第74話 半島横断とサウの街
再び河童が登場
ターミナルは、予想通り出ることが出来た。ここは田舎なのか冒険者の姿もない。
(まあ、いない方がいいのだけど・・)
これからどうしようかと思っていると、ターミナルの左前方・・・海からスロープ状に湾曲していつ部分から、河童が現れた。河童はジュアルを見ると、臆することなく近づいてきてから跪いた。
『ジュアル・・・ジュアル=ラィシカーラクセン様。ターミナルの開放ありがとうございました』
河童は九千防の配下らしい。
『あの程度なら、お前たちでも倒せたのでは?』
ジュアルが思ったことを口にすると
『結界がありましたので、入ることが出来なかったのです』
河童が申し訳なさそうに言った。
『だから、俺に開放させた?』
『はい』
ジュアルの言葉に小さく答える河童。
(やっぱり・・・)
『一度、九千防殿に会ってみたいものだ』
ジュアルが多少、語気を強くして言うと、何故か河童は嬉しそうに
『はい。今からお連れさせていただきます。この半島を横断してサウの街を抜けた後、カツナを通ってイキツ飛行場に向います。予定では、ここに九千防様がお越しになる予定になっております』
どうやら最初から仕込まれていたらしい・・・。ジュアルは
(してやられた)
と思いつつ、
『では、道案内を頼む』
と河童に言った
(ここからイキツ飛行場へのコースが解らん)
・・・
河童が先導して森の中に入っていく、海岸線を移動していくと思っていたジュアルには意外だった。
『この先、“鬼”たちの本拠地である“テラ”がいくつかあります。恐らく、海岸線の何処かで、待ち構えているでしょう。面倒なので裏掻いて半島を超え、サウの街に向います』
河童は山道を平然と歩き出した。
(まあ・・確かに、“鬼”たちと総力戦をするのは面倒だ)
ターミナルでの戦いから、“鬼”たちに負けるとは思っていないジュアルであった。
・・・
途中、山中で1泊した後、河童の先導でサウの街に着いた。驚いたことに、河童は変身が出来るらしく、見た目が人間と全く変わらない姿になった状態になっていた。
街の入り口にでは門番が立っていたが、出入りをチェックすることもなく、河童とジュアルは街に入ることが出来た。
『この街にはチェックが無いんだな』
ジュアルが河童に言うと
『ここは、王国に4万あるという社の総本山です。神が降臨して作られた特別な街ということになっていて、街に害をなすものは、神の力で入れないと言われています』
河童の説明に
(宗教って怖えな。実施にはそんなわけないだろう・・・。何か事件が起きなきゃいいがな)
ジュアルは心の中で叫んでいた。
・・・
河童は、
『今日はここに泊まります』
そう言うと、中に入って行った
(おいおい、かなり立派な宿だぞ)
それは、ジュアルが見ても判る、いわゆる高級宿であった。
宿では豪華な食事が出てきた後、ベッドではなく、床に何かを敷いて布団が用意されていた。
(ほう・・・ベッドではないのか)
ジュアルが珍しそうに見ていると、
『こちらでは、これが普通なのですよ』
河童が察したのか説明してきた。その説明に頷きながら、
『なあ・・・ここにある“社”というのは、味方なのか、敵なのか?』
ジュアルが言うと河童は声を落として
『はい。“社”は王家を傀儡にしている連中です。間違いなく敵です』
と言いながら、周囲を警戒している。
『なるほど・・・敵の中に入り込んでいる状態か』
ジュアルはこの街が、ジュアルにとって危険であることを理解するのだった。
・・・
『・・・ん!』
夜中、怪しい物音がして目が覚めたジュアルは
『ガード』
部屋に結界を張った。その直後、部屋の入り口が乱暴に開けられ、武装した兵士たちが襲い掛かって来たのである。河童を見ると、いつの間にかいなくなっていた。
(さては謀られたか!)
そう思ったジュアルであったが、襲ってきたものは結界に激突して一旦、後退りしている。しばらく結界の中で様子を見ていると、縄で縛られた河童が連れてこられた。
(裏切ったわけではないらしい)
ジュアルはほっとしながらも、どうしようかと思案していると
襲ってきた連中の首領と思わるものが口を開いた
『“社”に来てもらおう。大人しく降参するのだな・・・ははは』
髭を生やしたスキンヘッドの男が笑う・・・ジュアルは無性に腹が立った。よく見ると、河童は気絶しているらしく、襲ってきた連中の一人が、持ち上げていた。
(なるほど・・・)
気づかれないように、“ガード”を解除すると、
『アイスエリア』
魔力を命一杯込めて発動させてみた。ジュアルを囲っていた連中は勿論、見える範囲全てが凍っている。
ジュアルは、河童を持ちあげていた男から河童を回収し、凍った街を歩き出した。走らなかったのは、転びそうだからである。
・・・
『申し訳ございません』
サウの街を出た後、街が完全に見えなくなる所まで移動してから河童を解凍した結果、何とか生き返らせることに成功した。その直後、自らの失態に気が付いた河童がジュアルの目の前で土下座している状態である。
『過ぎたことは仕方がない。この先は街に泊まるのは止めよう』
ジュアルはそう言うと、河童を立ち上がらせ、歩き始めた。
『あの・・・サウの街は・・・』
河童が恐る恐るジュアルに聞くと、
『朝には溶けるんじゃないかな・・・たぶん』
そう言って振り返りもせずに歩いていくジュアル・・・。
(初めてやったのだから、どうなるかなんで知らないよ・・・)
ジュアルは、己の魔力が上昇しているのを、全く知りません(ノヤカで見て以来、未確認)。
サウの街は、凍った街として王国中を恐怖に陥れることになるのですが・・・。




