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右手
仕事帰りに母の様子を見に父の家へ行った。
母は私を見るなり言った。
「お父さんに怒鳴られた。お願い、家に帰らせて」
二階にいる父に声を掛けた。
父は階段を踏み鳴らして降りてきた。
「母さんを怒鳴ったんだって?」
「あまりにも腹が立ったから怒鳴ったんだ! バカにしやがって!」
「腹が立ったからって怒鳴ってもしょうがないだろ」
「怒鳴らなくてもいいでしょ!」と母が口を挟んだ。
「何だと! 俺はお前の召使いじゃないぞ!」
父がテーブルにあった割り箸を母に投げつけた。
「顔に当たった⋯⋯」
母が力なくつぶやいた。
「やめろ! なにやってんだ!」
思わず父に殴りかかろうとした。
我に返り、右手を下ろした。
「顔に当たった⋯⋯」
母は同じ言葉を繰り返していた。




