第69話 ガサキナターミナル
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『そんなこと言っても、ターミナルの中には狸たちが待ち構えているのでしょう。3階にたどり着いて魔方陣を破壊するころには、狸たちは全滅してませんか?』
ジュアルは、ガサ飛行場での出来事から、狸たちに負けるとは思っていなかった。だが、この幽霊の希望を叶えてターミナルに乗り込んだ場合、魔族たちは、狸に攻撃させるのは間違いなさそうに思えたのである。
『できれば、儂の仲間である狸は殺さない欲しいのだよ』
幽霊はそう言うと、テーブルの上にある1冊の本を指さした。ジュアルが幽霊の指さした本を見ると
“不可視フィールドの魔導書”
と書いてある。
『これはな、魔族たちが、ここに置き忘れていったのを見つけたものだ。これがあれば、何とかならないだろうか・・・』
ジュアルは本を手に取って1ページずつ見て言った。正直なところ、さっぱり書いてあることは解らなかったが、最後の頁を開いた後に本を閉じると、ジュアルの予想通り本は燃えだし、跡形もなく消滅した。
(やっぱり・・・)
この魔法は、発動中は周囲から見えなくなる魔法らしい。
・・・
ターミナルに入るため、先ほど登って来た螺旋階段を降り、駐機場に出たのちにターミナルに移動した。出入口は施錠されておらず、簡単に入ることが出来たが、直ぐに狸に見つかってしまった。そう、先ほど覚えた“不可視フィールドの魔法”は使わなかったのである。
『し・・侵入者発見!』
ジュアルを見つけた狸が叫んだ。
『ちょっと大人しくしていてね』
ジュアルはショートソードを鞘から出さずに、狸の背中を叩いて気絶させ、
『不可視フィールド』
を発動させた。
倒れている狸から少し離れて様子を見ていると、武装した狸たちが5匹ほどやって来た。どうやらこちらには気が付いていないらしい。騒いでいる狸たちを放置して、ターミナルの3階に移動したところ、展望デッキに出る直前に右に行く通路があった。
見ると、部屋が2つある。何故かここには魔族しかいない。手前は妙に警備が頑丈で、たまたま出てきた魔族が開いてくれた扉から中に入ると、そこには見覚えのある魔方陣があった。
(まずは、これを破壊するか・・・応援が来ると面倒だしな)
部屋の隅に移動すると、一旦、
“不可視フィールド”
を解除し、その直後に
『ウインドカッター』
『ウインドカッター』
『ウインドカッター』
を3連発で、魔方陣を切り刻む。更に、
『サンダーボルト』
で切り刻んだ破片を破壊した。
『ガード』
当然であるが、魔族たちはジュアルに襲い掛かって来た。奇襲は成功したため、既に魔方陣は無くなっていたが、既に来ていた魔族は消えたりしない。剣を振りかざしてきたので、ガードで防いだのだった。
結局、魔族は5人いたらしい。後から駆け込んで来たのを含めた結果である。
『もう、これで帰れないぞ・・・どうする』
“ガード”で結界を張った状態のジュアルは魔族たちに言った。
『くそ。時間は掛かるが、大陸から来てもらうしかないな』
魔族の1人が呟いた
(ほう・・・大陸からというのは間違いないらしいな)
両社にらみ合いをしている状態になっていたが、ジュアルは“ガード”を解除して
『ウインドカッター』
『ウインドカッター』
を連発した結果、5人の魔族は、あっけなく上下に体を分けることになった。
(こいつら弱い?)
ジュアルは、部屋を出て最奥の部屋に向かって
『ファイヤーボール』
を放った。
・・・
何かが飛んで行ったようである。破壊された扉から入ったジュアルが見たのは、壁にめり込んだ魔族と、その床に転がっている壊れたガラス・・・水晶のようなものの破片であった。そして、部屋の脇には、何故か縄で縛られた狸が1匹、目を見開いてジュアルと魔族を見ていた。
魔族は気絶しているらしく、反応がないようなので、
『管理棟にいたお前たちの先代の幽霊に頼まれた。こいつがボスか?』
気絶している魔族を指さしながら、縛られている狸に声をかけてみた。
『はい。彼がここの魔族の代表です』
狸は明確に答えたので、
『ウインドカッター』
気絶している魔族向って三日月の刃を放った。結局、魔族は気が付くこともなく、全身
左右真っ二つなったのち、魔石を残して砂のように消えてしまった。魔石を回収しながら、
(もしかしてさっきの5人の分・・・)
ジュアルが慌てて部屋を出ようとすると
『ちょっと待ちなさいよ!』
縄で縛られた狸が叫んだ。
『すぐ戻ってくる』
ジュアルはそう言うと、魔方陣のあった部屋に移動した。落ちていた5つの魔石を回収する。
(この魔石、ひょっとしてなにか特殊な使い道があったりしてな・・・)
そんなことを考えていると、奥の部屋から声が聞こえてきた
『ちょっと、誰か縄を解いてよ!』
先程の狸が騒いていた、遠くから走ってくる足音が聞こえてくる。
(こりゃ、さっさと縄を解いてやらないと面倒だな)
ジュアルは慌てて、縄で縛られた狸のところに戻ったのであった。




