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魔女話  作者: ゆきむら
裏話
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7 裏話 13

 かくして、俺の片想いは感動のフィナーレを迎えたわけだ。


 最初の告白から一年程。

 俺は今、幸せです。


 あの後しばらく泣き続けた彼女は、落ち着きを取り戻すと、恥ずかしそうに『顔を洗ってくる』と言って店の奥に行ってしまった。


 店の中に一人ぼっちだけど、今日は全然寂しくない。だって幸せだから。



 この店に初めて訪れてから、もう三年半近く。

 思えば遠くに………………………………………………来てないな。

 やっとスタートラインだった。うん。


 よくよく考えれば、俺は今やっと彼女に名前を教えてもらって呼べるようになった。普通で考えたらお友達レベルじゃないか。


 あれ? 急に幸せ気分がしょぼんできた。



 いや、でも相手が相手だしな。仕方がないとしよう。




 店の奥に続く扉がゆっくり開かれ、彼女が帰ってきた。

 髪の毛で顔を隠して。

 隙間から除く耳が真っ赤になっているし、相当恥ずかしいようだ。


「ファータ」


 今はまだ少し呼び慣れないけど、きっと名前を呼ぶのが少しずつ当たり前になるんだ。だから……


「俺も名前で呼んでほしいんだけど」


 お願い。

 そう言ってみると、彼女はしばらく凍り付いたように固まってしまった。


 ……おーい、ファータさーん?


 しばらくしてハッとしたように考え込み、やがて口を動かす。




「……く、」


 お、呼んでくれるのか? ダメもとで言ってみるもんだ!




「く、くろ……」


 頑張れ、頑張るんだ! ゴールは近い!




「くっっっ」


 行け、その場の勢いに乗るのだ。


 お兄さんの名前は? せーのっ






「うあああああああああああああ!」




 無理だった。



 分かっていたけど。



 無理だった。




「ええい、名前など、私にはまだ早い!」



 顔を真っ赤にしながら彼女は頭を抱えて言う。


「まだ早いって、いつなら早くないんだよ?!」


 こういうのはタイミングが大事なんだぞ。

 うー……と唸りなら彼女は目を泳がせる。


「ひ、ひと月以内には……」

「言ったなおまえ、言質とったぞ」


 そう言って、彼女の顔にかかる髪をかき分ける。

 言ったからには是非とも一ヶ月以内に呼んでもらおう。これからの楽しみが一つ増えたと思えば待てるさ。



「……善処する」


 そう言って彼女は俺を見上げてくる。 少し目を泳がせて困りながら。


 一ヶ月で名前呼ぶ自信がなくなってきたか? 残念ながら譲歩はしないぞ。



 ――困惑――含羞――



 目を泳がせていた彼女は、やがて火照った顔のまま困ったように眉尻を下げ、口元に少しだけ笑みを浮かべて、こちらを見上げてきた。



 ……これは!



 ガタリ



 彼女の顔を見ていられずに、音をたてて近くの椅子に座り込み、頭を抱えてしまった。


 いつか彼女が話した愛想笑いの話を思い出す。


 師匠に教えてもらったと言うそれに対して、俺は『あざとすぎる』と突っ込んだ。

 彼女が間違った愛想笑いとして人々を恐怖させた、あのひきつった笑顔。

 その真意が、そこにあった。



 師匠曰く。



  上目遣い+ちょっと困ったような笑顔=サイコー




「破壊力が違う……」



 全然違う。



 何を間違えてあの愛想笑いになったのかが分からないくらい、自然と繰り出してきやがった。

 彼女の髪をかき分けていたもんだから直視しちまったし。



 いきなり座り込んで頭を抱えてしまった俺を心配して、彼女は頭痛薬を出そうかなんて言ってくれる。

 その優しさだけで結構です、痛いのは頭じゃなくて心臓だ。動機が止まりません。




「少し待っていろ……茶を淹れてくる」

「……ああ、ありがとう」


 そう言って彼女はまた店の奥に戻ってしまった。


 ああ、もう。あいつ、とんでもない爆弾持ってやがった……!


 あんなん、あといくつ隠し持ってんだよ……お兄さんは心臓がもちません。



 もうかなり彼女のことを知っているつもりだったけれど、未だにこうして新しい表情を見せてくれる。

 きっとこれから、まだまだ色んな彼女を知るのだろう。

 それはとても楽しみで。



 取り合えずここまで来たんだ。

 言葉に出した以上、彼女は一ヶ月以内に名前を呼んでくれるはず。少なくともその努力はしてくれる。


 そういう女の子だから。




 彼女が頑張っている間に俺は計画を練らなくてはいけない。目下の目標は二人でお出掛け。


 一緒に行きたい場所はいくつもある。


 ケーキとコーヒーが美味しいと評判のカフェ。

 彼女の好きそうな雑貨店。

 ここからは少し遠いけれど、東にある金木犀が綺麗な公園。


 しばらくは無理だけど、長期の休みが取れるようになったら実家にも連れていきたい。

 俺の育ったあの場所を彼女に見てほしいんだ。田舎だけど、こことは違う良さがあるから。


 あ、姉ちゃんに『トマ子に会わせろ』って言われてたんだった。




 お茶の良い香りがする。

 彼女が持ってきたカップを作業台の上の置いて、お茶をいれてくれた。

 いつもと同じなのに、その動きは少しぎこちなくて笑ってしまいそうになる。そんなに緊張しなくても良いのに。



 彼女の顔を見れば、やっぱり真っ赤にしている。

 目が合えば、一度そらして、それでもチラリとこちらを見てくるのが可笑しいやら可愛いやら。


 ふとイタズラ心でカップを差し出してくれる彼女の手を握る。


 驚いたようだけれど、振り払われるようなこともなく。

 ただただ、顔を真っ赤にしている。

 頭に響く恥じらいは心地良いくらいに初々しい。


 ……こりゃ先は長そうだ。



 それでもいいさ。



 ゆっくりでいいから。




 さぁ、これからの話をしよう。

その爆弾の隠し場所は、唇の裏側☆ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・ます!




ここまで読んでいただきましたこと、お礼申し上げます。


余談というか蛇足話です。 結果としては彼の性格が三枚目になっただけでした。悔いはない。


話数が進むにつれ、私は話を作ったから後書きを書いているのか、後書きが書きたいから話を作っているのか分からなくなってしまい、そのせいで一度書いた後書きを取り下げたり、一度投稿したものを分割して投稿し直すという、本末転倒も良いところでした。反省しております。



評価やご感想、登録してくださりましたお方様、再度お礼申し上げます。ありがとうございました。


これにてひとまず終了でございます。 再度完結ボタン押させていただきます。 これからまた、しつこくネチネチ手直ししていこうと思います。  



完結後も色々文章を付けたり消したりしながら手直ししております。

誤字脱字も出来るだけ無くなるよう努めておりますが、なにぶん迂闊がパンツはいてスマホ打って作った文章でございます。至らぬところも多々あるかと思いますが、何卒ご容赦くださいませ。



ここまで貴重なお時間を賜り、お付き合いくださりまして、本当にありがとうございました。 それでは失礼いたします。

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