二重取引
1995年 リムソンシティ サン・ドリル地区
「済まないボス、ドリアン・・・パイレーツの新人を見殺しにした・・・」と謝るライアンに対してアブデイは言う。「仕方ねえ・・・俺も悪いよ。新人に任せるような仕事じゃなかったな。それに結果的にあんたが盗んだ設計図を渡したことでダスケとタリーノの連中はペチーニを潰すことに成功し、現在ダスケ派の刑務官を通じてヤクをムショの中に送ってるところだ。」ドリアンも続けて言う。「お前のおかげでヤクの窓口となるダスケを味方に付けることができた。感謝してるぜ。」「あ、ありがとう・・・」「ふん、泣くんじゃねえよ。お前はピンキーライオンズの構成員なんだぜ。」と言うアブデイに対してさらに涙が溢れるライアンであった。
翌日
「そうか、そうか・・・分かった。じゃあまとめるぞ。ソマリア系の扱うヤクは売人ゴラウスを通じてフアレス・カルテルから仕入れてるってことか?」「ああ、そうだ。サイードの麻薬保管庫爆破には俺たちは関係していない。フアレスの連中が勝手にやったことだ。」「分かった。」そう言って携帯電話を閉じたのはハイチ系ギャング「シルバーウルフ」のボスであるジョナスンだ。彼は不敵な笑みを浮かべ、事実上のトップ2であるドラダに話しかけた。「ソマリア系の奴らに反撃できるかもしれねえぞ。」するとドラダは「丁度いい。奴らを潰したかったんだ。」とつぶやいて大笑いした。
2時間前 リムソンシティ バーネット刑務所
刑務官が鍵を開けた。するとデゥラハンは刑務官二人に頷き、二人の囚人と共に独房の中に足を踏み入れた。
「おう?てめえまた戻って来たのか?さみしかったぜええええ!」と目をかっぴらいて起き上がる囚人。彼は体中入れ墨をし、割れた腹筋を見せる。「今度はお仲間連れか?おいお前!」その呼びかけに応じてベッドから起き上がった囚人はビール腹が突き出ており、間抜け面だ。だが彼は言う。「あんたが兄貴から逃げたという卑怯者か!?あんたが泣きわめくせいで刑務官連中があんたを隔離する羽目になったとかいうな!」だがデゥラハンは言う。「認めるぜ。馬鹿なことに俺はあんたが『兄貴』とか呼んでるこの雑魚にいじめられていたな。だけどな、もうあんたの時代は終わったぜ、ボブ。」「何だと!ただの盲爺がよお!」と叫んでボブだとかいう筋肉質の囚人が殴り掛かって来た。「ゴミみてえなデブの手下が出来たようだな!」と言ってデゥラハンは腰からナイフを抜き、相手の迫りくる胸に突き刺した。血が飛び散り、相手は倒れた。倒れた彼がデゥラハンを見上げたその顔は驚愕であった。「お前・・・なんでナイフなんか持ってるんだよ!くそ・・・お前・・・どうなるか分かってんだろうな?俺は・・・ブラックスネイクスの・・・副支部長だ・・・」「馬鹿め!事情が変わったんだよ!残念ながらあんたを殺害する許可は支部長に得てある。あんたは支部長に見捨てられたのさ。あんたみたいな脳筋よりも俺みたいなヤクを供給する奴の方が支部長はお好きなんだよ!」そう言ってデゥラハンは相手の首筋にナイフを突き立ててとどめを刺した。
太った子分の囚人は慌てて逃げようとするが、刑務官たちは鍵を閉めてドアの外で待機しているようだ。「てめえに逃げ場はねえよ!」そう言ってデゥラハンと一緒に入って来た二人の囚人がその男を捕まえた。デゥラハンはそいつの股間を蹴り上げ、うめく彼にさらにパンチを四つ食らわせる。
「終わった。」と血まみれのデゥラハンが告げると刑務官が扉を開ける。彼らは眉一つ動かさずに室内の様子を見る。一人が言う。「死体処理の連中を呼ばないとな。」「ああ、後で俺が奴らを引き連れてやっておくよ。」ともう一人の刑務官。
デゥラハンと二人の囚人は刑務官に挟まれて通路を進んでいく。
彼らは突き当りの独房に入る。(刑務官は外で待機だ)独房の中は随分綺麗に清掃されており、高級そうなベッドまでおいてある日当たりのいい部屋だ。その部屋のベッドの上に痩せた老人の囚人が腰かけていた。
「ありがとよ、バロン。手下も借りちまってよお。」と一緒に殺害を行った二人の囚人を指し示してデゥラハンが言う。老人は頷いた。「ボブの狂暴性は私も気づいていたが、私の支部長としての権威を示すにはあいつを使う必要があった。あいつを使ってかつてのあんたのような新人を無理やり従わせるやり方を取っていたんだ。」「ああ、それは仕方ないぜバロン。ただボブの野郎はあんたの意向を曲解して勝手に同房だった俺を虐めてただけだ。でもあんたが機会をくれたおかげで今は奴を殺せてすっきりした気分だぜ。」「理解力が高くて助かる。そして・・・ヤクを仕入れてくれて感謝している。おかげで巻き返しが図れる。ホワイトパニッシャーズの連中を苦しめてやろうぜ!」
