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マフィアズジョブ

1995年 リムソンシティ 貧民街

 ピンキーライオンズの幹部会議が暫定ボスのアブデイの家で開かれている。

 「貧民街は今のところ全勢力の中で俺らが一番優勢だ。どうやらフアレス・カルテルが差し向けた奴らがサイード・カルテルの麻薬庫を爆破したみたいでな。サイード・カルテルは現在ヤクの供給が遅れるという現状だ。当然ハイチ人やラキア人は弱まっている。」と報告するパッチド。「トライアドやチカーノは心配ないか?」と尋ねたのはドリアンだ。「今のところは大丈夫そうだがサイード・カルテルの弱まりはチカーノやトライアドがサイードとの間に律儀に守ってやがった休戦協定の弱まりをも意味する。奴らはこれをチャンスととらえて貧民街に好き放題ヤクを流そうとするだろうな。」「そうだな。奴らと激しく衝突する羽目になるだろうな。」とアブデイは考え込んだ。


 パッチドは亡くなった幹部ダベスの妻ジェマの家で昼食を食べていた。

 ジェマは夫のダベスとは違い、当時新人であったライアンにも優しく接してくれた。

 そして今二人には共通点がある。どちらも大切な人を敵対組織「シルバーウルフ」の構成員に殺されているのだ。

 「ミシェルは俺が殺しました。俺らの敵ですから。」とライアン。「そうね。私の夫もミシェルの手下が殺したに違いないわ。あなたに至っては奴に直接恋人を殺されてるわね。」「ええ。グテーレスの腹には子どもがいたらしいんですよ。死体処理業者から聞きました。」と涙ながらに語るライアン。「あらまあ・・・じゃあミシェルは・・・」「そうです。あのハイチ野郎は俺の将来の家族を全員殺したんだ!」「ああ、私なんかよりよっぽどつらい思いして・・・」そう言ったジェマはいきなりこんなことを続けて言う。「あなた、それでもピンキーライオンズの一員でいるの?」「え?」「私は夫が幹部だったから今もピンキーライオンズの方々の世話になってるわ。彼らはとてもコミュニティ思いで私の生活を守ってくれてるの。だから感謝しているんだけど若い子がこんなひどい目に遭うのはよくないわよ。」「ジェマさん、あなたの言いたいことは分かる。だけど俺は自分で志願してピンキーライオンズに入ったんです。俺の父も兄もピンキーライオンズだ。俺は逃げませんよ。むしろグテーレスの死を受けて俺はよりハイチギャングどもへの憎しみが高まりましたよ。ギャングになるのが危険な道であることに変わりはありませんが俺はもう失うものはない。ハイチ人どもを抹殺して最後はピンキーライオンズの一員として立派にグテーレスの下へ行くのです。」

 怒りに燃えるライアンの顔を見てジェマは少し暗い顔になる。自分のような独り身の年寄りの婆さんはいいが彼のような将来有望な若者が怒りに捉われて暴力的な一生を過ごして暴力の中で死んでいくのは彼女にとっては胸の痛むものであったのだ。そしてライアンの場合まさしくその状態にある。


翌日

 「やあ。」ジェマの家に泊まったライアンが朝起きると食卓にパッチドがいた。

 「お前のアパートにいったがいなくてな、ジェマに聞いたらここにいるっていうことだったからよお。」「ああ・・・あのアパートは悲劇が起きたところだからあまり行きたくないんだ。」「ああ、そうだな・・・」と言ってパッチドは煙草を取り出して吸う。

 ジェマが料理を運んでくるまでの間沈黙が流れる。ライアンもパッチドもグテーレスが死んだ悲しみに浸っていた。

 食事が始まってしばらくしてからパッチドは口を開く。「ライアン、仕事は再開できそうか?」「ああ。できる。ジェマにも言ったけど俺にはもう失うものはねえ。」「そうか、分かった。食後外で話そう。」とパッチド。幹部の妻であるとはいえジェマは堅気側の人間だ。そんな彼女の前でギャング活動の話をするのは失礼であるとパッチドは考えたのだった。


