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入浴
母がときどき頭を掻いていた。
最後に母を風呂に入れてから十日余り経っていた。
浴槽に湯を張った。
「母さん、風呂に入るよ」
母を抱きかかえ浴室まで歩いた。
風呂椅子に座らせてから私は浴室を出て、母が衣服を脱ぐのを待った。
「もういいかい? 入るよ」
後ろから両脇を抱え、浴槽に入れた。
母は浴槽の縁をなかなか跨げず低く呻いた。
「あぁ、気持ちいい⋯⋯」
「頭も洗うんだよ」
私は浴室を出てリビングに戻った。
しばらくして母の呼ぶ声がした。
「頭、洗ってないじゃん」
「だって面倒くさいんだもん」
「頭かゆいんでしょ? ほら、洗うよ」
私は母を風呂椅子に座らせた。
頭を洗っている間、母は浴槽の縁に手をつき体を支えていた。




