《シュウ》という人間 ‐side Ouka & Reon‐
3話目、ちょっと頑張ってみました。
長すぎかなと思いますが、どうでしょうか?
今回は桜華とレオン視点で書いてみました。
誤字脱字があれば教えてください。
――俺たちは異端だった。何故なら、周りの奴らにできないことが俺たちには何でも出来た。そして、それが当たり前だと理解できていたからだ。
――僕たちは異常だった。だって、普通なら物心つくかつかないかの子供は自分が周りと違うことを嫌うはずなのにむしろ僕たちは好んで違うことをしていた気がするからだ。
――そして、周りの大人も子供もそんな俺(僕)のことを遠くから見ているだけだった。
――――だけど、《シュウ》は違った。誰よりも普通のはずなのに、誰よりも異常で異端な僕(俺)たちを受け入れて受け止めてくれたんだ。
「畜生! あの馬鹿野郎!!」
桜華の怒鳴り声が辺りに響く。さっきのシュウの行動は僕も腹が立っている。怒鳴り散らしたい気持ちもよくわかるけど僕のキャラ的にアウトだ、我慢しよう。シュウはきっと自分が行けば僕たちに危害が及ばないと思ってあの忌々しい魔法陣に飛び込んだんだろう。事実それは正しかったみたいでシュウが見えなくなってすぐに消え始めた。そこに僕と桜華は飛び込んだんだ。今現在、緩やかに幾何学模様が浮かび上がる不思議な道を僕たちは歩いているのだ。
「まったく、シュウには困ったものだよね。桜華もそう思うだろ?」
「あぁ、いつもながらあいつの行動は予測できねぇ」
きっとシュウは気付いていない、あの子はイレギュラーを好かれる天才だということに。その上、僕たちの気持ちにすら気付いていないんじゃないだろうか。
「ねぇ、覚えてるかい。僕たちがシュウにあった日の事」
桜華に対しての質問、この質問は今までに何十回何百回と繰り返してきたものだ。
「当たり前だろうが、一刻たりとも忘れやしねぇよ」
「………だよね」
あれは、僕たちが幼稚園の時だったっけ、誰よりも早熟だった僕たちは周りの人間の目からはさぞ不気味に見えただろう。桜華はそこらの大人より強かった、そして僕は賢かった。本来そんなことはありえないはずなのに、僕と桜華はありえないを体現した化物だった。
「君はいつも一人で走り回ってたっけ」
「そういうテメェは隅で小難しい本を読んでたな」
そう、僕たちはお互いに独りぼっちだったのだ。誰も味方がいない。親すらもあのころは僕たちの味方では無かったのだ。
「そんな時にあの馬鹿が声かけてきたんだったな」
「そうそう、引っ越してきたんだったね」
幼稚園生活が2年目に入ったころに一人の子供が同じ組に来た。それがシュウだった。シュウは周りの大人が必死に止めるなかで僕たちに近づいてきたんだ。
「あのときのセリフは忘れられないよ」
「俺もだ」
――『お前ら、面白いな!!』
「その一言だったけど、あの目を見たらもう駄目だったんだよね」
「………思い出させんじゃねぇ」
キラキラと底抜けに輝いていて、ひとかけらの悪意も感じ取れなかったあの瞳。見つめられるだけで自分が照らし出されていく不思議な瞳。あの目で見つめられた僕たちはどうしようもなく嬉しくて仕方がなかった。
「ふふ、桜華なんて泣いちゃったしね♪」
「思い出させんなって言ってんだろ!! テメェこそ泣いてただろうが!!」
初めてだった。恐れや畏れ、恐怖すら感じ取れなかったあの瞳。とても嬉しくて、僕たちは泣いた。
「それからだっけ、世界が変わったのは」
「………あぁ」
僕たちが泣いたのを見て大人たちは右往左往の大慌てだった。それはそうだ、一度たりとも弱さを見せたことがない子供が急に泣き出したのだ。相当焦ったはずだ。
―――それ以降は僕たちの異常さや異質さは家族と世間に個性として受け入れられた。
「僕たちがこうしてここに居られるのはシュウのおかげだもんね」
「だからこそ、俺たちはシュウを守ると決めた」
「………違うでしょ?」
「………」
「それだけじゃないはずだよ?」
「はぁ、わかってんのに言わせんなよ」
―――僕たちはシュウに恋をしたのだ。僕たちのとても優しい救世主に。
「対抗意識を燃やされたときはつらかったね」
「…ろくに口をきいてくれなかったもんな」
あの時は、毎日枕を濡らしていた。
「俺たちに必死に追い付こうとしてるときは最高だったな」
「危なっかしくて見ていられなかったよ」
二人してにやけながら眺めてたっけ。本当は僕たちの方があの子を追いかけるのに必死だったというのにあの子らしいや。
「あの子が僕たちから離れようとしたこともあったよね」
「何が何でも阻止したがな」
僕たちがシュウから離れるはずがないのにね。それこそ、世界が変わろうとも。
「さて、このくらいにするとして」
「おう」
僕たちはあの子のために生きている。あの子を守りぬくと二人で誓った。だからこそ今回のことは許せない。もちろんあの子の行動は後で怒るとしても、あの子を連れて行こうと僕たちから奪おうとした奴らは許さない。
そろそろ出口みたいだ。白い光が進行方向に見えてきている。
「行くよ」
「当然だ!」
光をくぐって最初に見えてきたのは薄暗い部屋。そして大勢の有象無象の人間たち。なかでも美しく着飾った少女が前へと歩み出る。
「このたびは、召喚に応じてくださり真に―――」
「シュウは?」
「見当たらねぇ」
「えと、あの―――」
「この人たちが犯人だよね」
「状況的に間違いないだろうな」
「す、すいませ―――」
「黙っててよ、今機嫌が悪いんだ」
「殺すぞ、糞アマ」
「うぅ、………グスッ」
とうとう泣き出してしまった。そこで後ろから時代錯誤な鎧姿の男が出てきた。
「貴様ら!! いい加減にせんか!! この方をどなたと心得る! グランティア王国のスフィア第一王女であらせられるぞ!!」
もう無理、我慢できないや。
「桜華」
「奇遇だな、俺も限界だ。いくぞ、レオン」
さて、九分九厘殺しでいいよね。
―――僕たちはシュウが思うような主人公ではないんだよ。今の僕たちは君を守る、そうだな、龍なのさ。君のためなら、神も人も悪魔だろうと殺して見せる。僕たちは…
―――俺たちは主人公なんてもんじゃねぇ、ただの獣さ。主人の敵に食らいつく2匹の化け物なんだよ。俺たちは…
―――ただ、《シュウ》のためだけに存在している。
いかがでしたか?
感想などお待ちしています。