 「さてと、今から俺らが向かうのはインディペンデントシティだ。」「え?何故そこへ?」「ボスの護衛だよ。ボスはダスケに会うのさ。」その言葉を聞いてライアンは驚いた。「あのダスケに!」「そうだ。俺らはムショ内の麻薬供給を支配する計画を立てた。ソマリア系の同盟ギャングの承認も得てる。ボスにドリアンと俺が同行する。お前とパイレーツの新人連中が護衛する。」

 ダスケは成長著しい黒人ギャングだ。元々はスライサーズという巨大ストリートギャング組織の末端の支部長であったが周辺のギャングを利用してスライサーズから独立し「ダスケファミリー」を創始した。組織の名前の通り彼はイタリアンマフィア型の組織支配を構築し、ストリートギャングより精錬された組織体制を作った。これが彼の成長の秘訣である。

 だが彼はピンキーライオンズのようなソマリア系ギャングとは因縁がある。ダスケは黒人ギャングの中で弱い立場にあったハイチ系ギャングの不満を独立戦争に利用したのだ。彼は全国のハイチ系ギャングと同盟を結んで巨大黒人組織であるスライサーズに挑んだのだった。

 リムソンシティにおいてはハイチ系ギャングはソマリア系ギャングにとってはチカーノギャングと同じくらい嫌いな連中だった。そのためハイチ系と結ぶダスケに対してはいい印象がない。

 だがパッチドが言うにはムショへの窓口はダスケであると言う。ダスケは黒人ギャングの大多数が加入するプリズンギャング「ブラックスネイクス」のボスからストリートキングに任命されていたのだ。すなわちムショ外のブラックスネイクスのボスはダスケであるということだ。ムショの外の者がブラックスネイクスとやり取りするためにはダスケを通さなければならないというわけだ。

 刑務所内の麻薬取引を支配しようというピンキーライオンズ幹部達の作戦であったが、ムショ内では主にブラックスネイクスがヤクを扱うことになるであろう。白人系のホワイトパニッシャーズやメキシコ系のモラティンシンジケートとは根深い対立関係にあり、取引などもっての他だ。ブラックスネイクスしか取引相手の選択肢にはない。

 それに今ピンキーライオンズのボスデゥラハンはムショ内だ。ボスがムショ内でも権力を維持するためにはブラックスネイクスへの供給元がピンキーライオンズである必要があった。


5時間後 インディペンデントシティ 黒人街

 「ここか?」と少し驚いた様子でライアンは聞く。「ああ。」と苦々しい顔でパッチドが答えた。

 ダスケが住んでいる場所は複数の黒人ギャングが支配する治安の悪い場所だと聞いていた。

 しかし彼が住んでいるという場所はリムソンシティの中央区にあるような巨大なマンションだ。周りに戸建ての住居や落書きだらけの倉庫が多い中異質であった。

 マンションの警備員にアブデイが「ここの住民のダスケにアポがある」と言うと「少し待っててくれ」と言って彼は事務室の中に入っていった。

 「今の警備員の野郎、見たところ堅気には見えねえ。」とライアンは小声でパッチドに話かけた。「ああ。このビルはダスケと奴の友人の大富豪どもが金を出し合って建てたらしいからな。ダスケファミリーの奴らが警備を請け負ってるんだろうぜ。」とパッチド。

 やがて警備員が戻って来た。「確認したらアポはあるそうだ。今から案内しよう。」

 ライアンは後ろにいるパイレーツの新人3人に「行くぞ!」と声をかけてパッチドの後ろに続いた。


 ブラックスネイクスのボスとだけあってダスケは異質な雰囲気をまとっていた。まず異様に太い手足と体。かなりの筋肉量だ。一体どうやって鍛えているだろうか。ダスケはスライサーズ時代に前任者の支部長を撲殺したという伝説があるが、それも納得だ。あんなに太い腕の筋肉を使って殴られたら数発食らっただけでも顔がぐちゃぐちゃになりそうだ。頭髪を全て剃った頭には複数の大きな生傷。死線を潜り抜けてきたギャングである証拠だ。髭も全て剃り落され、その部分には黒い線が複雑に絡み合った入れ墨を入れている。「ブラックスネイクス」の証だ。磨き上げられた歯は不気味なほど真っ白だ。そして鋭い眼光。大物ギャングである彼は敵が多い。そのため身の回りの人物を手下も含めて警戒し、常に獰猛な視線を周囲に配る。

