22−2.おれと、組んで、ほしいです
かなり思い切った。
おれにとっては告白。
清和くんはというと、意外だっていう感じの顔してる。
「おまえと?
バンドとして?」
「……ハイ……」
これ困ってる?
なんかごめん!?
「いや、清和くんの方向性は聞いてるし、おれが勝手に思ってるだけで、でも清和くんとステージできるならそれでもいいかなっていうか、えっと」
めっちゃ言い訳してるおれ。
なんでこんなテンパってるんだ。
「――うん。やろうか」
いつもの余裕ある笑みで。
その返事を、くれた。
言葉が、出ない。
嬉しいのと、驚きと、ほんとに、という思いと。
「えっと……」
「すぐにすぐは動けねぇけど」
「もちろん!」
「何系でいく?」
「えー……清和くんの得意なやつで」
「得意なのと売れるのとは違うだろ。
どういう系のリスナー狙うんだよ?」
「……ごめんそこまで全然考えれてなかった」
「まあ、すぐにはいいよ」
「清和くんとの曲を出したい、ばっかり先行してて」
「はは。
――俺も、組むならおまえだなって思ってた」
ひゅっと息を飲んでしまい、言葉も一緒に飲み込まれる。
ああ、もう、なんて言えば。
このひとがおれにしてくれることって。
どうしてこうも、包み込むように大きいんだろう。
おれだって、返したい。もっと返したい、清和くんのために何かあげたい。
でも何もかも敵わなくて。
家事が精一杯なんだ、それだって音楽優先にしていいって言われて。
「おまえなら、やってくれるって思ってた。
いつかとは決めてなかったけど。
いずれ、俺もまた自分の音楽で表に出てみたいって思ったりし始めてさ。
でもまさか、おまえが先に言ってくれるとは」
それって。
おれも、清和くんの望みを叶えてあげられる、ってこと。
ちょっとだけだとしても、返せてるってこと。
「うれしいよ」
清和くんから、そんな言葉が出てきたこと、あったっけ。
でもそれくらい珍しい言葉を聞けて、今めちゃくちゃ嬉しいんだ。
「嬉しいのは、こっちだし……
ずっと、一緒にやりたかった」
泣きそう。
清和くんの手がほしくて、テーブルの端に手を伸ばす。
気づいた清和くんが、おれの手を握ってくれて。
両思いになったときはもちろん、びっくりするくらい嬉しかったけど。
一緒に音楽やりたいって思いも、通じ合って。
もっと深くまで繋がり合えてる気がしてる。
泣きそうだった鼻を一度すすったら、温かい気持ちが湧き上がってきて、笑ってた。
「すげー緊張した、告白みたい」
「そうだな。告白されたみたい」
「前はさ、おれが無意識に言っちゃったし、付き合うって聞いてくれたの清和くんだから、ちゃんと告白したの今が初めてって感じ」
「言えてる。俺も今のはまじで、言われると思ってなかったことだったから、すげー年甲斐もなくときめいたわ」
清和くんがときめいてくれた。
めっちゃ嬉しいやん。
こうなったらもう。
清和くんと、触れ合いたくなるに決まってる。
「あ。その前に」
荷物のカゴに入れていた、チョコの紙袋を取り出す。
「これ。受け取ってください」
「おー……来たな、これ。もらうの初めてだわ、俺」
「え、そうなん?」
「正確に言えば、義理も含めて全部断ってきたから、受け取ったことがない」
「おぉ……」
「だって義理でもお返し考える時間が煩わしくて」
「清和くんっぽい」
「なので、今日のこれがお返しな」
「え!差がありすぎ……」
「いーんだよ。ヨメなんだから、養われとけ。コレで十分」
「ハイ、ごちそうさまでした」
ヨメの使い所の絶妙さよ……
日々の家事で返させていただきます。
あとは。
清和くんがスマートにキャッシュレスで支払いを済ませて、店を後にした。
人通りはまだ引いてない。
でも、おれたちはしっかり手を繋いだ。
「源吾。帰ったら」
「ん。もちろん」
その先は、言わなくても、もう通じてる。
玄関に入って、そのまま、唇を重ねる。
だって、ずっと触れたかった。
何度繰り返しても、止まらなくて。
密着してる体が、もうお互いに求めてる。
「清和くん、おれ、準備……」
「寒かったから、お湯張っとくわ。済んだら来て」
♪
「俺キーター買う」
清和くん、賢者モード一発目の発言はそれだった。
「キーターって何?」
「ショルダーキーボードって言ったら分かる?ギターみたいにストラップ掛けて、奏者が移動できる小型のキーボード」
「あー分かる、それ、どう使うん?」
「前出てソロぶちかますんだよ」
「……やべぇかっこよすぎるやんソレ」
清和くんならソロほんとにぶちかましそうなの、想像できる。
まだかっこよくなる余地があるなんて。
「負けんように、おれついてくから」
「ステージでさ、並んで弾こうぜ」
「うん、それ清和くんとできたら最高」
笑い合って、キスして、またキスが長く深くなっていく。
「……シャワーして、ベッドで続きやろ」
「ん……まだやりたい」
シャワーしながらもキスが止まらない。
またこのまま始まりそうだったけど、清和くんが自制してくれた。
どうせヤるからと、拭いたまま何も着ずにベッドで抱き合って。
「清和くん、めっちゃすき……」
「ん」
「すき、……んっ……」
いつもクールな清和くんが乱れるのは、おれの前だけ。
耐えてる顔も、おれを組み敷いて見下ろす顔も、汗ばむ顔も。
全部、おれだけのもの。
「源吾。
かわいい」
そんなエロい顔で言うなんて、反則だよ。
清和くんの首に腕を回して、顔を引き寄せて、夢中でキスをする。
♪
おれも清和くんも、ぐったりしてベッドに沈んだ。
「やべえ、この年でまだ二回イケると思ってなかった……」
「そうなん」
「おまえがエロいし、煽るから」
「おれ、煽った?」
清和くんがこっちに顔を向けて、おれの頬に指を置く。
「こんな顔でねだられたら、煽られるだろ」
「えー、おれそんな顔してた?でも清和くんだってさぁ、顔エロ……っん……」
いきなり清和くんが寄ってきて、唇が塞がれた。
不意打ちキス。
「……言わなくていーから」
ちょっと照れてた。かわいくて萌える。
今度はおれから抱きついて、足まで絡ませて。
「今日、楽しかった」
「ん。よかった」
清和くんの腕が、背中に回ってあったかい。
シャワーに行くまでしばらく、愛された余韻を感じていた。




