬間、視界が反転した。

背中に鈍い衝撃が走る。



「いっ…!え、エリオット!?」



「話して」



「だから…っ」



「話さないなら、こうだから」



首筋に鋭い痛みが走る。

背中との痛みのコンボに大声を上げそうになったが、それは大きな手に塞がれた。

────これは、噛んでる、のか…っ!


なんで、どうして。

ずっと共に生きてきた人なのに。

その目が、手が、声が。

信じられないくらい冷たくて、全く知らない人のようで。

痛みと恐怖が一気に押し寄せてきた。



「っ、ご、ごめん…っ」



「っふ、…なん、で…」



「ごめん、ほんと…ごめん…っ」



抱きしめられた腕にはもうあの冷たさは残ってなくて。

私の知ってる、大好きなエリオットだと信じたくて、小さく縮こまった背に手を回す。



「────ひゃっ!?」



頬に、ぬるりと生温かいものが触れた。

びっくりしすぎて思わず突き飛ばしてしまった。

いや、この状況でなに舐めとってんの!?



「ん…やっぱりちょっとしょっぱい」



「な、な、な、なにすんの!?」



「え?だってペルラ、涙はこうやって…」



「は!?そんなこと……あるわ。あ、あれは小さい時に1回だけしかやってないじゃん!!」



「だってそれからペルラの前で泣くことなんてほとんど無かったしね!」



「もうっ、もう、意味わかんない!!」



「嬉しかったから、ずっとしてあげたかった」



────甘い。

こんな触れ合い、それこそ小さい時からしてたのに。なんでだろう。

さっきみたく冷たくない…むしろ、熱いくらいなのに、知ってるエリオットじゃないみたいで。



「ずっと、こうしたかった。ペルラと姉弟じゃなくて、夫婦になりたかった」



だから、女王になってほしくなかった。

でも、死んでしまったら、会うことすら叶わなくなる。────あまりにも、怖くなって。



「ごめんね、酷いことした…」



跡が残っているだろう首筋をなぞる。

思わず声が出そうになったのを必死で抑えたのに、追い討ちをかけるようにそこに舌を這わす。



「いや、いやいやいや、こんなことしてる場合じゃ、ないから…っ!」



「だって、燭台に火を灯したらペルラは完全に女王になって、会えなくなっちゃうんでしょう?」



その舌が耳に触れる。

水音が、近い。



「なっ、なっ、どこで、そんなの…っ!」



「ん?んー…ほら、聖騎士団って男所帯じゃん?だからそういう本とか映像とか、たくさんあるよ」



悲鳴を上げた。

夢が、夢が崩れ落ちてく音がしたよ…。



「ほんとはさ、ちゃんと考えてたんだ。告白も、プロポーズも」



ペルラは女王にならないといけない。女王は伴侶を持てない。

それを理解したのは、だいぶ経ってからだった。理解して、諦めるまで時間がかかった。…いや、無理なんだけどね。

でも、候補がもう1人現れた。なら、ペルラが女王じゃなくてもいい。

もう1人が女王になって、ペルラは普通の女の子に戻る。そうすれば、夫婦になれる。

そんなことばかり考えてた。



「でも、ペルラは女王になるって言ってた。邪魔、出来なかった…悲しませたくなくて」



喜んでくれるのが嬉しくて、自分以外の人に眼差しを向ける姿を見るのが嫌で。

自分で出来ることはどんどん学んでいった。…結果、女王になるのを手伝うことになっても。



「だから、せめて、女王になる前に───口付けだけでも、したかった。結果、色々あってこのザマだけど……引いた?」



「むしろキャパオーバーだよ…」



脳みそがぷすぷす音立ててる。そ、そんなこと考えていたなんて…。

考えていた以上に想われていたことに、ちょっと…いや、かなり嬉しい。



「…ただ、私、初めてだから…せめて、もう少し雰囲気あるとこがいいかな」



「────え?」



「こんな真っ暗で、かび臭いとこで初めてとか…嫌だなって…」



「────っ、ペルラ…」



「ほら、早く行くよ!」



体の痺れと背中の痛みで立ち上がれない!と手を伸ばしたら取ってくれた。…が、一向に引っ張り上げてくれない。



「ところでさ、死ぬってなんなの?」




──────逃げられないようです。





次回以降、週一投稿予定です。

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