 巨体を揺さぶりながら部屋の玄関まで出てくると一行をねめつけるように見て「こっちへ」と野太い声で一言だけ言うとダスケは部屋の真ん中の少しくぼんでいる空間に移動した。そこには大きな大理石のテーブルとカウチが四つ並んでいる。ダスケはカウチの一つに腰かけると足をテーブルに乗せた。すると慌てたように部屋の奥から一人の若い女が現れた。驚いたことに白人だ。彼女はテーブルの奥側のカーテンを開けた。町の景色が見えた。ダスケは満足そうに煙草を一本取り出して火をつけると吸い込み、使用人らしきその女に命じる。「ワインを持ってきてくれ。」

 ライアンに続いてパイレーツの新人が三人入ろうとすると玄関前にいたダスケの手下が制止した。「護衛は一人だけだ。」新人連中が抵抗しようとすると手下は銃を突き付けた。「ここはダスケの拠点だ。言うとおりにしろ。」とドリアンが新人達に命令する。

 アブデイ・ドリアン・パッチドの三人がカウチに座り、ライアンがアブデイの斜め後ろに座ったところでダスケは口を開いた。「少しワインでも飲んで待ってよう。」彼はテーブルの下に備え付けてある戸棚から5つのグラスを取り出した。

 「気持ちはありがたいが・・・俺は遠慮しておくよ。あんたも知っての通り俺らはあんたにとっちゃチンピラだ。高級なワインより安いビールの方が口に合う。」とアブデイが言う。「じゃあビールを持ってこさせよう。このビルの周辺のストリートギャングボスどもが来訪してきたとき用に何本かストックしてる。」「ああ・・・その・・・俺らはあんたのビールをごちそうしに来たわけじゃないんだ、すまねえなダスケさん。」と大胆にもパッチド。

 氷水に入ったバケツに浸したワインを持って来た使用人にダスケは「すまん、ビールを四つ持ってきてくれ」と言った後にバケツから2瓶ワインを取り出しながら三人に向き直る。「少し待っててくれと言ったろう。」そう言いながらダスケは自分の隣に空いているカウチを指さす。「誰が来るんだ?」と少し警戒しながらアブデイ。「ああ、ダスケファミリーのコンシリエーレだ。」そう言ったダスケの発言に対して困惑顔で顔を見合わせるピンキーライオンズの一行。

 その時ライアンは言う。「相談役の方がいらっしゃるんですね。」パッチドが振り返る。「え?」「グテーレスの勤めてた店にマフィアの幹部が来てたらしくてさ。コンシリエーレはイタリアンマフィアの相談役なんだってさ。」するとダスケが顔を上げた。「お前、物知りだな。」「あ、へい・・・」「カウチに座れよ。」「でもこのカウチは相談役の方が・・・」「もう一つ用意させるからいいぜ。」

 ライアンはアブデイの顔を見た。アブデイが頷いたので、ライアンはダスケの隣のカウチに腰を下ろす。緊張で細い足が震えている。ダスケの視線を感じた。


10分後

 「お姉さまの到着です。」と言う声がして警備員二名に囲まれた気の強そうな小太りの黒人女性が入ってくる。彼女は鋭い眼光をピンキーライオンズ一行に走らせるとダスケの隣に新しく運ばれたカウチの上に腰を下ろした。

 「コンシリエーレが到着した。頼みとやらを聞こうか。」とダスケ。驚いたドリアンが言う。「彼女がか?」「ああ。厳密にはコンシリエーレは俺の弟だがあの馬鹿野郎にはお情けで幹部の座をやっただけだ。実質的にはこいつが相談役だ。俺の姉のシフォーネだ。」「ええ、よろしく。」「ああ、よろしく。俺は今ピンキーライオンズの暫定ボスをやってるア・・・」「あなた達には興味ないわ。我々が興味あるのはあなた達の頼みよ。」と冷たく言うシフォーネ。