この会話のドア向こうでは刑務官同士の会話が繰り広げられていた。通りかかりの白人看守長がバロンの独房前に立つ二人の黒人刑務官を見とがめたのだ。「あんたらがブラックスネイクスから賄賂をもらってることは知ってるけどなあ、もう少し仕事に忠実であって欲しいものだよ。」「ふん、あんただってホワイトパニッシャーズから賄賂もらってるでしょ?」「ふん、まあな。そうだ、ところで奴らが言ってたが、最近ブラックスネイクスの連中がヤクを扱い始めたらしいが、それは本当か?」「さあな、どうでしょうな。」「おい、今だけは俺を上司として扱ってくれ!俺の質問に真面目に答えてもらうぜ。」「クソ・・・まあ、本当。」「じゃあ奴らにヤクを扱うのをやめさせてくれ!」「なんでです?もしかしてあんたの金ずるが弱っちまうからですか?」「ふん、お互い分かってるだろう。俺にとってホワイトパニッシャーズが金ずるであるようにあんたらにとってブラックスネイクスが金ずるだ。だからあんたらはムショ内のヤクの運搬係をしている。そうだろう?」「分かってるなら邪魔しないでくださいよ!」すると看守長は醜く顔を歪めた。「そのような態度なら俺だってやってやるぜ!まあ安心しろ。ブラックスネイクスのヤク取引を邪魔はしない。だがな・・・ホワイトパニッシャーズはムショの外での攻撃を強化するぜ。」
四日後 サン・ドリル地区
「よし、今日も順調そうだな。」ライアンはパッチドと共に貧民街のパトロールをしていた。
貧民街は今や完全にソマリア系ギャングの支配下にあった。ハイチギャング・ラキアギャングの供給元であるサイード・カルテルがつぶれたためだ。さらにフアレス・カルテル由来の麻薬はチカーノギャングや中華系の扱うヤクの品質を上回っている。彼らの市場も衰退を始めている。
パッチドが言う。「諦めの悪いハイチ系の売人がいる。潰しに行こう!」「ああ。」
パッチドの指示でライアンは車を進め、とある廃墟に着いた。そこは元々教会であったところだが、今は落書きと大量のゴミ、そして集まる麻薬中毒者が目印となっている。麻薬中毒者達はここに拠点を構えるハイチ系の売人からヤクを買う。
「お前はここで見張っててくれ!」とパッチドは言って車を降りると教会の中に入っていった。数発の銃声とうめき声が響き渡り、麻薬中毒者達が逃げ出す。
数分後出てきたパッチドの手には分厚い封筒。「半分お前にやるよ。給料だ。」と言ったパッチドは「ハイチ系の奴らには仲間意識はないようだな。奴らの拠点をもう一つ教えてくれたぜ!」と言って次の場所に向かうよう指示する。
次の場所は放棄されたアパートだ。窓が割れ、苔に覆われた廃墟のアパートの中はホームレスと麻薬中毒者でいっぱいだ。
このアパートを根城にしているハイチ系の売人グループがあった。「こいつらを潰せばハイチ系は徹底的なダメージを受けるぜ!」と嬉しそうに叫んだパッチドは一丁のライフルをライアンに渡して言う。「今から奴らを襲撃するぜ!三階の部屋にいるんだとさ。」「よし、行こう!」そう言うライアンには躊躇が無い。
ピンキーライオンズの最初の試練として人を殺害したときのライアンはかなり「殺人」に怯えていた。だが今のライアンは殺人を日常として捉えていた。彼の同棲者であるグテーレスが亡くなってから彼は冷酷になったようだった。
二人が突入した時、売人連中は酒を飲んでいた。「死ねよ!」ライアンは叫んで容赦なく売人連中を撃ち殺す。「いいぞ!」と言ってライアンは室内に入り、少しでも生きている売人の頭に容赦なく鉛玉を撃ち込んだ。
ライアンは浴室に入り・・・そこにあった物を見て驚く。「おい兄さん!」「ん?何だ?」そう言ってパッチドも浴室に入ってきて・・・絶句した。
浴槽の中に麻薬が入った包みが大量に敷き詰められていた。「まだこんなにヤクが・・・」そう言って唖然とするパッチドの声を背にライアンは包みを手に取ってみた。そしてさらに驚く。「これは・・・兄貴、このヤクフアレス・カルテル産だぜ!」
8時間後 ホーネット地区
パッチドはずかずかとカジノに歩み寄り、用心棒に怒鳴った。「ゴラウスに会わせろ!今すぐだ!」用心棒は「こんなに怒鳴るような危険な奴をボスに合わせるわけねえだろう!」と言ってピストルに手を伸ばすが、直後彼の足元で音が鳴る。銃弾が飛んできたようだ。
ライアンがパッチドの後ろに立ち、ライフルを撃っていた。「とっとと連絡しろ!」との脅しに用心棒は諦めたようだった。
部屋にはいるとゴラウスが「久しぶりだな。」と声をかけてきた。彼の片手には瓶ビール。
パッチドは突然彼の頭にピストルを突き付ける。「おいおい、勘弁してくれよ・・・」とぼやくゴラウスに対して「あんたハイチ人どもにヤクを売りつけやがったな!」とライアンが詰め寄る。だがゴラウスが驚いた顔をする。「ハイチ人だと!?俺は奴らとの接点を持っていないし第一奴らの供給元はサイード・カルテル・・・」「とぼけるな!」と怒鳴るライアンであったが、パッチドが止めた。「こいつは確かに信用ならない売人だ。だがどうやらこいつは本当に何も知らないみたいだな。」「え?じゃあ・・・」「多分だが・・・ハイチ人の奴らはフアレス・カルテルと直接取引を始めたんだろうな。」




