第58話 ガサ飛行場ダンジョン
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一方、犬人間は、もはや動くことも出ずに蹲っていた。もはや抗う気持ちもないらしい。何も話せそうにない状態だったので
『事情を説明してくれ』
ジュアルは再度、狐人間に言った。
『はい。ガサ飛行場は王国と領主が考える使用方法に、地元の住人が一部反発しております。それを嘆いていたこの施設の管理者が、死霊を呼び出そうとしていていたため、我が主である狐稲荷様が、このターミナルに取り憑かれたのでございます。狐稲荷様がこのターミナルに取り憑くことで、誰もこのターミナルに干渉されることがなくなり、飛行場に張られた結界を維持しております』
『つまり、ガサターミナルはお前達が支配しているのだね』
ジュアルは確認するように言った。
『はい。その通りです』
狐人間は首を縦に振りながら答えた。
『では、ここにいる犬人間は・・・』
ジュアルは言い掛けたところで、背後から殺気を感じたジュアルは咄嗟にショートソードを背中に振り回した。
キーン
ショートソードは何かに当たり、当たったものは事務所の奥に飛んで行った。ジュアルが振り向くと、犬人間がジュアルに向かって折れた大剣を刺そうとしていたらしいことが判った。
ジュアルは、ショートソードを犬人間の首筋に沿わせた
『大人しくしていろ』
ジュアルは犬人間にそう言うと狐人間に向かって
『こいつは、さっき、無線で救援を依頼してきた奴のようだ。こいつについて何か知っているか?』
狐人間はゆっくり頷きながら
『こいつは、王国と領主様に歯向かうもので、領主の策略で狸に取り憑かれたものの生き残りです。領主は、通常の方法で、このダンジョンに入れないことを理解すると、狸に歯向かう住人のものに派遣し、特別な力を授けるとだまして取り憑いたのです。そうしたアゼバシリ達は、何故か、結界の中に侵入できたようで、我々、このターミナルを守るため戦っていたのでございます。これは、住人が連れていた犬らしく、どういう訳か他のアゼバシリ達よりも強かったので、打ち漏らしました。恐らく、形勢が不利とみて援軍を依頼したつもりだったのでしょう』
ジュアルは、狐人間の説明を聞いて悩んでいた。
(ダンジョンのボスは狐・・・それを領主が、自分に都合の悪いものを使って排除しようとした)
ジュアルは、どちらに加担すべきか理解できなかったのである。ただ、犬人間そのものは、敵であることは間違いないらしいとは感じていたのであった。
『どうして俺がジュアル=ラィシカーラクセンと知っていたのかな?』
ジュアルは、狐人間に諭すように問いただした。
『はい。狐稲荷様は、一反木綿様の盟友にございます。なので、王国と領主がここからジュアル様を捜索しようとしていたことを感知した結果、このターミナルに取り憑くという方法で阻止することにされたのです。ジュアル様のことは、一反木綿様から伺っていると仰せにございました』
(あれ?微妙に説明が変わったぞ。だが、ここは他とは事情が違うみたいだ・・・)
『ちなみに、こいつらは何で、王国や領主に反発しているのか知っているか?』
ジュアルは犬人間を指さしながら言った。
『はい。飛行場の存在と利用に反対すれば、豊漁になると信じているようでございます』
狐人間は答えた
(そんなの関係無いだろう・・・)
『魚が捕れなくなった分を王国や領主に賠償させると主張しておりました』
狐人間の説明を聞きながら犬人間を見ると、事実だったのか、小さく蹲ったままである
『領主は、奴らをアゼバシリにしてダンジョンを襲撃させたのです』
(さて、この犬どうしようか・・・)
ジュアルから見れば、狐たちは味方の可能性が高い。この飛行場のダンジョンはそのままにしておいた方が良さそうである。一方、本来、領主と反目していたはずの住人(正確にはその飼っていた犬)が、領主の手先としてターミナルを襲撃しているということらしい。
犬人間もう一度見たとき、何かが犬人間から出てきたのを見つけた。徐々に形を狸のような姿に変形させながら
『くそ・・・お前がジュアル=ラィシカーラクセンか。王命により抹殺するように領主様が仰せつかっている。取り憑ついた連中では力不足だったようだ。だが、お前の存在はこの狸様がしかと確認した。領主に報告し、必ずや打ち取ってや・・・』
『インライトメント』
ジュアルは、狸らしき物が言い終わる前に思わず、インライトメントの魔術を使ってみたところ、あっさり消えてしまったのであった。
『お見事!』
背後で平伏する狐人間が叫んだ。どうやら、取り憑ついていた狸を成仏させてしまったらしい。犬人間だったものは、既に限界だったのか、犬の死骸になっていた。
(こいつも踊らされていただけということか・・・)
ジュアルは犬の死骸を一瞥した後
『お前たちのボス、狐稲荷に合わせてくれ』
平伏する狐人間にジュアルは言った。
狐と狸の戦い?