 「そうか・・・では早速。バーネット刑務所内のブラックスネイクスと俺らとのヤクの取引を許可願いたい。」

 ダスケはシフォーネと顔を見合わせ、その後小声で言葉を交わし合う。しばらくしてダスケは向き直る。「OK!許可しよう。俺がバーネット支部の奴に伝えとく。」「本当か、助かるよ!これでムショ内の俺らのボスは安泰だ。」とアブデイが安心の溜息をついた時、シフォーネが口を開く。「だけど条件があるわよ。」ドリアンが身構える。「条件か、何だね?」「少し外注したい仕事があってね。」と言ってダスケは真っ白な歯を見せてにんまりと笑う。ライアンの背筋に悪寒が走る。嫌な予感しかしない。

 「実は我々の盟友タリーノファミリーが困っていてね。」「タリーノファミリー?イタリア人か?」とアブデイ。「そうだ。イタリア人だが俺のビジネスに理解がある。フレンチ・コネクション経由のヤクを買っている。」「で、奴らが困っていることとは?」「上層部の方針転換だな。上層部がヤクを扱うのを禁止した。」「上層部?」「タリーノファミリーはペチーニファミリーに仕えている。ペチーニのシマの四分の一を代理統治しているからな。」とダスケが説明する。「ペチーニ?かなり強大なマフィアだな。」とパッチドがうなる。「でしょう?でもね、強大であるが故に離反者が出やすいのよ。タリーノのようなね。」とシフォーネ。

 溜息をついてアブデイが言う。「一応話は聞く。だが俺たちのようなストリートギャングの仕事の域を超えているかもしれねえ。」「そうか、じゃあ遠慮なく・・・タリーノは邪魔なペチーニを潰す。どこかの黒人ギャング団がペチーニの資金がある銀行を襲ったらどうなるだろうな?奴らは弱体化する。タリーノの時代が到来だ!」「ふうん、で俺らがマフィアに捕まるリスクを冒して強盗をやろうってんだな?」と厭味ったらしくパッチド。「そうじゃない。奴らの銀行を襲うのはデッド・ボーイズと俺の傭兵だ。だが襲うためには銀行内部の地図がいるだろ?」「なるほど。だが盗むならあんたの人脈でプロの泥棒でも雇えばいいだろ?」「ああ、そうかもな。だけど銀行の詳細は一介の従業員は知らない。銀行の連中は皆堅気だからな。マフィアの金から給料が出ているとはいえファミリー外の奴らに違法銀行の構造を知らせるわけにはいかない。頭取でさえ銀行の構造については詳しく知らないらしいぜ。」「そうか、なるほどな。だがあんたは地図保管者を突き止めたんだな。」「突き止めた、と言うべきか推測した、というべきか・・・実は銀行工事に関わった連中もイタリア人だ。マフィア崩れのジコーニってギャングが率いている建設会社さ。ペチーニをケツ持ちにしてる。」「地図はジコーニが?」「恐らくな。だがジコーニは危険な連中を雇って自宅を警備させている。暴力的にやらないと奴の邸宅には侵入できねえ。」

 アブデイがドリアンとパッチドの顔を見る。「やろう」とドリアン。「やめた方がいい」とパッチド。「俺がやろうか?」とライアン。「分かったダスケ。引き受けたよ。」とアブデイ。


二日後 インディペンデントシティ トール地区

 「クソがよ!」ライアンは呟いた。

 トール地区は富裕層が多く暮らす地区だ。企業経営者や政治家、作家などが多く暮らす。貧しい生活を送ってきたライアンにとっては妬ましい連中だ。

 「ここがジコーニの自宅ですぜ。」とパイレーツの見習い。ライアンは車を停め、パイレーツの見習い三人に指示を下す。「ジャケットを羽織れ!覆面を付けたら俺の指示で門番を無力化だ。」

 「3・2・1・・・行くぞ!」四人の覆面男は乗って来たバンから下りたつ。走り寄ってくる人影に気づいた警備員が「おい・・」と声を上げるがサイレンサー付きの銃で五発撃たれて死亡した。

