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伸ばした手は、届かなかった。
ぱしゃり、と最後に音を立ててソレは消えた。
≪力≫の名残の沼がただ地面に浸かっている。その中心で、少女は地面を見詰めて震えている。
捻子は自分の指先を見詰め、それから握りしめた。
………わかっています。
踵を返した足は、今笛に抱えられている少女の元へ。
今笛は彼女から離れると、少女はぼんやりとした表情で、捻子を見上げた。
「……遅くなって、すみません」
「…………」
「……ごめんなさい、俺は思い出すことはできませんでした。貴方の望みも、わかりません」
だからどうか。
捻子は薙刀を握りしめる。届かなかった指先で、薙刀を掴む。
その薙刀から―――炎が灯った。
「……わたしはね、まもりたかったんだよぉ」
少女は笑う。
「だいすきなおにいちゃんを」
丹色が息を呑む。
「……だいすきなひとを、だいきらいなひとから、いじめるひとから、まもりたかったの」
「強く、優しい、…いい子ですね」
捻子は微笑んで、炎を強くした。
――≪神聖な炎≫が、灯っていく。
「もう、だいじょーぶ?」
少女が、…意思を持って、問いかけを投げた。その言葉に、捻子は瞬きをして――寂し笑いを浮かべる。はい、と確かに頷く。
「志糸!」
ぱんっ、と音を立てて傘が開いた。
後ろから今笛に掴まれながら、光彩は――炎に、彼女にギリギリまで近づいて、叫ぶ。
「おれは、…お前を、まもれなかった」
「おにいちゃん」
「………なぁ、今度はさ、…今度もさ、…おれたちのとこに、きてくれるか」
それはどこまでも、優しい問い。
少女は―――忌み子ではない。双子の妹の、影時志糸は、微笑む。
「おにいちゃん」
愛おしく、優しく少女は囁く。
かつて、忌み子と言われた少女がいた。
そこに忌み子は居なかった。
炎が昇り、どこまでも、高く高く昇り詰める。
何も感じなかった。惹かれる想いなど、今笛はため息をこぼす。むしろあんな炎から逃げたいぐらいだ。それが伝わったのか伝わっていないのか、風波は今笛に背中を預けた。
確かに綺麗だけれど。
「…あんな炎に抱かれて死ぬのァごめんだな」
「ほんとね」
今笛の後ろで、泣き寝入ったように目を瞑った稟斗の頭を撫でて風波は応える。
もう掴まえておく必要はなさそうだと今笛は光彩から手を離した。光彩は――光彩と丹色は、炎に包まれた妹を見詰め続ける。
最後まで、目に焼き付けるために。
薙刀を持つ指が震えていた――それに手を伸ばして、紀磨は苦笑する。
「かっこつかないわね、あんた」
「……もっとかっこつかないこと言ってもいいですか」
何よ。
「……悔しい」
たった四文字。
されど、何よりも詰まったその言葉への想いに。
そうね、と紀磨は頷き、寄り添うしかできなかった。
炎が高く昇っていく。
その炎は、確かに美しいものだった。




