第68話 狐稲荷の話と狸の幽霊
ちょっと長いです
ジュアルは、狐稲荷に、東にある格納庫で起きたことを説明した。
『なに・・・魔族を倒したとな!』
動揺していたとはいえ、一方的に魔族を倒してしまったことに驚いていたのである。
『魔族はな。この国の海の先にある大きな大陸を支配する連中だ。かなり強い』
狐稲荷は、ジュアルに説明を始めた。それによると
・魔族は海の先にある大陸を支配している
・支配された人間、その他がどうなっているのかはわからない
・九千防は、大陸から逃げてきた妖怪で、魔族に狙われている
・魔族はこの国を支配しようと画策しているらしく、欲に負けたゴマシカは、密に連絡をとっているらしい
というものだった。
(なるほど、そう言われれば、クラザキカの飛行場跡での出来事も、マクサアの飛行場での出来事も理解できる・・・ということは、かなり魔族の手が入り込んでいる?)
『あの狸たちも、箕島で平和にくらしていていた狸たちだったのだがね・・・』
狐稲荷は言いにくそうであった。
『ムラオオの領主が、あの島をガサキナ飛行場に改造してしまってな・・・あいつ等はかなり苦労したらしい。モラオオの領主は狸たちを全滅させるべく、兵糧攻めにしたそうだ・・・その結果、あいつらは、ターミナルを占領、島の結界を奪取して、島ごと占領してしまったということなのだよ。恐らく、魔族と手を組んだ結果なのだろうねえ・・・』
狐稲荷は力なく言った。やはり、狐稲荷の力では、魔族と対抗するのは無理らしい。
『それって、ガサキナ飛行場に行くしかないということですよね』
ジュアルは狐稲荷に言うというより、己に言い聞かせるように言った。
『すまぬ。ジュアル殿にガサキナ飛行場に行ってもらうしかない・・・』
狐稲荷は力なく言った。
・・・
狐稲荷には、東にある格納庫の監視も含め、ガサ飛行場のこと頼んだのち、ウエストエプロンのスポット21で、異次元ポケットに収納していたBE36を取り出した。
外部点検の後、操縦席に座る、各チェックの後、エンジンスタート。滑走路に入った後、R/W29の端、即ち東側に向かって機体を移動させる。イーストエプロン前付近で反転したのち、最終チェック後、ミクスチャーを押し込んでからスロットを押し込むと、BE36は離陸滑走を始めた。73㏏を過ぎたところで操縦桿を引くと、機体が浮き上がった。
(いつも通りだな)
ふと、ターミナルを見ると、屋上で狐稲荷と狐人間たちが手を振っていた。
やや、右に旋回しながら高度2000ftでレベルオフして、カウルフラップをクローズ。ミスクチャーを引いて巡行していく。左手に山を避けるように進んで行くと、海が見えた。ガサキナ飛行場はこの左前方にある。海の上に浮いているように見えるが、元は箕島という島であったと聞いている。ここが、あの狸たちの本拠であるらしい。R/W14からそのままファイナルコースに入り、脚を降ろし、フラップを降ろしてから、ミクスチャーを押し込む。ガサ飛行場を離陸してから10分としないうちに、ガサキナ飛行場のR/W14に着陸した。滑走路の左側にターミナルが見える。そして、その隣に管理棟が立っており、いずれも3階建てである。
ここも管理棟から寄って見ますかね。
ジュアルはBE36をスポット2-Aに停止させた後、異次元ポケットに収納した。外部点検をしないで収納したのは、いつ襲撃されてもおかしくないからである。少しでも早くBE36の安全を確保したかったジュアルであった。
・・・
管理棟の1階は何処にも入る所が無かった。仕方なく、建物の北側にある螺旋階段を登っていくジュアル。3階まで登った先の扉は、何故か簡単に開けることが出来た。
中にはいると、早速、狸が待ち構えていた。右手にショートソードを構えたジュアルに
『すまぬ・・・』
と言って頭を下げたのだった。
(どういうこと?)
ジュエルが困惑していると
『儂の阿呆倅が、ガサ飛行場でお主に迷惑を掛けただろう・・・おぬしがきたということは、あの阿保は、おぬしに倒されたのだろう・・・はあ。儂は、ただの幽霊にすぎん。なので、攻撃しても無駄なのだよ』
狸の幽霊が出てきたことに戸惑いながら、
『何か事情を知っていそうですね』
ジュアルが話しかけると
『ああ・・馬鹿なことをしてしまった。我々はこの島・・・箕島に暮らす狸なのだよ。それが、ここの領主の策略にガサキナ飛行場というものにされてしまったのだよ・・・』
狸の幽霊は寂しそうに言った。
(狐稲荷の話と合致するな)
ジュアルは、幽霊の話を聞くことにした。
『ここの領主・・・・ムラオオの領主が、箕島の我々を絶滅させるべく、島をガサキナ飛行場にしたのち、軍を派遣してきた。我々は逃げ回ったが、隠れるところもほとんどないここでは、皆殺しになるのは時間の問題だったのだよ。そのとき、ふと、目の前に魔族がやって来たのだよ』
『魔族が?』
ジュアルは、思わす言葉を返してしまった。
『彼らはどうやって来たのか分らなかったが、島を開放するから協力しろと言ってきたのだよ。我々には他に選択の余地が無かった。魔族の申し出を吞んでしまったのだよ。その結果、ムラオオの領主の軍は一人残らず討ち取られ、島と陸を繋いでいた橋を通れないように破壊したのだよ。そうして、我々は、ガサキナ飛行場を占領することになり、ターミナルを拠点にして生活していたのだよ。だが、平和な日は続かなかった。魔族が再び現れ、ガサ飛行場を占領するように行ってきたのだよ。ガサ飛行場の東にある格納庫に転移魔方陣まで設置してな・・・儂は断れなかった。仕方なく、魔族に言われるまま、転移魔方陣でガサ飛行場に仲間と移動し、ターミナルに攻め込んだ結果、狐稲荷に倒されたのだ・・・』
(あっ!狐稲荷が言っていた、先代ってもしかして・・・・)
ジュアルの思考が読めたのか、
『そう・・・儂は、あの阿保倅の先代にあたる。儂が倒れた後、あいつが後を継いだ・・・あの魔方陣は、ガサ飛行場側は作動しないことも知らずに・・・』
(なるほど、それで、巨大狸が魔方陣で言っていたことが判ったぞ・・・)
ジュアルは妙に納得していた。
『儂は、狐稲荷に倒されることで、自我を取り戻した。どうやら、魔族に洗脳されてもいたらしい。阿保倅は洗脳すらされてもいなかったようだがな・・・はあ』
ジュアルは、この幽霊の話を聞いているうちに可哀想になっていた。彼らには他に生きる選択が無かったというのは、あんまりだろう・・・。
『どうか・・・ターミナルの魔族を倒して欲しい。幽霊になってようやくわかったのだが、奴らは、ターミナルの3階に魔方陣を設置していたのだ。それで、他と行き来している。ムラオオの領主が連れてきた軍勢にまぎれていた魔族が設置したということまでわかっている。ターミナル3階の転移魔方陣を破壊してくれ。あれさえなくなれば、魔族も簡単には来ることが出来ないはずなのだよ』
結局、魔族の問題・・・いや、領主が狸を皆殺しにしようとしたせい?