 ライアンはハンドガンを取り出すと門の鍵を破壊した。「そのうちバレるぞ!急げ!」ライアンの指示で三人の見習いは庭に生えている木々の間を駆け抜けていく。

 外では敷地の周りを巡回中であった男が門番の死体を発見した。「クソ!」彼は無線機を取り出して叫んだ。「侵入者あり!門番の死体を発見!正面玄関の鍵は壊されている。」

 庭内部の小道を巡回していたギャングが無線を聞いた。「マジかよ!どこの連中だ?」そのとき、彼の後ろでカサカサと音がする。

 「おい誰だ!」木の後ろに人影を認めてギャングが叫ぶ。人影は走り出した。

 プールに警備員が駆け寄ってくる。「ジコーニさん、緊急事態です!」「あん?どうした?」プールの水面に顔を出したジコーニが尋ねる。「敷地内に侵入者です!地下室への避難を。」「マジかよ!くそ!」飛び出したジコーニは警備員に渡されたタオルを受け取って体に巻くと室内に入った。

 「全員そろったか?」ライアンは尋ねた。「クリントがまだです。」と一人の新人。「そうか・・・」と考え込むライアン。その目の前にはプールがあり、プールの奥の窓から室内で慌てるジコーニが見える。「仕方ない、やろう!」

 ジコーニは「最悪だ!」と愚痴を言いながらも警備員の誘導に従って自室へと入っていく。

 その時、鋭いヒュッという音がしたかと思うと警備員の頭部が吹き飛んだ。「何だ!」とジコーニが辺りを見渡した時、三人の覆面黒ジャケットの男が窓ガラスを割って入って来た。「ジコーニだな?」三人とも銃の照準がジコーニの頭部にあっていた。ジコーニは溜息をつくと手を挙げた。

 「金目のものなら沢山あるぜ貧乏人共!好きなだけ持っていきな。」とジコーニ。「俺たちはそんな下らねえ理由で来たんじゃねえ!てめえがペチーニ家のために設計したマフィア銀行の内部地図を渡せ!」「なるほどな、強盗か。あんな紙切れなんぞくれてやるよ。そこの金庫にある。」

 ライアンの目配せに応じて新人の一人が金庫に向かう。彼はハンドガンで金庫の錠を壊し、開けた。そして叫ぶ。「マズい・・・」次の瞬間、大爆発が起こる。新人の体は炎に包まれ、爆散した。

 「くそ!てめえ・・・」ライアンはジコーニの頭に強く銃を押し当てる。「へへへ・・・コソ泥どもめ。誰の家を狙ってるか分かってるんだろうな!?」「もちろんだぜ。雑魚のイタリア人の家だよ!」と怒鳴ってライアンは何とジコーニを撃ち殺してしまった。新人を爆殺された怒りからであった。

 「そのうち警備員達が入ってくるぜ!ハンドガンを貸してくれ!俺が奴らを食い止めますから!」もう一人の新人が返り血を浴びて唖然と立つライアンの肩を揺さぶって言う。

 「あ、ああ・・・」ライアンはハンドガンを取り出して新人に渡すとジコーニの死体を壁にもたせかけ、机の中身を全て出して戸棚の中のものを端から放り出して調べた。

 ドアがけ破られ、警備員とギャングがなだれ込んでくる。新人が二挺のハンドガンを乱射してそいつらを排除していく。

 ライアンは無我夢中で探し回る。「くそ・・・お?」そして遂に見つけた。ベッドの脇の壁の窪みに置かれていたカバンの中身。それは数々の設計図。銀行のものもその中に保管されていた。

 「よし行くぞ!」と振り返ったライアンは唖然とした。積み重なって倒れる警備と護衛。彼らの向かい側に倒れているのは新人だ。体を触るとすっかり冷たくなっている。彼は蜂の巣になっていた。必死でライアンを警備から守ったのだろう。両手にはハンドガンを握りしめていた。

 「くそ・・・」ライアンは静かに庭に降り立つ。悲しいことだが、任務を達成するには死んだ二人の新人を置き去りにしてもう一人の新人と共に帰るしかないようだ。

 まだ警備がいるかもしれない。そう思ってライアンはそろそろと植物の間を抜けて進んでいく。

 そして見つけてしまった。大きな木の後ろ。銃を胸に四発受けた新人の死体。ライアンと共に押し入った仲間は全員死んでしまった。

 ライアンはがっくりと膝をつき、静かに泣いた。

 

 


 

 

 

 

 

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